多摩川中流域で春の風物詩、マルタウグイの釣り!【NO 多摩川 NO LIFE】

春真っ盛り! この時期、多摩川を賑わせる遡上魚と言えば、サクラマス……否、マルタウグイ!! 群れを成して川を遡上し、激しく水飛沫を上げるその姿は圧巻。鮮やかなオレンジ色の婚姻色が出たマルタウグイを多摩川で釣ってみよう!【NO 多摩川 NO LIFE】は、少年時代から多摩川を愛してやまないライター「宮崎紀幸」による不定期連載企画です。

淡水

多摩川の春の風物詩的な遡上魚

毎年、3月の後半になると、いつもより釣り人が増える多摩川中流域。狙いは僕らが『ログサーモン』と命名しているマルタウグイだ。なぜログサーモンか? それは『マルタ→丸太→ログ』というカナから漢字、そして英語への変換と、浅い瀬でバシャバシャと飛沫を上げ遡上し産卵するシーンがサケさながらであることに由来する。そんな理由でマルタウグイを仲間内ではログサーモンと呼んで愛でているというわけだ。このネーミングはかなりのお気に入りだが、命名してすでに7~8年、なかなか浸透していない(笑)。

浅瀬で水飛沫を上げるマルタウグイの群れ。その光景は、サケの遡上シーンに似る。それゆえ僕らは、この季節的な春のターゲットを『ログサーモン』と呼んで親しんでいる

ハイシーズンは桜や菜の花の盛期とリンクする

今回のターゲットであるマルタウグイは、早い年だと3月の初旬から河口方面でチラホラと釣果情報が聞こえはじめるが、僕がテリトリーとする河口から20~25km付近だと、ハイシーズンは3月の下旬~4月の中旬。多少の早い遅いはあるものの、瀬でバチャバチャと飛沫を上げる最盛期は桜の満開から河原に菜の花が咲き誇る時期が見事にリンクする。つまり3月下旬~4月初旬の多摩川では桜、菜の花、マルタウグイの遡上、そして花見客にマルタ狙いの釣り人で、とても華やかかつ賑やかになるのだ。

マルタウグイ最盛期の多摩川中流域。毎年、遡上のピークを迎えると多くの釣り人が旬のターゲットを求めて集まる。これも多摩川の春の風物詩だ
浅瀬を遡上するマルタウグイの群れ。写真中央上部に無数の魚影が確認できる。群れの確認には偏光グラスが欠かせない

基本はダウンストリーム。魚の目の前でルアーを泳がせ続ける!

さて、マルタウグイの釣り方だが、僕が実践するのは自分の立ち位置から対岸側、もしくは下流方向へキャストして流すダウンクロス~ダウンストリームの釣りだ。産卵のために汽水域から上流の瀬を目指して遡上しているマルタウグイは、基本、喰い気でルアーにアタックするのではない(と思う)。そのためルアーを激しくアクションさせて誘っても、その動きに反応して釣れるケースは少ない。効果的な釣り方は、マルタウグイが群れている瀬の中で、ルアーを留まらせた状態で泳がせ続ける方法。このダウンで流し込む釣りだと、クロスやアップの釣りとは異なり、流れの中にいる魚とルアーの進行方向が同じになるため、スレ掛かりが少ないのも利点だ。

群れのいる瀬の上流側に立ち、ルアーを群れの中に流し込んで釣る。ルアーを流れに乗せ、群れの目の前で泳がせ続けてバイトを待つ。いろいろな釣り方があるが、これが僕の必釣パターンだ
浅い瀬の上流側に立って釣る場合はニーブーツやヒップブーツがオススメ。ポイントとなる瀬の水深は約30cm

喰い気がないのに釣れる理由。ルアーのカラーにも関係あり?

あくまでも推論だが、喰い気がないのに釣れる理由のひとつは産卵の邪魔をする異物や産みつけた卵を喰いにくる小魚の排除行動からだと思っている。もうひとつはルアーを仲間だと錯覚しての行動だ。最盛期の浅い瀬ではマルタウグイの群れがバシャバシャと激しく絡み合って水柱を上げている。まさに、くんずほぐれつの状態。この時、絡み合いながら口で腹やお尻を突いて刺激し、産卵行動を促しているのではないだろうか? その結果として、仲間と誤認したルアーに喰いついてしまう……というわけだ。
この推論の補足として、婚姻色の出たマルタウグイに似たカラーが高実績であることが挙げられる。よく言われる産卵期の魚には赤系が効果的という定説はマルタウグイにも当てはまる。ただ、それとは別に、黒×シルバー×オレンジのいわゆる『ウグイカラー』の実績が非常に高い。これはルアーを仲間だと思い、産卵行動を刺激しているという仮説の裏付けなのでは? 実際は僕自身がウグイカラーを自己暗示的に多用している結果……というのが真相かもしれないが、仮説や持論を立てて狙うのが釣りの醍醐味でしょ(笑)。

ウグイカラーのスプーンでキャッチ。他の色でももちろん釣れるが、この時期のマルタウグイ狙いでは、このカラーが個人的には高実績
ウグイカラーのスプーンが入手できなくても大丈夫。黒い油性ペンとオレンジのマニキュアがあれば自分でペイントできる。……と思ったら100円ショップではオレンジのマニキュアが売っていなかった。でも大丈夫、赤と黄色のマニキュアを混ぜてオレンジを作った
ウグイカラーのスプーンを量産。このスプーンを仲間だと思い、絡みついて口を使うのだという持論のもとに夜な夜なスプーンを簡易ペイント。こういう遊びが楽しいのだ
婚姻色で見事に染まり上がったマルタウグイのボディ。身体の下部にオレンジ色のラインが長く1本入るのがマルタウグイの特徴だ
こちらもウグイカラーでキャッチ。だが、これはマルタウグイではなく、大型ではあるがノーマルのウグイ。婚姻色のオレンジ色のラインが2本以上入るのが通常のウグイらしい

どんなルアーで狙うか? そしてフックアレンジについて

マルタウグイの釣りで高実績なルアーは5~8gクラスのスプーンか7cmクラスのミノー。個人的には手返しのよさからスプーンの使用頻度が高いが、浅い瀬の中で泳ぎ続けさせる釣りのため7~9cmクラスのフローティングミノーもオススメだ。産みつけた小魚の排除や仲間と誤認させてのバイトというパターンを考えるとミノーはかなり有効だ。また、ルアーを仲間と誤認させる釣りのパターンが成り立つのであれば、ウグイカラーのビッグベイトが活躍することも考えられる。これはまだ試していないが、ぜひ試してみたい。ただ、ビッグベイトのフックをマルタウグイの口に掛けるには、アレンジやチューンが必要になるかもしない。
僕はスプーンやミノーを使った釣りでも、バーブレスのシングルフックを使用している。というのも、この釣りは群れの中にルアーを流し込むスタイルのため、トレブルフックだと意図しないスレ掛かりが多発してしまうからだ。それを避けるためにもスプーンの場合もミノーの場合もシングルバーブレスがオススメなのだ。

天気がよく気温が上がったタイミングがベスト!
マルタウグイの釣りをしていて感じるのは、晴れた日の気温が上がったタイミングでの活性の高さだ。雨や曇りの日よりもスカッと晴れ、気温も上がったタイミングでバチャバチャと浅瀬で水柱を立てているケースが多い。瀬に差していない時は、浅い瀬の下流側の深いところで群れているようだが、日が照ると一気に浅瀬に差してくる。個人的には、このタイミングの釣りが好きだ。春の風に桜吹雪が舞い、河原には菜の花が咲き乱れ、川沿いではウグイスやヒバリがさえずる。そんなうららかな春の日に、ログサーモンことマルタウグイの釣りを楽しみたい。

多用するのは5~8gクラスのトラウト用スプーン。フックはすべてシングルバーブレスにしている
流れの中に留めやすいフローティングのミノーも高実績。こちらも不要なスレ掛かりを減らすためにシングルバーブレス化して使用
狙うのはこのような瀬。春の日差しが降り注ぐタイミングで、マルタウグイの群れが瀬にどんどんと差してくるのだ
ルアーならロッドはバス用、トラウト用、シーバス用などが流用可能。僕は7フィート6インチのシーバスロッドに2500番のスピニングリールを使用している。ラインはPE0.8号にフロロリーダーの10lbをセット
サイズは50cm前後。そのため、なかなかの引き味が楽しめる。この時期ならではの、美しいログサーモンことマルタウグイの釣りを楽しんでみよう

施設等情報

■多摩川(内共12号)
多摩川漁業協同組合 TEL042-361-3542
川崎河川漁業協同組合 TEL044-811-5127
日釣り券=1,000円 年券=5,000円

施設等関連情報

特になし

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

宮崎 紀幸 東京は多摩川のほとりに住まうフリーランスライター。
地元・多摩川での釣り&野外活動を楽しみつつ、自身でもトラウトやシーバスなどのルアーフィッシングを嗜む。冬はカワハギ釣りにも熱くなる!

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