【難攻不落】のカキ殻に潜むチヌを攻略! 《岸釣りチニング》の基礎から極意までを渡邉長士が伝授!

チヌをルアーで釣るのがじわじわと流行ってきている。西日本ではかなり以前からメジャーなスタイルだけど、最近は関東にも浸透。「チニング」と呼ばれ、ボート釣りも岸釣りも盛んになってきた。ただし、西日本に比べると関東での岸釣りは簡単ではない。そこで、房総のソルト魔人「チョーシ」こと渡邉長士さんに、基礎から極意まで教わってきた。

ソルト

まずは、釣り人泣かせのカキ殻エリアを偵察した!

渡邉「ここがカキ殻エリアです」

潮の引いた河口域には、白いカキ殻がびっしりとついた川底が露わとなっていた。

渡邉「関東は、関西ほどはチヌの魚影が濃くないんです。だからイージーに釣れる場所がそんなにない。雨が降って濁ったりしたら、それなりにイージーに釣れることもありますけどね。ただ、カキ殻エリアはカニとかが多いので、チヌがそれを食べに来ます。だからカキ殻エリアにはチヌがいるんです」

ところが、このカキ殻はエッジが非常に鋭利で、密集地には無数の溝があり、根がかりの嵐になる。チニングの標準的なリグは、根がかりに強いとされるフリーリグだが、それでも一発でスタックしてしまう危険な場所。そんな難攻不落のカキ殻エリアを研究しつくした渡邊さんが出した結論は?

渡邉「スプリットショットリグですね。カキ瀬みたいな場所で足元にゴロタとかがあったら、重いシンカーは秒で引っ掛かります。だからフリーリグはオープンな場所で使った方がいい」

ただしオープンな場所のみではなかなか釣れない。特にデイゲームや澄み潮の時は厳しいという。ひとまず日中にカキ殻エリアとオープンエリアの位置を頭に叩き込んでから、いったん休憩。潮の動く夕方に車から出て、出撃した!

【渡邉長士プロフィール】 わたなべたけし・房総半島を拠点にして、主に岸からのソルトウォーターフィッシング全般をこなす。「アジング」の創始者にして名付け親としても知られていて、既存の釣りに左右されず、常にオリジナリティーのある釣りを開拓。ハゼをワームで釣る「ハゼット」、ボラを釣る「マレッティング」など、その探究心はとどまることを知らない。 ©釣りビジョン 写真:横沢鉄平
干潮時に撮影したカキ殻エリア。複雑な凹凸があり、カニなどの甲殻類が身を潜める。潮位が上がると目視できなくなり、根がかりの嵐だ。 ©釣りビジョン 写真:横沢鉄平
消波ブロックに貼りついたカキ殻。このようなストラクチャーやブレイク上にカキ殻があると、その鋭いエッジにかるくラインが触れるだけで切れる危険性がある。 ©釣りビジョン 写真:横沢鉄平
【チニングのいでたち】磯の釣りなどに比べると比較的軽装だが、安全面を考えて偏光グラス(日中のみ)、キャップ、ライフジャケットは必須。ランディングツールとして、ランディングネットとフィッシュグリップは欲しいところだ。移動する展開が多いのでタックルは1本に絞りたい。 ©釣りビジョン 写真:横沢鉄平

基本中の基本はフリーリグでボトムを釣っていくこと

夕方は上げ潮だったので、上流に向かって流れが出ていた。水位が高くなったので、川底のカキ殻は見えない。まずは、比較的カキ殻の少ないオープンなエリアでフリーリグを投入。ワームはDAIWAのアーバンシュリンプ。

チニングの主流はベイトタックルだけど、渡邊さんはシンカーを軽くしているのでスピニングを使用。スピニングタックルで軽いフリーリグというだけで、かなり根がかりは減少する。基本はこのリグでいい。では動かし方は?

渡邉「まずボトムを釣ることが大切ですね。ズル引きするか、シェイクしながらリトリーブするか、ボトムバンプ。この3つが基本で、ポーズを入れることも大事です」

上流に向かってゆっくりと歩を進めつつ、丁寧にボトムを釣っていった。ところが渡邊さんには2度ほどアタリがあったものの、フッキングには至らず。

渡邉「大阪にいるシルバーウルフのテスターで『モリゾーさん』(森浩平氏)という方がいるんですけど、その人に『チヌのアタリは育てろ』と言われたことがあります」

テッペイ「アタリを育てる?」

渡邉「チヌって、ワームの足や尻尾だけをついばむようなバイトがあるので、即合わせしちゃうとすっぽ抜けちゃうんです。あとは針先が歯に当たって刺さらないこともよくあります。だからついばむようなアタリがあっても合わせずにおくんですね。やがてもぐもぐと喰わせて、しっかりと口の中に入って、重みが乗ってから合わせを入れる。そのアタリが出るまで育てるわけです」

なるほど、しかし日が完全に沈んでも、俺にはついばむようなアタリさえない。そのうち、ごつごつというカキ殻の感触が伝わってきた。

テッペイ「あ、根がかりした!」

渡邉「う~む、ここから先はスプリットショットがいいですね」

これがスピニング用のフリーリグ。シンカーはナス型オモリ2号をスプリットリングでスイベルと接続した自作だ。 ©釣りビジョン 写真:横沢鉄平
【基本アクションその1・ズル引き】 ロッドをスライドさせるなり、リールをゆっくり巻くなりして、ボトムをずるずると引く。とにかくボトムにコンタクトさせることが大事だ。 ©釣りビジョン 写真:横沢鉄平
【基本アクションその2・シェイク引き】 リーリングでボトムをずる引きしつつ、ロッドを細かくシェイクさせる。ノー感じになりにくいので、メンタル的にもいい。 ©釣りビジョン 写真:横沢鉄平
【基本アクションその3・ボトムバンプ】 リールを巻きながらロッドを軽くしゃくって、リグを浮きあげて、また落としてボトムを叩く。この繰り返し。少しリアクションを掛けるイメージだ。 ©釣りビジョン 写真:横沢鉄平

カキ殻エリアは必殺のスプリットショットリグで攻める

渡邊さんはオフセットフックにワームをセットして、フックのすぐそばに3Bのガン玉を打った。

テッペイ「スプリットショットって、少しフックとの間隔を空けて打つのかと思ったら、ほとんどくっつけるんですね?」

渡邉「ガン玉を離したほうがひょっとしたら根がかりが減るかもしれません。でもくっつけると操作性が高くなるんです。ジグヘッド的に使えるので、アクションが安定するんですね。ガン玉が離れていると暴れちゃう」

スプリットショットリグに変えたとたん、渡邊さんにグッドサイズがヒット! しかし取り込み時にラインブレイク!

渡邉「ああ~! クロダイはあまり根に入ったりしないので、あまりラインブレイクしないんですけどね」

渡邊さんのアタリは確実に増えた。オレにも2回ほどアタリが来た! それよりも何よりも、あのヤスリのようなカキ殻地帯にもかかわらず、まったく根がかりしないのだ!このリグ凄い。渡邉さんは、釣りをしつつスプリットショットリグに行きつくまでの過程を話してくれた。

渡邉「足元のゴロタとかカキ殻についているチヌをどうにしかして釣りたいと思って、最初はフリーリグシンカーをどんどん軽くしていったんです。そして、いっそのことノーシンカーでもやりました。そしたら、さすがに沈むのが遅すぎて効率が悪い。そこで、3B、つまり1gのガン玉を追加してみたら、だいたい水深1~1.5mのシャローだったらバランスもぴったり。ひどいカキ殻の場所でも、その上を滑るようにして、乗り越えてくれたんです。魚もすごく釣れるようになりました」

これがスプリットショットリグ。渡邉流はもうフックアイにくっつける感じで3Bのガン玉を打つ。フックはオフセットタイプなので、根がかりは非常に少ない。 ©釣りビジョン 写真:横沢鉄平
最初は河口部の護岸を上流方向に歩きながら、フリーリグ中心に投げ続けた。 ©釣りビジョン 写真:横沢鉄平

演出方法はフリーリグと同じでいい。バス釣りのハングオフは有効

スプリットショットリグでも、演出法はフリーリグと同じで、ズル引き、シェイク引き、ボトムバンプの3種類。ただ、少しだけコツがある。

渡邉「バス釣りをやっている人だったらわかると思うんですけど、ノーシンカーワームをボトムで使っている感じですね。ずるずる引いて、ところどころ引っかかるじゃないですか。それを引っかけては、外す感じですね。いわゆるハングオフと呼ばれるテクニックです」

ところがこの日はどういうわけか食い込みが悪かった。8時半になると対岸では打ち上げ花火が上がり、そろそろ取材も切り上げなければならない時間に。8時45分、俺はついに決断した。

テッペイ「9時になったら上がりましょう」

渡邉「わかりました。あと15分ですね」

その15分で、渡邊さんはなんと2本ものチヌを釣り上げたのだ! まるで、それまでわざと釣らなかったのように。

渡邉「連発でしたね!」

テッペイ「あと15分と言われたから、急に気合が入ったんですか????」

渡邉「それもありますけど、実はあのタイミングで水の流れが変わったんですよ」

河口部の対岸の更に向こうで、打ち上げ花火が上がった! これは8時半の時報。 ©釣りビジョン 写真:横沢鉄平
残り15分宣言をすると、すぐにこのチヌが釣れた。ルアーはアーバンシュリンプ2.4インチ(DAIWA)のスプリットショットリグ。 ©釣りビジョン 写真:横沢鉄平
ほぼ連発でもう1匹かけた! かなりのビッグファイトの末、ネットでキャッチ! ©釣りビジョン 写真:横沢鉄平
サイズアップに成功! 9時45分からの15分で2匹のチヌを仕留めたのは見事だ! ©釣りビジョン 写真:横沢鉄平

最後のキモはダウンキャストとラインテンション

渡邉「根がかりが多いな……と思ったら、上げ潮が止まっていたんですね。そして、花火が上がった頃に止まっていた潮が引いてきたんです。だから、振り返って下流へと下りながら釣りをし始めました」

確かにそうだった。この方向転換が、文字通りターニングポイントとなったようだ。

渡邉「カキ殻エリアでのスプリットショットの釣りは、流れに対してダウンキャストしたほうがいいんです。アップで投げると、止めた時にワームがどんどん隙間に入り込んじゃう。でもダウンだったら、止めると逆に浮き上がるので、根がかりを外しやすい」

だから釣り場を荒らさずに済むし、チヌを誘い出すことができるのだ。もちろん、潮止まりよりも流れがあったほうが活性も上がるので、いいタイミングだったようだ

渡邉「根がかりがきつい場所では、ラインテンションを常にかけておくといいですね。当然かけすぎちゃうとリグが浮き上がり過ぎちゃう。その加減が難しいですね」

とにかく、カキ殻エリアのチニングは、根がかりをさせずに、ボトムを感じながら、ワームを引いてくることが大事なのだ。

チニング用のスピニングタックル すべてDAIWA製。 ロッド:シルバーウルフMX76ML-S。 リール:セルテートLT2500S⁻XH。 ライン:UVF PEデュラセンサー×8+Si2 0.6号。 リーダー:エメラルダスリーダーエクストリームⅡ3号。 ©釣りビジョン 写真:横沢鉄平
使用したワームはシルバーウルフシリーズの「アーバンシュリンプ」2.4インチと2.8インチ(DAIWA)。チニング用に設計されている。 ©釣りビジョン 写真:横沢鉄平

施設等関連情報

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

横沢 鉄平 フリーライター。ライフワークはバスフィッシングだが、ワカサギから世界の怪魚まで、すべての釣りを愛する男。ロッド&リールの「三匹が行く」、ルアーマガジンの「ドラマチックハンター」など、長期連載企画での出演経験も多数。キャンプ用品の「ヨコザワテッパン」考案者でもある。
YouTubeチャンネル「ヨコテツ」も、ささやかに継続中だ。

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