殺人魚の濡れ衣を着せられたこの魚の名は?【世界怪魚図鑑03】

一般的に最も有名なアマゾンの魚といえばこいつではないだろうか? 家畜や人が川に落ちたら、たちまち大群に襲われて骨にされてしまう…恐怖の象徴。そんな濡れ衣を着せられた妄想の怪魚、ピラニアである。(執筆:望月俊典)

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ピラニアの虚像と実像

昭和時代の映画や娯楽性の強いドキュメントTV番組の影響なのだろう、アマゾンに行ったことのない人の多くはピラニアが集団で人を襲う人喰い魚だと思っているかもしれない。しかし、この哀れな語り部(←筆者のことです)は何度となくピラニアがウヨウヨしている川で泳いだり体を洗ったりしたが、一度も噛まれたことはない。むしろ水に入ると逃げていくことが多かった。あ、ひとりだけ噛まれたカメラマンがいた。それは釣り上げたビラニアをボート上に放置していたのを忘れ、たまたま指を噛まれた、という。現地の漁師からもアナコンダや淡水エイに気をつけろと言われたことはあるが、ピラニアは一度もなかった。

実際はかなり臆病な魚だと思う。語り部が高校生のときにピラニア・ナッテリーを飼育していたが、他の熱帯魚とは全く性格が違った。人には慣れないし、近づくと驚いてパニックを起こすことがよくあった。ただし、弱い者には一切容赦がない。エサの金魚が投下され水に慣れない様子を見せると…すぐに興奮して襲いかかり、ニッパーのようなアゴで真っ二つにした。

ベネズエラで釣れた、おそらくピアニア・ナッテリー。日本の熱帯魚屋さんでも見かけた種類。ヒットルアーはロングA
これはベネズエラ・オリノコ河水系で釣れたピラニア。エラ蓋の後ろに黒い縦の模様がある。ルアーはザラスプーク
ブラジルのシングー川で釣れたおそらくブラックピラニア。目が真っ赤で大型化するのが特徴。これくらいのサイズになると塊感というか…えも言われぬ迫力がある
ブラジルのタパジョス川で釣れたブラックピラニアの顔。いぶし銀の美しさ。なお、タイトル写真のような恐ろしい歯はあくまで人間側の演出にすぎない。通常はこのようにほとんどが唇で覆われている

釣り師にとっては厄介なギャング団である

さて、釣りの対象魚としては…うれしいのは最初の2~3匹までだ。狙ってなくてもわりと頻繁に釣れてしまうし、そのアゴでルアーをどんどんボロボロにされてしまうのである。なので、ピラニアが多い水域ではソフトルアーは使えないし、ビッグベイトもテールがすぐに齧られてしまう。ハードルアーもプラスチックボディに穴が開けられて浸水したりフックが曲げられたり…とにかく厄介者なのだ。ただ、簡単に釣れる魚なので、一般観光客にピラニアを釣らせるツアーは人気だったりする。

一番うっとうしいのが、エサでナマズなどを狙っているとき。生きた魚や、魚の切り身にハリを付けて投入するのだが…直に「ゴツ…ゴツッ」という石で仕掛けをノックするようなピラニア特有のアタリがやってくる。ピラニアの摂食はさらにピラニアを呼び寄せ…たちまちエサは頭と骨だけにされてしまう。それにもめげずエサを投入し続けるとオオナマズがやってくる…こともある。

ちなみに、スープにして食べると結構美味しい。

ナマズ釣りのエサにした魚。哀れ、ピラニアの群れに襲撃され、あっという間に生首にされてしまった
語り部が釣ったピララーラという大きなナマズ。背ビレがファイト中にピラニアによって喰い破られていた。弱みを見せた相手には本当に容赦がない、チンピラのような性格をしている
エラストマー製のビッグベイトのテールはピラニアの攻撃を受けやすい。このときも5個くらい予備のテールを持参した
トレブルフックが根本から折られている。小さいアゴにペンチのような謎のパワーがある
日中は体を冷やしたり、夕方は風呂として体を洗ったり、アマゾンでは裸で川に入ることが多い。しかし、ピラニアに襲われたという話は、当事者からの情報としては、聞いたことがない。とはいえ、川に入るとワニやアナコンダに襲われたり、デンキウナギを踏んづけたり、もしかしたらピラニアにかじられることも…絶対にないとはいわない。十分に注意されたい

施設等関連情報

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

望月 俊典 千葉県九十九里町生まれ。雑誌『Rod and Reel』副編集長を経て、フリーランスの編集/ライターとなる。海外の秘境釣行も大好きで、『世界の怪魚釣りマガジン』の立ち上げ&制作を手掛けた。現在は、琵琶湖事務所で仕事や釣りにいそしむ。著作は『バスルアー図鑑』(つり人社)。ちなみに、学生時代に、ネッシー(といわれているであろう現象)を目撃&撮影したことがある。

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