釣りビジョン

2016.6.1号

力漁丸・千葉県大原港
千葉県・外房、大原沖のオニカサゴ、大型の桃源郷!

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「好きな魚は何ですか?」。そう尋ねられて「オニカサゴ」と答える人が居たら、それは間違いなく釣り人か、かなりの食通だろう。“絶品”と讃えられるあの味が恋しくて、オニカサゴ釣りが一年中楽しめ、しかも2kg超えの良型をコンスタントに釣らせてくれている千葉県・大原港『力漁丸』に出掛けた。

きれいな薔薇には、棘あり!

今回のターゲット、オニカサゴは英語名を「Scorpion fish」と言い、直訳すると「サソリウオ」。その名前の通り、背ビレやエラブタのトゲには毒があり、その赤く厳つい風貌が「鬼」を連想させる。しかし、その食味は繊細にして奥深く、内臓や中骨の出汁、ヒレすらも美味にして捨てるところがない。骨まで愛したい獲物に棘と毒。このギャップとリスクに虜となる釣り師が後を絶たないのは、男のDNAだろうか? 空が白み始める午前4時、右舷6人、左舷5人の“桃太郎”たちを乗せて「力漁丸」は大原港を出船した。

3時半より受け付け開始
船着き場は受付の目の前
腕利きが集う「“鬼”の木曜日」

大きな餌には、大きな魚

走ること1時間ちょっと。餌にするサバ釣りからスタート。オニカサゴと同じ道具、オモリに幹糸5号程度のサビキ仕掛けをセットして投げ込めば、餌にするのが惜しい気もする見事なサバが掛かってくる。この饗宴のような釣りを30分ほどこなし、釣り座で捌きながら“鬼”の待ち受けるポイントへと向かった。
「餌はサバタン(サバの短冊)?」と聞くと、タチウオや浅場のカサゴ釣りなら長さ7、8cmで幅は1.5cmくらいの小片をイメージするが、ここでは正に七夕の短冊くらい(およそ長さ15cm、幅2.5cm)の、キンメダイ釣りなどでお馴染みのサイズを付ける。「大きな餌には、大きな魚」この諺の真偽はやがて明らかになる。

桶はみるみるサバで一杯に
サバを捌いて餌にする
餌は切り身のように大きく

天気晴朗ナレド、波高シ

最初のポイントは水深160m。ウネリは高いが底立ち(オモリの着底)は明確に取れる。船中最初の“本命”は「外房での釣りは初めて」と言う竹原健一さん(川崎市)。一流し目から良型の一荷(2匹)に、船中の意気も上がった。
やがて潮が速くなり、250号のオモリを使う人も多かった。近年のライトタックル化から思うと、道糸を細くすれば、もっと軽いオモリで釣りが出来るのでは…と考えがちだが、どうしても避けられない釣り人同士の“オマツリ”や、岩礁への“根掛かり”を考えると、道糸は高切れ防止にPE5号は欲しい。より速くオマツリをほどく、より効率的に根掛かった仕掛けを切ることの方が、より良い釣果に繋がることもあるからだ。

このサイズを一荷の快挙!
仕掛け図

“本命”ではないと言うものの…

オニカサゴ以外に釣れてくるゲストも魅力的だ。ルックスのかわいらしさに定評があるユメカサゴ。煮付けたり塩焼きにすると美味しい魚だが、口の中は真っ黒。さらに腹膜も真っ黒で外見との隔たりが驚くほど激しい。ちなみに別名は「ノドグロ」だが、アカムツとは“赤の他人”。そして釣り味も食味も抜群なメダイ。丸顔でつぶらな瞳を潤ませるこの魚、非常にパワフルで猛烈なファイトをみせるスプリンターだ。通称“ヌル”と呼ばれるほど体表は粘液質で、これが服に付着するとかなり厄介。クーラーボックスに入れる前にタワシで洗い流し、米袋など丈夫なビニール袋に入れて持ち帰るのがお勧め。

定番“ゲスト”のユメカサゴ
強い泳力と上品な脂質のメダイ
タワシとビニール袋は必携

マメな“タナ取り”と“入れ替え”が肝心

風が強まり、波が高くなると釣りはしにくくなるものの、立て続けに竿が曲がる時もあり、魚の活性は高いようだ。オマツリほどきやタモ入れに船長が船中を走り回る中、確実にオマツリの少ない釣り人も居る。なぜか?
この日の竿頭は「マニアックな釣りが好き」とおっしゃる中嶋誠さん(柏市)。コツを尋ねると「道糸が斜めになったら、一旦巻き上げて仕掛けを入れ直す」とのこと。水深も深く仕掛けの上げ下げに時間が掛かるため、ついつい入れっぱなしにしてしまうが、そこは電動リールの機動性を活かしてマメな入れ替え、タナの取り直しをすることが肝心なようだ。また、アタリは仕掛けを入れてタナを取った直後に出ることが多く、潮が速い時の仕掛けの入れ替えは、オマツリ防止の効果は勿論、魚の食いを誘う重要な要因にもなるようだ。

8匹を揚げて竿頭の中嶋さん
かっ飛ぶ潮と波を乗り越えて
外房・『力漁丸』ならではの良型

渡る世間に“鬼”はなし

この日は常連の腕利きが集う、人呼んで「“鬼”の木曜日」。中井聡船長は正直言って強面だし、知らずに初めてこの船に乗る人はきっと怖気づくことだろう。しかし、浮き世に“鬼”はいない。船長はオマツリほどきやタモ入れの世話は勿論、質問には親切丁寧な答えをくれる。また常連さんたちも和気あいあいと釣りを楽しんでいて、小振りな(とは言え1kgはありそうな)オニを海へ帰してやったり、釣れなかった人には魚をわけてくれる。こういう船で初心者が釣り修行をすれば、オマツリに声を荒らげたり、隣席の釣り人と釣果を競うような、釣り天狗にはならないだろうなと思った。とは言え、オニカサゴの釣果は竿頭が8尾で次点は7尾を獲っているのだから、この漁場の持つポテンシャルと、船長の釣らせる気概に唸らされた。

明確な答えをくれる中井船長
コンパクトな船宿お手製仕掛け
『力漁丸』はこのコンテナが目印

オニカサゴの旬、実はこれから!

“冬の釣り物”と思っている方も多いが、オニカサゴの旬は夏から秋。その旨さの本領はまだまだこれからだ。あなたがもし、どうしても“大オニ”と出会いたいのなら、外房の鬼ヶ島・大原へ行くのが近道だろう。

竿頭の釣果、鬼ヤバい!

(釣りビジョンAPC・川添法臣)

今回利用した釣り船
千葉県大原港『力漁丸』
〒298-0003 千葉県いすみ市深堀1885-11
TEL:0470-62-0575
詳細情報(釣りビジョン)
力漁丸ホームページ
出船データ
料金:オニカサゴ乗合1万2,500円(付け餌、氷付き)
集合:3時30分 出船:4:00~4:30 沖上り:11:00~11:30
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