【テンカラ検証釣行】”カワムツキラー”は本当にキラーなのか!?

専門に狙うフリークが全国的に増加傾向にある清流の身近なターゲット・カワムツ。疑似餌への反応が良く、ルアーは勿論、毛バリで釣っても面白い。そこで今回は検証釣行を行ってみることにした。たった2種類の材料で出来るカワムツ釣りに有効な毛バリパターンをテンカラ釣行とともに紹介する。

淡水
  • 埼玉県 成木川

愛すべき身近なターゲット「カワムツ」をテンカラで狙う!

カワムツは極めて食欲旺盛な小魚。藻類や水生昆虫のほか、水面に落ちた甲虫類など陸生昆虫なども捕食する。晩春以降、流れがゆったりとした水深のあるトロ場や、草が繁茂した岸際などに毛バリを浮かべると、腹をパンパンに膨らませたオスのカワムツが水面を割って食らいつく。

「ここぞ」というポイントから真っ先に毛バリに飛び出すカワムツは、その場所で最大サイズであることが多く、15cmを超えると大型だ。口一杯に毛バリを頬張ったカワムツは、そのローカルチックな姿態と相まってどことなくユーモラス。毛バリを外そうとして体を握ると、ギュウ!と鳴く(?)のも可愛らしい。

カワムツ釣りの毛バリは、フライフックの16~20番のサイズにハックルを巻いた一般的なパターンを用意すれば問題はない。しかし、今回はとくにカワムツ(オイカワ、ヤマベ含む)の食欲にスイッチを入れる効果がある、カワムツキラーの毛ばりパターンを紹介する。

婚姻色に染まったカワムツ。スマートではないがどこか愛らしい。©釣りビジョン
カワムツはこんな場所を好む。垂れ下がった木々の葉からは餌となる昆虫類が落下する。©釣りビジョン

キラキラ毛バリとタクティクス

その毛バリとは、どのようなパターンなのか。ヘッド部分にゴールドビーズを付け、ボディをピーコックハール(クジャクの細長いフェザー)でぐるぐる巻くだけ。製作に2分もかからない超シンプル毛バリである。
「えっ、そんな単純なもの?」と疑問視する人もいると思うが、これまでのところ、期待は裏切られていない。この毛バリに名称はなく、あえて名付けるとしたら「ピーコックバグ」。バグは虫の意味だ。

ボディに使ったピーコックハールは、フライフィッシングでは、甲虫類をイメージしたフライをタイイングする時によく使われるマテリアル。テンカラ毛バリでも同様に用いられる定番の材料だ。このピーコックハールとビーズの2種類を組み合わせただけのフライが、なぜかカワムツ釣りに効果絶大なのだ。推測の域を出ないが、ピーコックの色調と煌めきが甲虫など陸生昆虫を思わせ、キラキラと光を放つヘッド部分のビーズが、毛バリの存在を際立たせて、カワムツを誘引するのではないかと思う。

毛バリが着水したと同時にバイトすることもある。しかし、多くの場合、毛バリが沈んでいる付近で水面が盛り上がる、波紋ができるなどといった変化、ラインの不自然な動き、あるいはロッドを通してのコン、コツンといった直接的な信号でアタリをとるとよい。上手くいかない場合は、ポイントの上流にポジションをとり、ダウンストリームで狙う。ロッドを立て、ラインを張り気味にして毛バリを水面まで引き上げ、チョン、チョンと流れに逆らって逆引きすると、チェイスしてくる。因みに、毛バリを咥えてもアタリが現れないケースもあるが、その場合は毛バリを流し終わったら、空合わせするとフッキング率が向上する。

「ピーコックバグ」。シンプルな毛バリだが、実力は折り紙付き。©釣りビジョン
ピーコックバグを製作するための材料。ビーズは“100円ショップ”で購入したもの。フックは18番。©釣りビジョン

埼玉県エリアの成木川2ヵ所で実釣

東京都を水源にした埼玉県・荒川水系の成木川。自宅に近いこともあり、ヤマメ釣りを上流域の東京都エリアで、カワムツやオイカワ釣りを下流の埼玉県エリア(飯能市)で行なうことが多い。流程がわずか約17kmの小河川だが、私が頻繁に通う里のフィールドだ。

今回、ピーコックバグの優位性を改めて検証するために入川したのは、都県境に架かる両郡橋下流にある岩井堂観音下手の岩井堂橋前後と、その下流、入間川の合流点付近。

タックルは、テンカラ竿2.6mに3号フロロカーボンのレベルライン3.5m、その先にハリス0.6号1mというセッティング。ピーコックバグは18番を用意した。なお、2ヵ所の釣り場ともに川幅があるので、ミスキャストをしない限り、キャスティング中にラインが樹木などに引っ掛かることはない。

まずは岩渕地区の岩井堂橋前後を釣る。一帯は両岸が豊かな河畔林で覆われている。流れは大小の岩が随所に点在し、落ち込みや淵、瀬が連続、渓流魚が生息していそうな雰囲気の渓谷的景観を有する所。瀬の流心脇、淵尻、トロ場といった、めぼしいポイントに毛バリを打ち込んでいく。瀬では確認出来なかったが、流速が緩やかでやや水深のある所では、毛バリが着水した途端に我先にとカワムツが群がり、盛んに捕食しようとする。フッキングしないよう合わせをせずに毛バリを手前に引いてくると、後方を数匹のカワムツが追尾してきた。ビーズとピーコックの輝き、波動が引き寄せるのだろう。

上流に向かってキャストし、流心脇をトレースしてくると、コツン、コツンと続けざまにアタリがくる。個体の撮影のため、軽く竿をあおってフッキングさせる。13、14cmの婚姻色、追星の出たオスだ。下顎にしっかりとかかったピーコックバグを外し、リリース。その後、大・小のカワムツが連発した。

岩井堂橋直下の成木川の川相。岩が点在し、ポイントも多数。©釣りビジョン
ピーコックバグを咥えた良型のカワムツ。©釣りビジョン
小型だが、下顎にフッキング。©釣りビジョン
アタリは頻発。リリース多数。©釣りビジョン

入間川合流点付近ではオイカワが連続ヒット!

岩堂橋前後での釣行数日後、入間川合流点付近で2回目の検証を試みた。実のところ、前回とは異なる河川で釣りをしたかったのだが、35℃超えという連日の猛暑。健康に留意して、照りつける太陽が陰ったタイミングを狙ったので、やむを得ず自宅から直近のフィールドを選択した。

場所は落合地区で入間川と合流するすぐ上流の平瀬。一帯は入間川から遡上してきた良型オイカワもカワムツと混成するなど、シーズンを通して良好な釣り場だ。平瀬の瀬脇、流心、石裏、巻き返しなどを下流から順に探ったが、ときたまピシャンと出るだけで反応が薄い。川底でヒラを打つオイカワは確認出来るのだが、水面近くまで中々浮上してこない。

ピーコックバグでもダメかと諦めかけたが、試しにダウンストリームで毛バリを扇状に流し、毛バリが水面から顔を出したところで軽くアクションをかけたところ、これが奏功。オスのオイカワが飛び出した。アップストリームで、毛バリをナチュラルドリフトさせる釣り方よりも、この日のオイカワは、水面で毛バリを滑らせ、誘いをかけるとバイトが頻発した。

また、対岸に向かって毛バリをキャストし、着水したと同時に流れを横切らせるアプローチも釣果を上げた。川底でヒラを打つだけで、水面に浮かぶ毛バリを無視するオイカワの攻略にも、アプローチさえ工夫すれば、ピーコックバグは有能な気がした。

入間川と成木川の合流点右岸にある駐車スペース。©釣りビジョン
向かって右が入間川、左が成木川。合流点下のプールはコイやバスなども釣れる。©釣りビジョン
ピーコックバグに出た繁殖期のオイカワ。©釣りビジョン
オイカワやカワムツの魚影が比較的濃い合流点上流。©釣りビジョン
カワムツだけでなくオイカワにもキラキラ毛バリは有効。©釣りビジョン

施設等情報

■『入間漁業協同組合』
住所:埼玉県飯能市阿須343-1(飯能市林業センター内)
電話:042-973-2389
入間漁業協同組合

施設等関連情報

■岩井堂観音下流岩井堂橋周辺の釣り場までのアクセス
 西武線飯能駅南口から西武バス「東青梅駅行」、
 または「岩井堂行」に乗車して「岩渕団地」下車
 ※周辺には駐車スペースなし

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

小島 満也 雑誌「北の釣り」東京支局を経て、埼玉県西部地方の地域紙「日刊文化新聞」の記者。文化新聞定年退職後は同紙及び釣具の業界紙「釣具新聞」に記事執筆。還暦過ぎても釣欲が衰える気配なし。テンカラを愛好。

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