2023年04月21日公開
水ぬるむ4月中旬、小魚たちが産卵を控えて活発に捕食行動に入る時期だ。今回は千葉県・“房総三川”(養老川、小櫃川、夷隅川)の一つ、夷隅川支流の上流部、名もなき川への釣行となった。案内役は当方の師匠であり、小物釣りにも精通している元『JGFA(日本ゲームフィッシュ協会)』常任理事の古山輝男さんにお願いした。
ヤマベは、身近な釣りの対象魚だったが…
今年は、例年に比べて暖かくサクラの開花が早く訪れ、4月に入ると既に葉桜状態。新緑が眩しい4月中旬、ヤマベの様子を見に出掛けた。標準和名オイカワは関東ではヤマベ、関西ではハエと言ったほうが馴染みを感じるだろう。
関東以西に自然分布していたヤマベは、琵琶湖産アユの放流などによって東北地方などにも分布域を広げ、日本全国どこの川でも釣れる魚だった。ところが近年農薬(ネオニコチノイド系=毒性が長く続き水生昆虫が育たない)の影響で、餌がなくなって田んぼや農地の周辺の川ではほとんど見られなくなってしまった。そのため、ヤマベは無農薬やオーガニック農法を行っているところ、または山間など、農薬などの影響を受けていない場所の川で探さなくてはならない。釣り人にとっても残念なことだ。雑食性で産卵期は5~8月。産卵期、オスは追い星ができてヒレが大きくなり、体色が鮮やかに変わる。
1投目から“本命”登場!
ヤマベ用の釣り具を持っていなかったので古山さんにお借りした。竿は4m前後の和竿。道糸0.8号、ハリス0.4号、ハリは軸が細く懐の深いヤマベバリ(3、4号)。釣り方はフカセ釣り。オモリは使わず、餌の重さだけで水中に仕掛けを漂わせて釣り方だ。今回は目印にナツメ型シモリウキ2個を使った仕掛けを使った。餌はサシ(ハエの幼虫)。
古山さんから「サシは2匹掛け。底を這わせるイメージでやってごらん」とアドバイス。早速仕掛けを投入。ゆっくりと沈んでゆく餌を見ながらシモリウキを注視する。川の流れはほとんどないので、水底の様子は分かりやすい。水深は90cm程。その時“キラッ”と魚がヒラを打つ魚影が見えた。竿を少しだけ上げてみると軽い重み。ゆっくりと抜き上げる。釣り上げたのは9cmほどの“本命”ヤマベだ。
幸先の良いスタートに思わず笑みがこぼれる。ハリ先にサシが1匹残っていたので、1匹を追加して再びゆるい流心に仕掛けを入れ直す。隣りで釣っていた古山さんも竿をしならせている。抜き上げたのは最大級と言える15cmのヤマベだった。すぐに仕掛けを入れ直したらアタリがあり、釣れてきたのはハヤ(和名・ウグイ)、「お前じゃないんだよな~」と言いながらもカメラに収めた。
続けて投入するが入れ掛かりとまではいかない。アタリはあるがハリ掛かりしないのは、小魚がつついているからだろう。案の定4、5cmの小ヤマベが数匹掛かってきた。
すっかり様変わりした房総の里川。場所探しに一苦労
今回古山さんに案内してもらった40~50年前に釣り歩いたという房総の里川も、かなり様変わりしているようで場所探しは苦労した。架かっていた橋がなくなっていたり、川が浅くなって釣りが出来ない状態の流れや道そのものが消滅している場所もある。引き返したり迂回してヤマベたちの住処を探索した。
目安としては、『小湊鐡道』と『いすみ鉄道』の終着駅・上総中野駅周辺から記憶を辿って貰った。それらしい釣り場に着いても前述のように魚がいなかったりで、実際釣りが出来た時間は小1時間ほどである。それでも釣れるポイントが見つかれば嬉しいものだ。1ヵ所でも有難い。とりあえず竿を出してみる。“本命”でなくても魚がいることが分かれば上出来だと思う。“本命”が釣れれば最高だ。
しかし、ヤマベのポイントが見つかっても昔のような数釣りは出来なかった。数多く生息している場所なら、数十匹単位で釣れるだろう。ヤマベが面白いのは餌釣りは勿論、フライやテンカラ釣り、毛バリを数本(5~10本)付けた“蚊バリ”釣りなど、色々な釣りが楽しめることだ。高滝湖や養老川上流ならもっと釣れるのだが、もう少し身近な田んぼの周りの小川で釣れたら有難いなと感じた釣行となった。