専用竹竿&投げ釣りでハゼの爆釣を味わう【三方五湖】

8月に千葉の実家近くの川で30数年ぶりにハゼを釣ったこの哀れな語り部(←筆者のことです)。その体験が忘れがたく、今度は福井の三方五湖でもハゼを狙ってみることにした。いにしえのハゼ用竹竿も復活!

淡水
  • 福井県 三方五湖

若狭の五大湖!? 三方五湖を知っているか?

三方五湖とは、福井県の美浜町と若狭町にまたがる5つの湖(三方湖、水月湖、菅湖、久々子湖、日向湖)の総称なのだが、かなり特殊な水域である。
隣接してはいるものの、それぞれの成り立ちが異なり、水質や水深もまったく違うのだ。

例えば、三方湖は淡水。水月湖、菅湖、久々子湖は汽水。日向湖は海水である。また、日向湖の最大水深は39.4m、水月湖は33.7mあるが、三方湖は3.4m、久々子湖は2.3mしかない。
もともと三方湖、水月湖、菅湖は内陸湖だっただが、江戸時代の工事により水路によって結ばれ、水質や生物相にも変化を及ぼしたという。

まだまだ興味深いことが山ほどある三方五湖だが、説明はこれくらいにしておこう。

今回のターゲットはハゼなので、若狭湾と繋がる汽水湖・久々子湖(くぐしこ)で釣りをすることにした。

語り部が住んでいる滋賀の湖西からは、夜ならクルマで1時間15分ほどと意外なほどアクセスもよい。高島から若狭側へと山越えする国道303号には深夜営業する釣具店が3店舗あり、京都滋賀方面からの釣り客が多いことが窺える。

4時に自宅を出て、国道303号の釣具屋さんで仕掛けとエサを買い揃え、6時前には釣り場に着いた。


久々子湖の水路。こういう場所なら延べ竿でも釣りやすい。 ©望月俊典
久々子湖で釣りをするなら遊漁承認証が必要。南西郷漁業共同組合や「シルバーショップ湖畔」などで買える。遊漁料は1日500円。釣りができるのは日の出から日没まで。 ©望月俊典
なんの変哲もない護岸を歩きながら、ハゼ用竹竿で底を探っていく。意外なほど感度がいい。 ©望月俊典

いにしえのハゼ用竹竿が修理を経て復活

さて、この日(9月25日)のハゼ釣りには個人的なテーマもあった。
学生時代に潰れる直前の釣具屋さんで購入した、いにしえのハゼ用竹竿でハゼを釣るのだ。

8月の釣行時には糸が通せずに使えなかったのだが…その際、いろいろと試行錯誤しているうちに完全に中通しの穴を途中で塞いでしまい、どうにもならなくなってしまっていた。

そこで、これまで何冊も和竿の書籍を作っていらしたつり人社の編集者さんに泣きついて、修理ができる東京の釣具店を紹介していただき…めでたく復活と相成ったのである。

現場で0.2mmのワイヤーで糸を通して…(本当は家でやったのだが手元の竿に通っていなかった…)、準備完成である。

仕掛けは極めてシンプル。スナップとハリス留め付きスイベルを道糸で結び、スナップには0.5号のナス型オモリを、ハリス留めにはハリス付きハゼ鉤をセットするだけ。

エサはイシゴカイ(千葉ではジャリメと呼んでいた)をチョイスした。
エサ持ちの良さではアオイソメが優れるが、食いの良さではイシゴカイが優れる…らしい。なので、食いがよく数釣りが期待できる状況なら手返しのよいアオイソメ、食いがシブめでも確実に釣りたいならイシゴカイ、そんなふうに理解した。ちなみに、イシゴカイは在来種、アオイソメは外来種とされる。

なんの変哲もない護岸からちょいと仕掛けを振り込む。水深は1mくらいだろう。ボトムをちょっとズル引きして、ステイ。それで食わなければチョイと持ち上げてみたりする。

すると…2投目のステイ中にブルブルン!という明確な生命感が竹竿を持つ手に伝わってきた。すかさず合わせると、グイグイグイグイ…と不器用な一生懸命さを感じさせる引き。抜き上げると15cmほどのハゼだった。

購入から27年目にして、ついにハゼ用竹竿の使命を全うさせることができた。


シンプルな延べ竿の仕掛け。道糸をスナップとハリス留め付きスイベルに結び、オモリとハリスをセットするだけ。ハリスは短め。イシゴカイは頭にハリをちょん掛けして、胴体を3~5cmくらいにカットする。 ©望月俊典
仕掛けなど。ハリはオーナーのアカハゼ6号、ハリスは0.8号、オモリは竹竿にはナス型0.5号、投げ竿にはナス型2号を使用した。小さいハゼはハリを飲みやすいので、100均の先曲がりピンセットがあると便利。 ©望月俊典
釣りを開始したのは6時20分。底を少しズル引きして、5秒ほどステイしたところ、手元にわかりやすいアタリ。サイズも悪くないぞ。 ©望月俊典
ハゼの腹ビレは左右がほぼ結合し、吸盤のようになっている。これで壁や岩に貼り付くのだ。 ©望月俊典

半日足らずで48尾! これは爆釣なのか!?

久々子湖の石積み護岸や水路などを釣り歩く、この哀れな語り部(←筆者のことです)。

ハゼ用竹竿は元々ボートでやることを前提に作られているので、大場所よりも、やはり水路など小場所の方が使い勝手がいい。岸際のスポットを次々と撃っていけるし、沖に出られてお手上げということにもなりにくいからだ。

朝のうちは忙しいくらいに釣れた。とくに小さな支流が流れ込むポイントではアタリが止まらない。流れ込みちょい沖の、少し深くなるスポットでは大型が次々と食ってきた。誘いのアクション、ズル引き、ステイも交えたが、そんなのは関係ないと思えるほどなんでも釣れるのだ。

しかし、日が高くなるにつれ、祭りが終わったかのように反応が消えていった。
ハゼは沖へと帰っていったのだろう。

結局、11時に納竿。圧倒的自己記録であろう、48尾を釣ることができた。

江戸前のハゼ釣り名人はなんと1時間に100尾釣る人もいるらしく、それには遠く及ばない。しかし、数釣りに走ってしまうといかに手返しをよくするかという作業になってしまうので…語り部的にはこれでも釣りすぎなくらいだ。ノスタルジィに浸りながら1尾1尾ハゼを愛でるのがいい。

これはなかなかの大物、17.5cm。ハゼ用竹竿でこのサイズを掛けると素晴らしい釣り味を楽しめる。 ©望月俊典
朝方は細い水路との合流点で連発モードに突入した。 ©望月俊典
久々子湖はハゼだけではなく、多彩なゲストに恵まれた。多い順に、セイゴ、シマイサキ、チヌ、クサフグ。写真はクサフグだ。 ©望月俊典
この日は5時間で48尾を釣ることができた。語り部的には爆釣である。 ©望月俊典

翌朝も気づいたら久々子湖でハゼ釣りをしていた

爆釣でおかしくなったのか、翌朝も暗いうちから久々子湖へ向かっていた。
語り部の記事の常連、琵琶湖のレンタルボートひさの屋のご主人・猛さんも一緒だ。

猛さん「ハゼは昔から釣ってみたかったんや。目標は30匹!」

前日好調だった流れ込みの合流点を猛さんに勧め、語り部はテキトーな場所で釣り開始。すると…ウキ釣りスタイルの猛さんがいきなり連発!

猛さん「もう5匹釣れたよ。ハゼって狭い場所に固まっているんやな」

語り部はハゼ用竹竿で場所を探りながら釣り歩く。序盤はなかなか釣れなかったが、徐々にハゼの付き場がわかってきた。見えない地形変化を把握し、そこを集中的に攻めると振り込むたびにアタリが出始めた。

昨日と同じく、日が高くなるにつれて近場しか攻められないハゼ用竹竿ではアタリが遠のいてきた。なので、この日の個人的テーマである投げ釣りへとシフト。

2号のオモリをセットした仕掛けを20mほど沖へキャストし、ボトムを感じながらゆっくりズル引き&ステイ。投げるたびに「ゴゴン!」という気持ちのいいアタリが復活した。やはり、ハゼは沖へ出ていたのだ。延べ竿にフッキング率では劣るものの釣れるサイズはデカいし、地形を探りながら釣る面白さがある。

この日も11時には満足して納竿。猛さん45尾、語り部35尾だった。

猛さん「釣りはやっぱり釣れないとあかんね。あー楽しかった!」

猛さんの運転する軽トラに揺られて、昼過ぎには帰宅。午後は昼寝からの原稿書きと、実に有意義な1日を過ごした。

三方五湖のハゼ釣り。さすがに3日連続では行かなかったものの、今後、語り部の年間釣りローテーションに入るのは間違いなさそうだ。

ウキ釣りで朝からラッシュを味わう猛さん。天ぷらサイズを釣りまくっていた。 ©望月俊典
9時ごろから投げ釣りにシフトした語り部。地形変化や底質の違いを感じながらアタリを取っていく。これも楽しい。釣れればデカい! ©望月俊典
ハゼといえば天ぷら。熱しても身はふわふわのままで固くなることはない。江戸前天ぷらの代表格であるキスよりも美味いとさえ感じる。 ©望月俊典
ハゼの唐揚げ。ゴジラのような見た目だが、カリッとした歯触りで、噛むほどに香ばしい旨みが口に広がる。それでいてしつこさもなく、箸が止まらなくなってしまう。 ©望月俊典

施設等関連情報

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

望月 俊典 千葉県九十九里町生まれ。雑誌『Rod and Reel』副編集長を経て、フリーランスの編集/ライターとなる。海外の秘境釣行も大好きで、『世界の怪魚釣りマガジン』の立ち上げ&制作を手掛けた。現在は、琵琶湖事務所で仕事や釣りにいそしむ。著作は『バスルアー図鑑』(つり人社)。ちなみに、学生時代に、ネッシー(といわれているであろう現象)を目撃&撮影したことがある。

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