釣りビジョン

2012.11.1号

ふじや釣舟店・静岡県清水港(巴川)
静岡県・清水港でクロダイのかかり釣りに初挑戦!

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『清水次郎長一家』の大政も楽しんだという逸話も残る静岡県・清水港のクロダイの“かかり釣り”。船宿が整備され、誰もが楽しめるようになったのは昭和初期。メインの釣り場となる清水港奥の折戸湾では当時、牡蠣の養殖が盛んだったそうで、「清水港へ流れ込む巴川岸から木造舟を艪で漕いで養殖棚に括り、“カセ釣り”のようにしてクロダイを釣りました。当初は“旦那”達が優雅に楽しんだ“大名釣り”だったそうですよ」と、『ふじや釣舟店』の3代目当主・納本学さん。25日、その歴史ある清水港の“かかり釣り”に初挑戦した。

流石“大名釣り”!弁当配達もあり♪

クロダイを釣ってみたいが、“かかり釣り”と聞くと難しそうで一人で挑戦する勇気は無い-釣り人の中にはそう思い、躊躇している人も多いはず。実は私もその一人。そこで、これを機会に皆さんを代表して自分で体験しようと挑んだ今回の“かかり釣り”。納本さんの紹介で常連の日沼大輝さんに特別に教えて頂く事になった。 午前5時、『ふじや釣舟店』へ到着すると、日沼さんが黒板へ「親子丼」と書いていた。お昼に自分の舟まで配達してもらうメニューを書いているとの事。さすがは“大名釣り”、コンビニで弁当を買って行く必要すらないのだ。舟はFRPで出来た和舟タイプなのだが、乗ってみてその広さに驚いた。釣り座の真ん中には大きなイケスが完備、ゴザ、ゴミ箱まで用意されていた。

黒板で今日のお昼を注文♪
受け付けで乗船名簿を記入
曳航中はのんびり準備

出発前&移動中でダンゴを作くろう!

[動画]ダンゴの作り方
出発は午前6時。それまでに乗船名簿を記入し、舟に乗り込み、釣り場に着くまでに“ダンゴ”を作る。船宿から釣り場までは曳き船で約30分。用意するものは、受け付けで1杯630円で販売しているコマセ3杯、配合餌(“チヌスパイス”1袋、“荒びきさなぎ”1袋、“チヌパワー”1袋)、集魚剤(“チヌにこれだ!!”1本)。まずは半日分のダンゴを作る。コマシ1杯半をバケツに開け、そこに“チヌパワー”を半袋、“荒びきさなぎ”を1/3袋入れて四隅から中央に向かって万遍なく混ぜ、Lサイズの餌バッカンに1/3海水を汲み、集魚剤半分を入れて水で溶き、再び混ぜる。その後、“チヌパワー”を1/3入れて混ぜ、ダンゴに粘りを持たせる。最後に餌バッカン1/3の海水を混ぜて完了だ。ダンゴは片手に乗っかる位取り、もう片方の手で同量取り合わせ10回握る。出来上がったダンゴの上からやさしく親指で押して潰れるくらいが丁度良い硬さだと日沼さんから教えて頂いた。

ベース餌&配合餌
アンコ&サシエ
テニスボール大のダンゴ

釣り場に着いたら“先打ちダンゴ”を投入

まるで“鵜飼い”の匠のようなロープ捌きで舟を操る納本さん。船外機付きの船に曳航された私と日沼さんを乗せた舟は巴川をゆっくり下り、“折戸”と呼ばれるポイントへ到着した。納本さんの合図と共にアンカーを放り込み、3本のロープで前後を止めて舟を固定した。すると、日沼さんはすぐに“先打ちダンゴ”を5個投入。「秋ですので、餌取りも多い時期です。そのため、“先打ちダンゴ”は5個位にしておきましょう」(日沼さん)。ダンゴの中に入れるサシエは5種類、明確な前アタリの出やすい活モエビにサシアミ、沖アミ、コーン、サナギ。「まずはモエビから使いましょう。尾羽を切らずに尾から通し、ハリ先を腹に抜き、片手に乗せたダンゴの中央に軽く埋め、アンコ(サナギやコーンのミンチ)を乗せ、もう片方の手で同量を乗せ10回握ります。テニスボール大の大きさが目安ですね」と日沼さん。いよいよ緊張の1投目だ。

仕掛け図
[動画]先打ちダンゴの投入方法
餌のローテーションも効果的

ハリ先にオモリをつけて底ダチを取る

「1投目から釣れてくる事は滅多にありません。昨日のコマシに着いた居残り組がいれば、1投目からクロダイが釣れてくる事もありますが、普通は午後1時頃からが釣れ出す事が多い…お!来ちゃいましたね」と、言いながら日沼さんが釣ったのは、20cm強のクロダイだった。そして、私もチャレンジ。今回用意したタックルは、初心者でも扱いやすいと言われるベイトリールにフロロカーボン1.2号を50mほど巻いた物。竿は1.35mのイカダ竿だ。まずは、日沼さんにレクチャーして頂いた通り、ラインに2号のチヌバリを結び、ハリ先にゴム管付きオモリを刺して底まで落とす。そして、リールのレベルワインダーの先から出たラインを油性の白マーカーで塗って目印を付け、ハリの15cm上に2Bのガン玉を付けたら投入準備完了だ。

ゴム管付きオモリ
ラインマーカーで目印を!
一投目からヒット!

“前アタリ”では待ち、“本アタリ”で掛ける!

ポイント“折戸”
まずは日沼さんと同じくモエビを付け、ダンゴを作って慎重に第1投。難なく、着底まではわかったのだが、肝心のダンゴが割れた瞬間がわからない。日沼さんの説明を見ているといとも簡単に見えるのだが…。繰り返す事5回目、ようやく竿先の重みの変化が分かり、竿先を震わすアタリが来た。クンクン、クン。咄嗟に大きな合わせを入れた。スカッ…。巻き上げてくると、モエビの頭だけとられていた。「今のは、クロダイの“前アタリ”ですね。合わせが早いです。“前アタリ”があったら慌てずに喰い込むのを待って“本アタリ(竿先がグッと入る)”が出たのを確認してから合わせてやる事が重要です」。クロダイ釣りではアタリがあってもすぐに合わせてはいけない事に初めて気付かされた。

私の作ったダンゴ
2尾目ヒット!
25~30cmが連発!

30cm級“本命”連発!一方私はメジナ…なぜ?

午前9時過ぎ、日沼さんは私の横で2投に1尾ペースで着々と25~30cm級の“本命”を掛けていく。一方私は、相変わらずダンゴが割れたのがようやく分かるようになったものの、魚を掛けられずにいた。すると、舟の周りに60cm級のボラが寄り始めた。ダンゴを作って落とすのだが、落ちている最中に大型ボラがモフモフとダンゴにアタックして壊しにかかる。すると、私の竿に明確なアタリが出た。ビン、ビビン、ギュン。その瞬間、大きく合わせを入れた。「やった!ついに“本命”が来た」。そう思ったのも束の間、水面には青目の丸っこい見慣れた魚体。25cm級のメジナだった。「メジナが釣れた時はタナボケしている可能性が高いです。そんな時にはもう一度オモリを付けてマーカーを付け直した方がいいですね」。日沼さんに言われ、再度底を取り直すと、何とさっき釣っていた場所は底から2mも上だったのだ。水深5mしかない場所で2mもタナを切れば“本命”が釣れるはずがない。

[動画]かかり釣り講座~実釣編~
私にはなぜメジナ!?
30cm級の良型!

ボラの猛攻を避けるためダンゴを別打ち

正午の時点で日沼さんは20尾超え。一方私は“本命”ゼロ。これはまずいと思い焦りも募る。しかし、ボラの猛攻は止まることなく、気が付けば大群になって底付近まで回遊し始めていた。日沼さんもそれに対応すべく私にアドバイス。「ここからは作戦を変えましょう。ガン玉を8Bに変えて、モエビのみを付けて投入しましょう。ダンゴとは別打ちしてその周りにいるチヌを釣るイメージです」。すると、竿先にカツカツ、と“前アタリ”が出た。慎重に“本アタリ”を待つ。すると、クッと竿先が入った。今度こそ乗った!ギュンギュンと引き込む引きを慎重にやり取り。しかし、海面に浮いたのは良型のカワハギだった。

「親子丼ですよ~♪」
海面で待ち構えるボラ達
“本命”だと思ったのに…

竿頭28尾、水深13m折戸湾では良型が15尾!

そして、納竿の午後3時を迎えた。日沼さんはその後も8尾追加し23~33cmを28尾と爆釣!しかし、私はオデコ。腕の差がハッキリ表れる結果となった。この日、別舟でポイント“折戸湾”に入っていた鈴木明さんも33~36cmの良型を15尾と好釣果。納本さんにボラの話をすると、「ボラが居る時にはクロダイも居る。ボラとはお友達にならないとね」と笑われた。秋のクロダイの数釣りは絶好調!私が言うのもなんだが、難易度の低い今の時期は初心者デビューには最高だ♪

最後まで日沼さんは絶好調!
折戸湾で出たグッドサイズ!
鈴木さんは良型のみ15尾♪

(吉田 洋一郎)

今回利用した釣り船
静岡県清水港『ふじや釣舟店』
〒424-0949 静岡県静岡市清水区本町5番1号
TEL:054-352-1704
詳細情報(釣りビジョン)
ふじや釣舟店ホームページ
出船データ
(料金)
1人=8,000円
2人=10,000円(コマシ1杯630円)
午前5時半集合、6時出船、15時迎え

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