【なるほど 沖釣り辞典】相模湾のコマセキハダ 50kgオーバーの〝オダモン〟を狙う

毎年、9月下旬から10月初旬にかけて、小田原沖で巨大キハダが上がり始める。まさに今、〝小田原モンスター〟略して〝オダモン〟シーズンの真っ只中だ。50kg以上のキハダが〝オダモン〟の称号を得られるのに対し、20kg級は〝ポケモン〟などと揶揄される。そんな〝オダモン〟を狙い、釣りビジョンでも過去、沖釣りコンテンツ『なるほど!沖釣りマスター』でロケをしたことがある。松本圭一マスターが30kg前後を3本キャッチし、話題となった。その模様を「なるほどネタ」と共に振り返ってみる。

船釣り
  • 神奈川県 相模湾

剣崎から小田原へ相模湾を横断

三浦半島の先端に位置する剣崎松輪江奈港。その港で遊漁船を営む「一義丸」は、マダイやワラサをはじめ、コマセ釣りを得意とする船宿。もちろん、カツオやキハダへの熱量も高く、多くのファンが集まる。しかし、2022年シーズンは、カツオ・キハダの魚影が極端に薄く、ロケが成立する可能性が低い中での出船となった。それでも、松本圭一マスターと鈴木新太郎マスターの2人なら、何とかしてくれるのではないか?そんな淡い期待を胸に小田原沖を目指したのだった。

松本圭一マスターと鈴木新太郎マスター。 ©釣りビジョン
一義丸。 ©釣りビジョン
仕掛け図。ロッド:ビーストマスターキハダ(シマノ)電動リール:ビーストマスターMD6000(シマノ)。 ©釣りビジョン
小田原沖は富士山がすぐ近くに見える。 ©釣りビジョン

コマセで魚を船に寄せる「流し釣り」

相模湾では8月の開幕から暫くは、魚の群れを追いかける「追っかけ釣り」が主流となるが、〝オダモン〟シーズンが本格化する9月下旬以降は、コマセで魚を船に寄せる「流し釣り」がメインとなる。この日も「流し釣り」でスタート。指示ダナは海面から40m。ハリスは26号10mから12mで、タナ下7~8mからコマセを振りながら指示ダナで待つ。松本マスターは二段テーパーで重めのスイベルを使用している為に、仕掛けが馴染むまで1分弱という計算。魚が船に寄って来るまでは、4分間隔で仕掛けを入れ替え、鈴木マスターと協力し、常に船の下のコマセを切らさない様に心がけていた。ここで早くも鈴木マスターのなるほどネタが飛び出す。

なるほどネタ1【コマセの入れ替えは、隣同士で交互に】
「乗合船の隣の人と、入れ替えのタイミングをずらす事で、必ず船の下にコマセがある状態を作ります」という鈴木マスター。特にこの日は、釣り人が2人と少ない。お互いに上げ下げのタイミングを計りながら入れ替えていく。ここで松本マスターからもなるほどネタが続いた。

なるほどネタ2【ドラグは置き竿なら強め。手持ちなら少し緩めに設定】
「置き竿の場合、アタリがあってもアワセる事が出来ないので、ハリを飲み込まれてハリス切れを防ぐ意味でドラグを強めに設定します。その負荷でハリが口元まで出て来てカンヌキに掛かる事を狙います。手持ちの場合はフッキングでアワセ切れしない様に少し弱めに設定します」。確かに、ハリを飲み込まれてノドの奥にハリ掛かりしてしまうとハリスが歯に擦られて簡単に切れてしまう。いずれの場合でも、ハリ掛かりは口の横のカンヌキに掛ける事が理想とされるのだ。

流しはじめに探見丸に映ったキハダらしき反応。 ©釣りビジョン
松本マスターとの入れ替えのタイミングを計る鈴木マスター。 ©釣りビジョン
置き竿と手持ちでややドラグ設定を変えていた。 ©釣りビジョン
カンヌキ(口の横)のハリ掛かりが理想。 ©釣りビジョン

遂に一本目のキハダをキャッチ!

船を流し始めて3時間。2人で協力して手返しを繰り返していると、徐々にコマセに反応している様子が「探見丸」に映し出された。「これ喰いそうじゃない?」そんな会話が繰り返される様になって間もなく、松本マスターの竿先が突っ込み、勢いよくリールから道糸が引き出されていく。間違いなくキハダのヒットだ。チリチリと激しいドラグ音に船上の緊張感が高まる中、リールの水深計はあっという間に270mを表示する。魚が走っている時は無理に止めたりしてはいけない。走りが止まるとマグロリングを投入し松本マスターも応戦開始。ビーストマスターMD6000のパワーでじわじわと魚を浮かせに入る。竿尻を下腹にあて竿を立て気味に、ポンピングで魚を浮かし電動リールで巻いていく。

50kg以上の〝オダモン〟クラスであれば、350mから50mまで上げて来ても、また元の350mまで走って行ってしまう事もザラ。スタンディングファイトに自信のないアングラーは、キーパーに竿を掛けたまま電動リールで少しずつ巻き上げる事も出来る。暫くするとマグロリングが効いたのか魚が大人しくなった。テンビンまで上がり、船長がハリスを手繰り出すと、海中から青白く光る巨大な物体が見え始めた。すんなりとネットに収まったのは30kg弱のキハダ。「オダモンじゃないですけど」。と松本マスターの笑顔が弾けた。

1本目は30kg弱。〝オダモン〟ではないが十分に立派なサイズだ。 ©釣りビジョン
60m~70mの間に「へ」の字に見えるのがオキアミを食べているキハダの反応。 ©釣りビジョン
ノコギリの様なキハダの歯。 ©釣りビジョン

2投連続ヒットからの3本目もキャッチ!

「大型を一本だけ釣るよりも、普通サイズを何本か釣る方が好きなんです」と言いながら、間髪を入れずに連続ヒットさせる松本マスター。「2本目はキツイ」と笑顔でファイトしているが、既に両腕は乳酸が溜まってパンパンなはずである。それでも難なく同じサイズをキャッチすると、またしてもなるほどネタを披露した。

なるほどネタ3【魚の反応に合わせて、指示ダナの上から落とし込む】
「仕掛けのハリの位置よりも魚の反応が上ずってしまう場合、例えば指示ダナが40mでも35mまでビシを持ち上げ、魚の目線の上から落とし込んでみます」。魚の活性が上がって、指示ダナ付近まで上ずってしまう事は意外と多い。指示ダナよりも下に落とし込む事は絶対にやってはいけないが、指示ダナよりも上を探る事はマナー違反ではない。実際に松本マスターの2本目はこうした状況判断でヒットに持ち込んだものである。これも「探見丸」を使用する者の大きなアドバンテージと言える。こうして松本マスターは沖上がり間際に3本目もキャッチ。厳しい結果も予想されたロケだったが、「神回」と言っても過言ではない釣果を携えて終了となった。

今年、2024年の相模湾は3年ぶりに魚影が濃く、既に70kg級の〝オダモン〟サイズも上がっている。動画では誘いのタイミングやアタリを出す為の、実践的なテクニックが紹介されているので、〝オダモン〟との格闘の前に、ぜひ一度チェックして欲しい。
特にMVN賞(最高のなるほどネタ)に輝いた松本マスターのなるほどネタは必見!今年こそ夢の50kgオーバーを目指して相模湾に繰り出しては如何だろうか。



魚の反応に合わせて 指示ダナの上から落とし込む。 ©釣りビジョン
この日3本目。 ©釣りビジョン
2022年シーズンでは奇跡的とも言える。©釣りビジョン

施設等情報

【一義丸】
住所:神奈川県三浦市南下浦町松輪284
電話:046-886-1453
アクセス
車:横浜横須賀道路 佐原ICを降りて右折→野比で国道134号線を右折→三浦海岸交差点で左の県道215号線に入り直進
電車:京浜急行「三浦海岸駅」から送迎バス(要予約) 一義丸ホームページ

施設等関連情報

【キハダ&カツオ船】
料金:14,000円 (税込)
※オキアミ3kg・氷1個付き(追加のコマセは3kg1,000円)

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

津端 雄大 釣りビジョンディレクター。

その他オススメ記事