釣りビジョン

富士丸・千葉県大原港

2017.6.15号

千葉・大原沖、水深100m!?未開の領域を一つテンヤで攻略!

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映画、音楽、食…あらゆる分野で“ディープな領域”は存在する。それは釣りの世界も同じこと。アユやヘラブナ、イカやフグ釣りの“深み”にハマっている人が、あなたの周囲にも居る筈だ。「このところディープなマダイ釣りをしている船宿がある」と聞きつけ、一つテンヤマダイの“故郷”、千葉県・大原港の『富士丸』へ出掛けた。

午前3時30分、ディープな釣り人大集合!

『富士丸』の集合時間は午前3時30分。船宿の玄関脇にある「座席案内図」から席札を取って釣り座を確保して隣接する駐車場でオープンを待つ。時間を読み間違えて30分前に着いてしまったのだが、駐車場には既に数台の車。何と言うか、ディープな空気を肌で感じた瞬間だった。居間に灯りが点いて受け付けが始まり、若女将のいれてくれるお茶を頂きながら乗船名簿に記入、乗船料の支払い。続いて常連さんの車に先導されて港へ向かう。船着場の入り口に車を停めて乗船、空が白み始める4時過ぎに出船。霧雨の中、「富士丸」は一路、深場のポイントへと向かった。

船宿はオレンジ色の看板が目印
席札を取って釣り座を確保する
居間で乗船名簿の記入と船代の支払い
一番外側の船が「富士丸」
シンプルな一つテンヤは準備も手早い
出船は日の出前

水深103mへの潜入!?

穏やかな海を走ること1時間。「やってみましょう。水深103m!」のアナウンスでこの日の釣りはスタートした。いつもなら水深30m位から深くても60m位で釣る事が多い一つテンヤマダイ。水深100mオーバーで成立するのか俄かには信じられなかった。ところが開始間もなく右舷ミヨシ(船首)の根本陽介さん(北区)に最初のアタリ。上がったのはアヤメカサゴだったが、着底やアタリを取ること自体は決して難しくないようだ。その後、船中のあちこちで竿が曲がり、良型のメバルやカサゴが取り込まれるが、“本命”のマダイは一向に顔を出さない。霧雨はやがて本降りとなり、“ゲスト”フィッシュはよく釣れるが、我慢比べのような膠着状態が暫し続いた。

開始間もなく上がったアヤメカサゴ
良型のメバルも活発に当たった
タイラバは60~90gで底が取れる

一般的なタックルで問題なし

「水深100mのエリアをドテラ流し」と聞いた時は、正直一抹の不安があったが、やってみれば普段使っているテンヤマダイの道具で何不自由なく釣りが出来た。私は道糸PE0.8号に13号のカブラで試したが、投入から1分45秒前後で充分に底が取れた。船長が使っていたのはタングステン製のカブラ10号。初めての人でも15~20号を用意して臨めば、未体験の水深100mゾーンは決して難しくない筈だ。ただし、この日は浮遊する藻類(俗に言う“ヌタ”)が多く、これが道糸に付着すると沈下速度と感度が極端に落ちてしまう。残念ながら、指やタオルで取り除く他に画期的な解決策はないのだが“道糸に付いていると釣れない”と割り切って、時間が惜しくとも根気よく完全に除去することを薦めたい。

餌の冷凍エビ、白くハリ持ちが良い
この日は13号のカブラで水深100mの底が取れた
仕掛け図

もうひとつの楽しみ、“ゲスト”フィッシュ

一つテンヤでは、マダイの他にも様々な魚がハリ掛かりする。朝から好調に釣れた良型のメバルやプラズマ状の黄色い模様が目印、皮目が旨いアヤメカサゴ。魚類学者・安倍宗明がうっかり名前を付け忘れたという逸話が命名の由来と言われるウッカリカサゴ。フランス料理で“サン・ピエール”と呼ばれ、表面をカリッと焼いたムニエルがたまらないマトウダイ。エラ蓋の赤い模様から“チダイ”とも呼ばれるハナダイ。釣ってすぐ締めて身欠きにすれば匂いが気にならないウマヅラハギ。また、この日は上がらなかったが、大原沖と言えば“顔”とも言えるヒラメ。“キダイ”とも呼ばれるレンコダイや、ユメカサゴ、マカサゴやアマダイも交じる。

煮ても焼いても美味しいメバル
独特の黄色い模様、アヤメカサゴ
安倍宗明の逸話が由来のウッカリカサゴ
フレンチにも好適なマトウダイ
オデコと赤いエラ蓋が目印、ハナダイ
下処理でもっと美味しくなるウマヅラハギ
大原と言えばこの魚、ヒラメ
この釣りの本命、マダイ
シンプルな釣りだが釣れる魚は実に多彩

きっかけは船長の英断

この日の水深100mエリアは潮の流れがあまりなく、着底やアタリを取るには好都合だがマダイの食いは決して芳しくなかった。そこで船長は釣り場の移動を決断。30分程走って水深55mから緩やかに駆け上がるポイントへと大きくサイドチェンジを試みた。一同の竿には深場の釣りのために大きめのテンヤが付いていたが、このセッティングがやがて功を奏することになる。
移動先のエリアは海水温が高く、潮の流れは速かった。深場のポイントと状況は逆だが手段は合致し、釣り再開から僅か10分、様子見のために仕掛けを入れていた船長にアタリが出るや否や左舷ミヨシの海老沢二郎さん(葛飾区)の竿が一気に海面へ絞り込まれた。慎重なファイトの末に海面へ浮かび上がったのは2.7kgの良型マダイ。誕生日に息子さんが竿をプレゼントしてくれたのを機に、テンヤマダイを始めた海老沢さん。初めて手にしたマダイの重みに会心の笑みがこぼれた。

安定の深場に見切りを付け、移動
釣り場移動後、一投目の成果
60cm、2.7kgの良型マダイ

大原のテンヤマダイ、本番はこれから!

「今年の状況はあんまり良くなかった。浅場にタイが少なくて、深いところを始めたんだ」と、名物のディープエリアの釣りを飾らずに語る坂下隆一船長。「最後に入った所みたいな水温が高くて速い潮が入ってくれば楽しみ。これからなんじゃないかな」そう言って笑う船長は、言葉少ないが釣り人を思う心意気が折に触れ感じられた。まだまだ開拓されていない黎明期の深場の釣りと、浅場に期待される一つテンヤならではのスリリングな釣り。どちらも楽しみたいなら、早めに大原へ行くことをお薦めしたい。

寡黙で頼もしい坂下船長
リーダーの結束や野締めもお手の物
数より多彩さ、満足感がこの釣りの魅力だ

(釣りビジョンAPC・川添法臣)

今回利用した釣船
千葉県大原港『富士丸』
〒298-0004 千葉県いすみ市大原10579-1
TEL:0470-62-2016
定休日:毎月第1・3曜日
詳細情報(釣りビジョン)
富士丸ホームページ
出船データ
ひとつテンヤマダイ乗合
乗船料金:男性・1万2,000円(餌・氷付き)
集合:船宿に3時30分
出船:4時頃、準備が整い次第
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