いにしえのタックルでデカハゼを狙ってみた【千葉県・外房河川】

これからシーズン本番を迎えるハゼ釣り。滋賀在住の語り部が、外房に里帰りして、実家近くの川でデカハゼを狙うことにした。最新の道具を持ってきてないけど…実家に眠る超オールドタックルでなんとかしてみようと思う。

淡水
  • 千葉県 外房河川

知る人ぞ知る、地元のデカハゼリバー

お盆の後半から千葉の実家に帰省していたこの哀れな語り部(←筆者のことです)。台風7号が過ぎ去った翌日の朝に横沢前編集長から電話で叩き起こされ…。

横沢「実家にいるの? そっちでできる釣りのネタない?」

望月「そうですね…タックルを持ってきてないんで、ハゼくらいですかね…」

横沢「お、ハゼならそろそろ釣れるんじゃないか?」

望月「ハゼなら、めちゃくちゃ古いハゼ用の竹竿があります。でも、台風の被害があった直後だからどうかな…」

不安を抱えながらも、ハゼなら釣れるだろ…と思ったこの哀れな語り部。なにせ、初めての釣りが5歳の頃、従兄弟のお兄ちゃんに連れて行ってもらったハゼ釣りだったし、子供のテキトーなスタイルでもそれなりに釣れていたのである。

しかも、地元の川のハゼはデカい。

昔はそうと知らずに釣っていたのだ。当時、テレビの釣り番組で江戸前のハゼ釣りの回を観ていると釣れるのは10cmくらいの小さなハゼばかり。「なんで大きくなる前に釣ってしまうのだろう?」と、見当違いのことを考えたりしたものだった。なにせ、地元の川で釣れていたハゼは夏でも15cm以上、秋になれば20cmオーバーもそれほど珍しくなかったからだ。

しかし、今回は大型台風が過ぎ去った直後。果たして…。

これが地元のデカハゼリバー。同じく千葉県出身の某バスプロもこの小さな川のポテンシャルを知っていた。 ©望月俊典
しかし、問題は台風7号通過の影響。河口近くなのにたくさんのオタマジャクシが見られた。上流部や川に注ぐ水路からここまで流されてきたのだ。嫌な予感が…。 ©望月俊典

ハゼ用竹竿を購入から27年目に使ってみる

猛烈な暑さの8月18日。実家に残してある釣り具の山を探してみると…あった。大昔に買ったハゼ用竹竿だ。練馬のとある駅前にあった昔ながらの釣り具屋さんが店じまいをするというので、その閉店セールで買ったのだ。いつか使うだろうと思って数千円を出したあの日から、27年。ようやくその時が来た(つまり、新品である)。

ハゼ用竹竿というのは非常に特殊な作りをしている。継竿なのだが、中通しになっていて、手元には糸を巻きつけるための原始的なリール?のような突起が3本出ている。どうしてこんな複雑な作りになっているのだろうか?普通の先端に糸を結ぶ延べ竿ではダメなのか?

推測するに…ハゼ釣りはボトムを探る釣りである。すると、どうしても根がかりが発生し、仕掛けや道糸が切れることが少なくないのだ。その度に道糸全体を結び換えるのは手間だし糸も勿体無い。なので、手元の〝リール〟に巻いた糸を出すことで、常に適度な道糸の長さを維持し続けることができるという構造になっているのだと思う。

さて、ハゼ釣りの仕掛けとエサを買いに地元の釣り具店に行くことにした。そこで、竿をご高齢の店主に見せると…。

店主「この竿どうしたの? 結構いいモノだよ」

望月「昔、東京の古い釣り具屋さんで買ったんです」

店主「これ、糸巻きが象牙だし、新品なら4~5万円で売れるよ。象牙って謳っちゃいけないんだけどね」

なんと、なかなかの値打ちものだった!そういや、買う時もいい竿だと言われたような気もする。この竿を使うためには糸を通すためのワイヤーが必要、ということで、それも併せて購入した。

さっそく帰って糸を通そうとしたところ、これが通らない。竿の穂先が細すぎて、0.4mm径の糸通しでは途中で詰まってしまうのだ。いろいろと試行錯誤したのだが、結局、糸は通せず。

無念ではあるが、ハゼ用竹竿は諦めるしかなかった。

これがハゼ用竹竿。3本継ぎで綺麗な調子をしている。この細い穂先までどうやって中通しの穴を開けているのか…。釣り具のオーパーツというような…古来の技術である。 ©望月俊典
竿を鑑定してくれた釣り具屋のご主人。子供の頃からたまに買い物をしていたのだが、領収書を書いてもらう際に「え、◯◯◯(親の職業)の望月さん?」と毎回言われる。 ©望月俊典
糸巻きに15mほどラインを張ってみた。竿に糸を通すのは難儀だが、均等に負荷がかかるため綺麗に曲がるだろうし、非常に機能的である。 ©望月俊典
八百善釣具で揃えたハゼ釣り仕掛け。右上から反時計回りに、中通し用ワイヤー、ハゼ鉤、道糸、八百善オリジナル天秤、ナス型オモリ3号、エサのジャリメ。 ©望月俊典

30数年ぶりに再会した地元のハゼ。怪魚並に嬉しい

仕事のオファー翌日の早朝には釣り場に立っていたこの哀れな語り部。下げ始めのタイミングに合わせて釣りをスタートさせた。場所は子供の頃から慣れ親しんだ河口橋の周辺。

しかし、やはり台風の影響なのか…護岸の上まで浸った水にはオタマジャクシやメダカなど、水路や上流から流されてきたであろう淡水生物がたくさんいる。増水した川はかなり濁っているし、塩分濃度も普段よりずっと低そうだ。この時点でかなりの苦戦を覚悟した。

とりあえず、大昔のスピニングロッドに’90年代のリールをセットしたこれまた超いにしえタックルで仕掛けを投入。子供の頃は投げて放っておくだけで少しは釣れたので、最初はそうすることにした。しかし、この日は流れが速い。仕掛けが橋脚周辺の沈みモノまで流されて、すぐに根がかってしまう。

今度は流れのヨレている場所へ仕掛けを入れて、しばらく待ってみることにした。すると…チョンチョンとティップが振れる懐かしいアタリ。巻いてみると…ハゼだ! この川で釣るのは実に30数年ぶり! サイズはまあ15cm級といったところだが、夏ハゼにしては十分だ。

しかし、下げ潮が止まるとアタリも止まってしまい…結局、朝の3時間で本命のハゼは2尾しか釣れなかった。そのことを横沢前編集長に伝えると…。

横沢「俺の経験から言うとだな、ハゼはズル引きした方がいいよ。釣れた場所には何度もハゼが入ってくるから、またそこを狙うんだ」

とのこと。翌日も同じ場所で釣ることにした。

ハゼ用竹竿に代わって使用したタックル。ロッドは年代物のシェークスピア/エクセレントⅡ 1504。ヘタしたらあの竹竿よりも古い。リールは90年代に買ったダイワ/エンブレム-X。 ©望月俊典
仕掛けは八百善釣具オリジナル天秤、オモリはナス型3号、ハリは赤ハゼ7~8号、エサはジャリメ。 ©望月俊典
1尾目のハゼ。生まれて初めて釣った魚との再会に、少年時代がフラッシュバックした。 ©望月俊典
ハゼ以上によく釣れたのがセイゴ。根がかりを嫌って変化の少ない場所をズル引きすると「コンコン!」と鋭いアタリが出る。ハゼだと「ドゥン!」という鈍い感触が多いので、アタリの出方でエリアを判断することもできそうだ。 ©望月俊典

ハゼ釣りの極意は恋愛と同じ!?

翌日も朝の下げ始めからポイントへ入ったこの哀れな語り部。少しすると、自転車に乗った元気なおじさんが「釣れますか?」と声をかけてきた。昨日も対岸で釣りをしていた人だ。ズル引きにトゥイッチを入れる独特のスタイルだったので、よく覚えている。

話してみると、このあたりに別荘を持っていて、東京からよく釣りに来るとのこと。この川では28cmの超デカハゼを釣ったこともあるらしい。

おじさん「去年は入れ喰いだったんだけど、今年はダメだね。特に今は台風の影響で全然釣れないよ」

そして、おじさんにハゼ釣りの極意を教えてくれたのは数年前までこの辺りに住んでいたホームレスの方で、それは素晴らしい腕前だったという。伝授してもらったコツを聞くと…。

おじさん「ハゼは女を釣るのと同じ。こっちから誘わなきゃダメなんだ」

そのホームレス師匠が女性にモテたかどうかは別にして…やっぱり待つだけじゃなくアクションを加えた方がいいらしい。その教えを参考にしてズル引きなどしてみたが…状況が悪すぎるのか、朝は1尾しか釣ることができなかった。

ラストトライとなった午後の部。ズル引き中に「ドゥン!」というアタリが出たのですかさず合わせると、16cmのハゼが釣れた。やはりズル引きした方がいいのか…と思ったが、そのあと置き竿でも1尾釣れたので、結局、置き竿3尾、ズル引き2尾というなんともいえない結果となった。

今回は台風直後という悪条件だったので、ぜひ秋にリベンジして記事化してみたいものだ。外房は9~11月がベストシーズンなので、ぜひとも20cmオーバーのデカハゼにトライしてみてほしい。

いろいろと親切に教えていただいた自転車のおじさん。スマホで過去の釣果を見せてくれたが、28cmの超デカハゼ写真は見つからず。釣ったセイゴをくれると言われたが、それは丁重にお断りした。 ©望月俊典
ズル引きすると、流れのヨレのスポットでアタリが出た! ©望月俊典
…と思ったら、ギンブナ。子供の頃もよく釣れたゲスト。 ©望月俊典
置き竿が持っていかれそうなアタリが出たと思ったら、キビレ。昔は見かけなかったが…。 ©望月俊典
釣ったハゼは天ぷらで食べる。背開きにするのが基本。中骨も美味しい。 ©望月俊典
170℃の油でさっと揚げる。あまり時間をかけない方がいい。 ©望月俊典
食味は絶品。上品な旨味のある白身で、ふわふわとした食感が楽しめる。臭みはまったくなかった。 ©望月俊典

施設等関連情報

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

望月 俊典 千葉県九十九里町生まれ。雑誌『Rod and Reel』副編集長を経て、フリーランスの編集/ライターとなる。海外の秘境釣行も大好きで、『世界の怪魚釣りマガジン』の立ち上げ&制作を手掛けた。現在は、琵琶湖事務所で仕事や釣りにいそしむ。著作は『バスルアー図鑑』(つり人社)。ちなみに、学生時代に、ネッシー(といわれているであろう現象)を目撃&撮影したことがある。

その他オススメ記事