SOUL OF BIG BITE 菊元俊文
〝SOUL OF BIG BITE〟がキャッチフレーズの菊元さん。ダイナミックなバスフィッシングでモンスターサイズのバスを追い求める魂のアングラーだ。1997年にはJBの初代ワールドチャンピオンに輝き、トーナメントをはじめ数々の大会で活躍。2002年にはトーナメントを離れ、このタイミングからタックル開発に専念することになる。
そして現在は、タックルメーカー・エバーグリーンの取締役副社長として、テレビ・雑誌などでも活躍中。ちなみに、菊元さんは大のメタル好きとしても有名で、メタルダンスユニット「BABYMETAL」の大ファンでもある。
度肝を抜かれたジグ番長の実力
〝菊元俊文と言えばジグ番長〟というフレーズを連想する方も多いだろう。これまでにもさまざまなジグを駆使し、ビッグバスをキャッチする…。菊元さん主演の人気番組『BIG BITE』でも、そのようなシーンを多く紹介してきた。
記憶に新しいのは真冬の和歌山県合川ダム。厳しい展開の中で迎えた、初日終了30分前。ふと思い出し、急遽入ったインレット。手にしたのは、キャスティングジグ1/2オンスにキッカーバグ4インチのトレーラー。この組み合わせでインレットの最奥にあるスーパーシャローからバスをキャッチしてみせたのだ。第六感とも言えるポイント選びに加えて、ここまでほぼ投げていなかったジグのチョイス。
菊元さんは「ルアー変えて一投目で釣れることが多いけど、きっとなんか感じてるんやろなぁ」とよく口にする。前述した合川ダムの魚は一投目ではなかったが、菊元さんのこれまでの経験が無意識の中で釣果を生んでいるに違いない、と感じさせてくれる一匹だった。そして、この話には続きが…!
寒さがさらに厳しくなった1ヵ月後。いろいろテストしたいものがあると合川ダムにやってきたそうだ。同行していたエバーグリーンの福留昇プロによると「真冬のゼロワンゲームと言うのが最適と言えるくらい寒い日」だったようだが、結果は、驚きの7本11キロオーバー。すべてジグで釣るという、見事なジグ番長っぷりだったそうだ。「長年の付き合いですが、度肝を抜かれるとはこういうことかと思った」と福留さん。できれば、今年の冬の『BIG BITE』でもそんな度肝を抜かれるようなシーンをお願いしたい。
ロクマルでは満足できない?!夢は世界記録更新
「ジグ番長」としての一面もある菊元さんだが、私の第一印象は「ビッグベイター」であった。ビッグベイト、中でもバラム300でモンスターバスを狙う菊元さんの印象のほうが強い。ディレクターとして初めて同行した奈良県池原ダム。2020年の出来事がそうさせているのかもしれない。
撮影初日は近畿地方の梅雨入りと重なり、大雨に。菊元さんはその中で56.5cmをキャッチしていた。2日目も雨を期待したが、時折晴れ間も見え始めた。天候を嘆く菊元さんであったが、担当初回で尻つぼみな展開も困ると、私も内心ドキドキしていた。
そのような状況の中、やってきたのは白川筋の白川大橋。橋脚から離れた場所でエンジンを切り、引き波の影響を与えないよう、ゆっくりと近づく。いつものルーティン。一投目、橋脚から十分なディスタンスを取り、上流に向かってビッグベイトをキャスト。これ以上ないというコースを通すが反応なし。つづく2投目。ビッグベイトのファストリトリーブにどこからともなくバスが現れ、ヒット!カメラにもそのバイトシーンがバッチリと映っていた。サイズは『BIG BITE』の番組記録更新となる63.5cm!まさしくモンスターバスをキャッチした瞬間であった。
これには大興奮の菊元さんであったが、撮影用のコメントを撮り終えたあと、釣りをすぐに再開。これには驚いた。撮影に慣れたプロの方々であれば、「昨日50アップ釣れたし、このロクマルで撮れ高十分!」と取材を終えるパターンもあるのだが、菊元さんはそんな素振りすらなかったのだ。むしろ、目標を世界記録更新にシフトチェンジし、ビッグベイトを投げ続けた。いや、もしかすると、最初から世界記録更新しか狙っていなかったのかもしれない。
撮影の際、地元のアングラーさんからボートをお借りし、撮影艇として操船してもらうことがある。そんな時、私に対して地元のアングラーさんがよくこんな言葉を発する。「菊元さんって、めちゃめちゃ釣り好きなんですね」。地元ではかなりの釣り好きで知られているはずの面々が、口を揃えて言うくらい、菊元さんは釣りがめちゃめちゃ好きで、釣りをめちゃめちゃ楽しんでいる。
それほどの情熱があるからこそ、今もなお、バスフィッシング界のトップを走り続けることができるのであろう。
菊元俊文の人間力
菊元俊文のスゴさを語る上で忘れてはいけないのは、「人間力」ではないだろうか?トーナメントや試合など、プレッシャーのかかる場面でも冷静さを保ち、実力を発揮するメンタルの強さはもちろんのこと、後輩をはじめ、社外の人々にも愛される人間性も魅力的なのだ。
年に一度、年末に忘年会ならぬ「菊年会」が開催される。菊元俊文を愛する人々が集まる会で、その参加人数は年を追う事に増え、今では120名以上を超える一大イベントとなっている。菊元さんに会うために全国各地からそのためだけに多くの人が集まる。菊元さんの高い人間力がわかる出来事のひとつだ!
バスフィッシング界のレジェンドはこれからも加速し続ける
菊元さんの魅力は、この他にもたくさんある。現在、愛用しているロッドのオライオンシリーズの監修はもちろん、ネーミングまで考えている。「スカイソード」、「ムーンゲイザー」、「ブラックガーディアン」など、全て手にしたくなる名前が付けられている。
菊元俊文は〝いちアングラー〟のみならず〝バスフィッシング界のレジェンド〟とも言える存在だ。彼の釣りに対する熱い情熱、探究心、そして卓越した技術は、多くのアングラーを魅了しつづけてきたが、もちろんこれからもバスフィッシング界を引っ張っていく存在であり続けることだろう。私も微力ながら、その魅力を多くのアングラーに紹介していきたいと思う。
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