釣りビジョン

2010.4.15号

つる丸・千葉県大原港
外房・大原沖のヤリイカ、ラストスパート

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3月下旬、千葉県・外房、大原沖で待ちに待ったヤリイカの釣果が出始めた。今シーズンの房総のヤリイカは、当初、洲ノ崎から白浜の南房エリア、そして同じ外房でも銚子から飯岡エリアで好調だった。毎年2月頃から外房で釣れ出すヤリイカ、大型のものは“パラソル級"と呼ばれる。 もちろん、天候や潮ぐあいなどによって釣れるサイズは大・中・小様々だが、これからの時期は比較的大型の数釣りが楽しめるのが嬉しい。そのヤリイカを狙って、久しぶりにイカ釣り道具を引っ張り出した。

北東風、波高2mの海でスタート

午前4時。千葉県大原港は静かな暗闇に包まれていた
午前4時、大原港『つる丸』に到着すると、女将、船長と若船長の3人が忙しく出船の準備を進めていた。この日は天気予報が悪かったせいか釣り人は4人。皆さん『つる丸』に通い馴れた常連さんばかり。取材協力をお願いすると快く受け入れて下さった。

左から岩瀬正尚船長、女将さん、松男船長
高校時代は野球部で活躍。千葉県大会の決勝で元巨人の篠塚率いる銚子商業に敗れたが、その後は社会人野球を経て遊漁船の船長になった松男船長
イケメン正尚船長も高校・大学野球で活躍。中学生頃までは近所の池でバス釣りに夢中だった事もあるという

午前4時30分、定刻に出船。およそ1時間でポイントに到着した。御宿と勝浦の丁度中間点あたりの水深は130mライン。潮は逆潮(※北からの流れ。南からの流れを真潮という)がトロリと流れ、北東の風で2m程の波が立っていた。

タックル図
正尚船長はツノ数は10本だった
『つる丸』ではイカヅノ投入機も常備されている

パラソル級が3点掛け

「やって下さ~い」。船長から、投入合図が出されるとそれぞれの仕掛けが150号のオモリに導かれて行く。周りには数十隻のヤリイカ船団が形成され、先を急ぐように魚探反応を追いかけている。
投入合図から間もなく、右舷トモの釣り人がリールを巻き上げ始めた。聞けば100m前後のタナで仕掛けが止められたという。イカが浮いている、活性の高い群れに当たった証拠だ。電動リールを唸らせて上がってきた仕掛けには、全長50cmはあろうかという“パラソル級"のヤリイカが3尾も付いていた。

海の男の血が騒ぐ

それを合図に船中のあちらこちらで電動リールが唸り始めた。「これはいい日に当たった」。思わず頬が緩んだ。難しいことなど全くない釣れっぷり。何しろ仕掛けがタナに入ればイカが乗る。このペースで釣れたら全員束釣りが達成できそうな勢いである。
こうなると血が騒ぐのが海の男たち。舵を握る松男船長はマイクでお客さんをあおり、道具を出している正尚船長は、パラソル級を次から次へと取り込んで行く。
あまりの手際の良さに見とれていると、松男船長から「早く道具やんなよ。おかずくらい釣って行ってよね」とハッパをかけられた。実の所、これまであまり真剣にイカ釣りをした事のない私は、松男船長に釣り方を聞いてみた。
それによると、オモリ着底後、1~2m巻いてゆっくりと誘い上げながら10mくらいタナを探る。ただ、「誘う」とか「シャクる」とかいう感覚ではなく、「タナを探る」、「イカのいるタナに仕掛けを入れてやる」という感覚で釣っているそうだ。
イカヅノをどう踊らせたらいいのか?な~んて難しい事は考えていないそうだ。むしろ活性の高い時間帯にどれだけ数を乗せて取り込むか……という手返しの方が重要になるという。

バラシ多発

長竿を使うお客さん
要するに仕掛けのさばき方やイカの取り込み方をスムーズに出来る様に心がける事が、釣果を伸ばす最大のコツという話だった。
今、正に“時合い"を迎え、ヤリイカは仕掛けが落ちてくるのを待ち構えている状況。松男船長から再び仕掛けを下ろすように勧められ、「とりあえず目標はツ抜けだな」とハッパをかけられる。
言われた通りタナを探ると、アタリは出るが巻き上げ途中でのバラシが多発。イカの足だけ、という事もしばしばあり、思うように数が伸ばせない。日が昇ってしばらくすると、浮いていたイカの反応が沈み、釣り場の水深も150mラインにまで深くなってしまった。
さらに日が高くなると、潮色が澄み、潮の流れも止まり、イカのサイズも小さくなってしまい単発のノリが目立つようになってしまった。
船長は、小まめに魚探反応にぶつけてくれるのだが、単発の拾い釣りという状況が続く。
その後、お隣の釣り人から「ベタ底で乗ったよ」と、教えて頂いたが、最後まで数は伸びず、ヤリイカ7尾、ムギ級スルメ1尾で終了となった。

今回、常連さんの道具で気になったのが、3m以上の長い竿を使っている姿。一般的には2~2.5mクラスがヤリイカ向きとされるが、バラシを減らし、ゆっくりとタナを探る分にはいいのかも知れない。

“パラソル級"が8割

私に釣れてくれたパラソル級のヤリイカ
この日のトップは23尾。数こそ少なく感じるが、“パラソル級"が8割でクーラーBOXは満杯だった。
小型のヤリイカはほとんどが抱卵したメスで、内臓をキレイに取り出し、代わりにゲソを詰めて煮付けると絶品のおかずになった。“パラソル級"は、おろしショウガと麺つゆで、ツルツル・シコシコのイカそうめんで頂いたが、絶品だったのは言うまでもない。

料理上手の名物女将

『つる丸』の待合所
またコチュジャンを酢で伸ばし、砂糖で好みの甘さに仕立てた酢味噌で韓国風のイカ刺しもなかなか美味かった。

大漁で食べ方に困った時は、下船後女将さんに聞いてみるといい。調理師免許を持つ女将さんは、大原港でも料理上手として知られた名物女将。地元大原の漁師の娘さん、ヤリイカの美味しい食べ方を沢山教えてくれるはずだ。
ヤリイカは、群れ次第で5月いっぱいまでは狙え、年によっては6月でも釣れるシーズンもある。
今後、『つる丸』では、午前船はヤリイカを狙い、午後船は乗っ込み最盛期のマダイに出船する。ヤリイカの状況次第では、GW頃からイサキ釣りもスタートする予定。

(津端 雄大)

今回利用した釣り船
大原港 つる丸
〒298-0003 千葉県いすみ市深堀1885-12
TEL:0470-62-1890
詳細情報(釣りビジョン)
つる丸ホームページ
船長名
岩瀬 松男(いわせ まつお)
天気
曇りのち晴れ。波2mのち1m
出船データ
午前ヤリイカ乗り合い料金=1万500円(氷付)
貸し竿=無料 船中で各種イカ仕掛け販売
港集合 4:00 出船4:30 帰港 12:30
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