エジプトのアスワンダムで釣った、宝石のような眼を持つナイル川の大魚の名は?【世界怪魚図鑑番外編】

見る者を圧倒する迫力を持つ怪魚。そして、それを専門に狙う釣り人たち。しかしこの物語はそうじゃない。2005年、一介の釣り雑誌編集者がナイルパーチを釣りにエジプトへ行ったという、精鋭のマニアじゃなくてもなんとかなる!みたいな話! だから番外編だ!

その他

18年前の記憶を掘り起こす

さて、「今度怪魚図鑑でナカムラ君が行ったナイルパーチの記事書いてよ」と当マガジンの横沢編集長に軽~くお願いされたのが、この記事を書くことになった経緯ですが! ですが!ですよ。2005年だそうだ。だそうだというのも、個人的にはな~んにも残っていない。要するにいまはなきバス釣り雑誌『Rod&Reel』の企画記事で行ったんですね。当時勤めていた出版社の社長は海外の釣りに詳しい人で、「エジプトでナイルパーチを釣るツアーがあるからユーの会社の雑誌で紹介してくれないか?」みたいなことを頼まれて、でもおそらく釣り方とか魚種とかが社長の好みではなかったから「キミが行ってきなさい」みたいな、いわゆる社命だったのです(推測含む)。
というわけで18年前、写真もフィルムカメラだったし、個人的に写真を撮るなんてことは写真好きしかしてなかったので、残っているのは記憶だけ(そもそもタックルの準備だけで手一杯)。ここにある写真は、同行したカメラマン、みうかん先生が個人のデジカメで撮っていた貴重な画像だということをお伝えしておきます。
そんなわけで本稿の主役、ナイルパーチに関しても、ググれば分かるようなことは書きません。あくまで「オレの記憶の中で当時は」という注釈の元に読んでいただければ幸いです。

会社で見たフランスの釣り雑誌のナイルパーチの記事。きっと社長はこの写真の人(キャプテン)にお願いされたはず
これがナイルパーチだ。当時は怪魚とは言ってなかった気がするが、自分が釣ることになるとは思いもよらず

ナイルパーチという魚

とは言え、ナイルパーチのことを書くのが目的なので、ざっくり紹介すると、まぁナイルパーチと言うくらいなので、ナイル川にいるパーチ科の淡水魚です。ナイル川といえばピラミッドで有名なエジプト。日本では四万十川のアカメ、オーストラリアのバラマンディが仲間ですが、そういやオレ、オーストラリアでバラマンディも釣ってますね。いま思い出しました。残りはアカメかぁ。
それはいいとして、形状的には体高はあるけど扁平顔で、目がギョロっとしていて怪魚というにはちと愛らしい。大きさは、記憶が戻ったその時のバラマンディと比べると総じて大きめ。アカメは釣ったことがないので知りませんが、事前情報やガイドの話を聞くと20キロが釣れればバスの50アップに相当するとか。なので20キロを釣るのがオレの中ではなんとなくの目的になりました。
もちろんエジプトに行ってです。このコラムを読んでいる熱烈な釣りラバーの方々には本当に申し訳ないですが、三平にもオーパにも影響を受けてない、ほぼバス釣りしかやってなかった釣り人が、海外に行ってとんでもなくでかい魚(いわゆる怪魚ですね)を釣る。しかも社命でなんてことは、いま考えると色んな意味でレアでしたね。ちなみにバラマンディは田辺(哲男)さんの取材だったので結果社命。アカメは、さすがにもうないな。

イタリア経由でエジプトへ。さらにカイロから目的地のアスワンへ。機上からギザのピラミッドが見えます
朝に到着したので、ガイド(キャプテン)と合流してナイル川を眺める高台のカフェで朝食。優雅だわ

ただひたすらにナイルパーチを釣る船旅

ツアーは10日間。ナイル川を堰き止めたアスワンダム(ナセル湖)をアスワンからベースシップに乗って南下し、日中は小型船で釣りをして、夜はベースシップに戻り、寝ている間に次のエリアへ移動を繰り返し、最終目的地のアブシンベルまで、ずっ~と船での生活。なのでいま自分がどこにいるのかはさっぱり分からず。朝、用を足すために降りた陸地(船にもトイレはあるが順番とかもあるので面倒)にいるスカラベ(フンコロガシ)を見て、「お~エジプトォォ!」と思う程度でした。
ナイルパーチの釣り方は、11cmクラスのロングビルミノーやビッグシャッドをメインに、20キロ台は10000番台のスピニング(PE12~16号+リーダー40ポンド)にジギングロッドで、小型であればシーバスロッドに3000番台(PE6~8号+リーダー20ポンド)。ベイトはバスのビッグベイトタックル(PE6~8号+リーダー20ポンド)を用意しましたが、メインはスピニング。いわゆるフィッシュイーターなので、日中はシェードやストラクチャーの陰に隠れていて捕食する、そのキワをえいや!と投げて巻いて通します。まぁでっかいタックルを使ったバスの巻き物と同じ感覚ですね。

ベースシップに7泊くらい。途中どこかに立ち寄った記憶はありません
スカラベ(フンコロガシ)は砂地であれば本当にそこらへんにいる。オレの排泄物が自然にかえるんだね~と少し感動した
ライトなスピニングでよく釣れるサイズ。これを数匹キープして、結果みんなの胃袋に収まる
小型船から釣ることもあるし、岸に降りて釣ることもある。足元のウィードがナイルパーチの隠れ家だ
おそらくカルパッチョ、もちろん釣ったナイルパーチ。日本でもスーパーで白身魚として売られている。食べたことはないけど

20キロは釣れたのか!?

もう環境的に釣るしかないのでもちろん釣りますが、ルアーではほぼバスしか釣ったことがなかったし、ビッグベイトがブームになりかけていたとはいえ、個人的に好きなのはちびトップというポンコツ釣り人のオレ。デカいルアーを投げ続けて、そこそこ大きな魚を釣り続けるのは疲れる!という体たらくでした。小型でも50アップはありましたからね。でもお借りしたチャックル君ことティンバーフラッシュでは釣りました。いま考えるとそれがビッグベイトで釣った唯一の魚かもしれん。
そんなわけで、渡航前に目的としていた20キロはどこへやら。どうすればサイズアップできるのかみたいなアスリートアングラーっぽいことは考えられなかったような気がします。でもそこはガイドツアー。キャプテンの計画通りか、最終日近くのウォードエリアで釣ったのが「フォーティパウンド!! ヒューッ!! コングラッチュレーション!!」でした。キャプテンがヒューッ!!というのででかいのか!と。そうか、おめでとう!なのかと。気持ちとしては正直、こんなの重くて持てねぇ、早く写真撮ってくれ、でした(ホントすみません)。
ただね、いま考えると「フォーティパウンド」なので40ポンド、つまり18キロだわ!
まぁでもいいんです。現時点で生涯イチでかい魚だったし、おそらく今後も超えることはないだろうから。
ただその時の原稿にも書きましたが、40ポンドとのファイト中に、オレにも食わせろ~!とさらに大きなナイルパーチがゆらゆらしてオレを一瞥し、ウィードの中に帰っていったっていうのはホントの話。ただし、それを釣らなきゃ!って思ったかどうかはまた別の話です。

フォーティパウンドのナイルパーチ。重くて持ちあげられず。オフショットなので本当にダルそうな表情だ
カメラマンみうかん先生もキャッチ。冷静に見るとこっちのがでかそう。そういう男(釣り人)です
使用タックル。当時雑誌社権限で各社にお借りした物。リールは社長の私物。オレの所有物はアンバサダーだけ!
最大魚はオレンジのスーパーシャッドラップにて。全部素晴らしいルアーだよ!とキャプテンに褒められた
キャプテンの陽気なフレンチ、パスカル。写真のタイガーフィッシュもアスワンダムでは有名だそうな。オレは釣った記憶はない
クルーのみなさんと。英単語だけでも会話はできた(はず)。手にした『Rod&Reel』誌が懐かしい

施設等関連情報

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

ナカムラ・タカヒコ 10年間の某バス釣り雑誌編集部員生活を経て、フリーランスとなり15年超。淡水海水を問わず、取材経験を活かしたルアーフィッシング全般が対応ジャンルだが、自分で釣るよりも釣った人の話を聞くことで釣った気になるのが得意な根っからの編集者気質を持っている。自分で釣るならちびルアーが好き。

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