北海のゴジラフィッシュを狙いに網走まで来たのだが…
何年か前の8月末。この哀れな語り部(←筆者のことです)は北海道、網走に住むけんちゃんこと藤田健吾さんを訪ねた。
けんちゃんは三重県出身、北海道の大学へと進学し、そのまま網走に住み着いている。農場で働きながら、オフシーズンにはまだ見ぬ怪魚を求めてアフリカ、南米、アジアへと旅に出るという暮らしぶり。男としての修行のため、網走の厳しい冬でも暖房は使わず、布団も敷かず、銀マットに寝袋だけで過ごしていた…だいぶストイックな変わり者…いや、若者である。
女満別空港に着くと、けんちゃんが迎えに来てくれて、そのまま近くの川で釣りをすることになった。
けん「ここは70cmくらいのアメマスが普通に釣れるんで、びっくりしないで慎重にやってくださいね」
そう言われたが、語り部には釣れず、けんちゃんは数投であっさり50cmオーバーを釣って見せてくれた。
翌日はこの遠征の本命魚、オオカミウオ狙いで船に乗る予定なのだが、夕食中に船長からけんちゃんに電話がかかってきた。
船長「明日は荒れるからダメ、出られないよ」
そんな…北海道まで来たのに!
ついにゴジラ、否、オオカミウオが深い海から現れた!
翌朝、知床のウトロ港に集合してから判断をしてもらうよう船長に無理なお願いをした我々。その甲斐あってか、早朝のうちはギリギリ出船可能な風、どうにか出船に漕ぎつけることができた。
船長「はい、いいよ~」
水深100mほどの沖まで出て、釣り開始。仕掛けをボトムまで落とし、ロッドをしゃくる。底を叩きながら、根に沿って流していく。
けん「底の方の潮が速いみたいです。底潮が速いと魚が根から出てこないので何も食わなくなります」
オモリを150号から200号に変えてみることに。どんどん風が強くなり、万事休すか…と思ったら、けんちゃんのロッドのティップがわずかにクンクンと動いているような?
けん「アタってます」
一気に巻き合わせすると…。
けん「よし、掛かった! オオカミだろこれは!」
ファイトの末、100mのボトムから上がってきた巨体は水面でヌラヌラと身をくねらせていた。船に上げられると、観念したのか、切腹前の武将のように潔く落ち着いている。一見、怪獣っぽくてグロテスクに映るが、よく見るとかわいい顔をしているじゃないか。主食は貝。哀しきモンスターは深い海へと帰された。
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