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キミは《ワカサギすくい》を知っているか?【琵琶湖・冬の新風物詩】

2024年01月26日公開

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ワカサギ釣りといえば全国的には冬の風物詩なのだが…こと琵琶湖に限っては「釣り」ではなく「すくい」の方が断然メジャー。このローカル文化を哀れな語り部が体験してみた

ここ数年流行りつつある琵琶湖のワカサギすくい

どれくらい流行っているかというと…冬の夜はバス釣りもハイシーズンなのだが、バスアングラーの3〜5倍くらいワカサギすくいの人(以降、サギ師と呼ぶ)がいる感じだ。

ところで、ワカサギはもともと琵琶湖の魚ではない。1994年あたりに突如急増し、現在ではコアユに次ぐ2番目の漁獲高になっている。2019〜2021年の3年間は南湖でもワカサギが大量発生し、バスボートが大船団になっていたのも記憶に新しい。

さて、語り部がワカサギすくいに初めて挑戦したのは3年前の冬。3回浜に出たが、最高でも5〜6匹しか獲れなかった。それで打ちのめされ、去年一昨年は確か一度もやらず。しかし、また今年挑戦することにした。

ついにワカサギ大量接岸。興奮が一気にMAXへ

まずは去年の12月24日、クリスマスイブの話。3年ぶりのワカサギすくいに出撃した。語り部の自宅は琵琶湖まで徒歩2分なので、ウェーダーを履いた状態で部屋のドアを出て、そのまま湖西の浜に立ち込む。波打ち際をヘッドライトで照らしながら1kmほど南下して、また戻る。その間に見たワカサギは10匹以下。しかも群れではなく単独行動の変わり者だった。

どうも、今シーズンは大減水や暖冬の影響なのか、近年にくらべて獲れていないらしい。

年が明けて1月。2度軽く偵察に行くも、ワカサギはほとんどおらず、手網を持つまでもなし。

そして、1月中旬のある日。前日にわりと暖かい雨が降っていたので、これはチャンスでは…と、20時半過ぎに近くの浜へ様子を見に行ってみることに。ヘッドライトで琵琶湖を照らした瞬間…なんと水深3cmくらいのスーパーシャローまでワラワラとワカサギが湧いているではないか。ついに、時が来た!

走って家に戻り、身支度を整え浜に戻った。ワカサギすくいスタート!

ひとすくい目を4〜5匹の群れに打ち込むと、さっそく1匹網に入った。ピチピチ、ギラギラ、網のなかで踊り輝いている。歩きながらどんどん網を入れていくと…面白いようにワカサギが獲れる。ひとすくいで5〜6匹まとめて獲れることもあった。3年前に苦労して獲った匹数を1すくいで、だ。

 

2時間で250匹! 釣るよりすくう方が効率いいみたいだ

最初の30分は絶好調だった。が、しかし、情報が一気に回ったのか、どんどんサギ師が湧いてくるではないか。まるで集合をかけられた暴走族のようである。最初は500mくらいの浜に3人くらいしかいなかったが、あっという間に10人、12人と増えていった。

誰かが流したすぐ後にまた誰かが流し、魚影が濃い場所は居座る人もいたりして…岸際にいたワカサギは警戒を強め、みるみる数が減っていった。そうなると、サギ師たちも魚影の濃かったエリアに固まり出し、我慢くらべのような雰囲気になっていく。

もはやこれまでか…と思いつつ、ちょっと離れた場所にひとり歩いていくと、プレッシャーを嫌って移動してきたと思しきワカサギの群れがまた接岸していたりもして…静かに獲りまくった。

結局、休むことなく歩き続け手網を振り続け2時間。獲れたワカサギを数えてみると…250匹!

初心者にしては上出来ではないだろうか? 効率だけなら釣るよりもずっと有利な気がする。ただ、翌日にこの原稿を書いているのだが、体中が筋肉痛やら腰痛やらで痛い…。

初心者が語る、ワカサギすくいのハウツー

3年越しにワカサギの大量捕獲に成功したこの哀れな語り部。失敗と成功を通して気づいたことを一応まとめておこうと思う。

●マメに下見に行く
たぶん、これが一番重要。なんの釣りでも同じなのだが、ターゲットがたくさんいる時間にいる場所に立つ、これが絶対。細かいあれこれは二の次だ。

●明るいライトを使う
見えなければ話にならない…という以上に明るいライトはワカサギを追い込んだり足止めしたりという武器になる。

●いる場所の傾向を掴む
川、細かい流れ込みの周辺、岸から駆け上がりが近いところ、沖にワカサギが溜まる何かがある場所…などある程度の傾向があるのを感じた。

●接岸するタイミングは?
大潮、寒波、雨…など大きな変化があったときにワカサギも動くような気がする。関東リザーバーのワカサギは早春の大潮、雨、濁りで動くので似たようなものかもしれない。

●すくい方は?
・パターン1
ワカサギの群れの気配を感じたら、ライトで照らし、岸を向いているワカサギの沖側へと手網を素早く下ろし、熊手で掻くように一気に引き寄せる。2〜3匹の群れなら確実に1匹を仕留める。
・パターン2
岸に沿って回遊していたら、その進行方向を読んで手網を動かし岸へと追い込みながらすくう。
・パターン3
流れ込みなどにいるワカサギは下流から近づいて群れを散らさないようにそっと後ろから手網に入れる。

●岸辺の歩き方
岸に沿って歩いていくのだが…歩く方向で差が出るのを感じた。右利きだったら、ズバリ、湖を右側にして歩く方がいい。右手が常に湖側にあるため、素早い手網入れができる。野球で左バッターの方が出塁に有利なのと同じ理由だ。また、重くなったバケツを傾斜の低い側の手で持って歩くと身体の負担も大きく、腰が痛くなってしまう。

食べるまでがワカサギすくいである

食べて美味しい、ワカサギ。語り部はいろいろな湖のワカサギを食べてきたが、琵琶湖のそれは確実にベスト3に入る。ちなみに、他は高滝湖(千葉県)と桧原湖(福島県)。

今回も琵琶湖の恵みに感謝である。

最後に、自分への戒めも含めて、獲りすぎにはぜひとも気をつけたい。SNSで連日のように大量捕獲の報告をしている人もいるが…我先に、根こそぎ獲る必要なんてあるのだろうか…? 今後も多くの人が楽しめるよう、慎みのあるサギ師でありたいと思う。

※編集部注:近隣住民の方の迷惑にならないよう、配慮をお願いいたします

※記事の掲載内容は公開日時点のものになります。時間経過に伴い、変更が生じる可能性があることをご了承ください。

この記事を書いたライター

望月 俊典
千葉県九十九里町生まれ。雑誌『Rod and Reel』副編集長を経て、フリーランスの編集/ライターとなる。海外の秘境釣行も大好きで、『世界の怪魚釣りマガジン』の立ち上げ&制作を手掛けた。現在は、琵琶湖事務所で仕事や釣りにいそしむ。著作は『バスルアー図鑑』(つり人社)。ちなみに、学生時代に、ネッシー(といわれているであろう現象)を目撃&撮影したことがある。
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