タイメン用のルアーはドブネズミの毛皮?
2010年の初秋だった。語り部がウランバートルに着いた日、時間があったので、宿の近くにあるデパートに行くと、漁具とハンティング道具を扱う店があった。そこには、タイメン狙いのルアーが売っていたのだが…日本人のルアー感からは大きくかけ離れたものだった。ドブネズミの毛皮にフックが付いたような代物で(というか、まさにそれだと思う)、アクションやキャストなどは全く考慮されていなそうだ。おそらく流れに乗せて水面に漂わせたり、真っ直ぐ水面を引いてきたりするのだと思う。結局、買わずに店を出たが、これがタイメンのメインベイトなのか…とワクワクしたものだ。
草原の大地を貫く未舗装の一本道を2日間かけて走り、目的地へ到着した。大地が割れめのように裂けていて、その底に清流が流れている。それがチョロート川だ。長旅の果てにある、巨大な怪魚が息を潜める川としてはいささか細く浅い。が、釣り師の胸を打つような美しさがあった。
実は、ドブネズミよりも日本のS字系ルアーの方が好きらしい
さて、そのタイメンだ。和名はアムールイトウというのだが、あまり一般的ではない。サケ科の淡水魚で、ヴォルガ河やアムール河のような大河やその支流などに生息する。北海道のイトウとは近縁であるが、タイメンはイトウと違って降海することはない。ロシアでは210cm、105kgの個体が記録とされているが、モンゴルでは140cmくらいまでなら知人の釣果やネットでも見たことがある。
チョロート川では、15~20分ほどかけて岩場を降り、川に沿って歩きながら釣りをした。巨大な岩などで歩くのが困難な場合はまた岩場を登って降りてを繰り返す。ルアーは大きなミノーやS字系ビッグベイトに実績がある。ネズミを喰っているというので、ビッグバドも使ってみたが、釣れたのは大きなレノックだったりもした。
この哀れな語り部はのべ3日間タイメン釣りをしたが、釣れたのは1匹だけ。落ち込みの流れがよれる、ちょっと深くなった場所にS字系ビッグベイトが差し掛かったときに、ゴンッ!とバットで殴られたような強いアタリが出た。97cm、タイメンとしては大物とはいえない個体だったが、それでも巨大魚釣りに慣れていなかった当時の自分にはまるで川に引きずり込まれるのではないか…と一瞬不安を感じるほど強い引きだった。
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