運河での仕掛け(テンビン、オモリ)
運河の幅は約150m。6色を思いっきり投げれば対岸に届きそうだ。この日の竿は425-27、少し長めだが、腕力の落ちた古希ジイは、道具の力を借りてパワーを生み出す。運河のシロギスが潜む場所はミオ筋(船道)からのカケ上がりで、それは運河の南岸寄りを走っている。そこで、力一杯投げてオモリをミオの底に落とし、それからリールを巻いて、仕掛けをカケ上がりに這わせてアタリを待つのである。
オモリは20号。潮の流れが速くて強い運河では30号を使う人が多いのだが、私はいつもこの重さである。ずいぶん軽めだが、根掛かりを防ぐために、常にリールを巻き続けなければならないので、この重さが運河の潮の流れに乗って具合がいい。それに何と言っても、シロギスのゴンゴン!というアタリを軽いオモリで目一杯受け止めて堪能したい、というのが一番の思いである。テンビンも自作で手作り仕掛けを楽しんでいる。
運河での仕掛け(ハリ編)
シロギスは釣り上げて、空気にさらしたり手で触ったりすると、ひどいダメージを受けてしまう。小さいから「リリースしてあばよ」というわけにはいかないのだ。だから、出来るだけ小型のシロギスを掛けないようにハリを大きくする。いくらかでも「掛ける前リリース」をしたいのだ。それでハリは9号を使うことが多い。
しかし、今回はシーズン幕開けということで、どんな型のシロギスが餌を追ってくるのか様子をみたい。そこで、数も型も確認したいので8号にした。
ハリは軸の直径の細いものを選んでいる。一般的に7号なら0.41mmだが、この日使ったハリは8号で0.41mm。細く軽いハリが海の底で潮に乗ってユラユラ、シロギスを誘う姿を想像するだけでウホウホ涎が出てしまう。この細さのハリは何種類か市販されているが、キツネ型を選んだのはハリ先と軸の長さが狭いので、ハシリのシロギスが呑み込みやすいのではないかと考えたからだ。ハリ数は以前8本まで付けていたが、少しずつ減らして今は3本、古希ジイにとって、このハリ数にすると手返しが良く、良いリズムが保てるのだ。
寒い朝、強い北風に乗せてブン投げる
朝7時、第1投。北風が強く朝日は雲に隠れたままで少し寒い。後ろに人はいないか運河に船は浮かんでいないか、充分に注意してブン投げる。オモリだけでなく、身も心も全部放り投げてスッキリした気分に。投げ釣りの醍醐味だ。
“上げ潮三分”、昼の満潮に向かって西へと流れて良い潮時である。投げてはリールを巻く。ハンドルが重いのは、オモリがカケ上がりを這っているからだ。すると、突然ゴンゴン!と竿先が弾かれた。「来たっ!」。勇んでリールを巻きにかかる。巻いている最中も竿先が強く弾かれ続ける。「これはシロギスだ!大きいぞ」。オモリは浮いて来たが魚は見えない。海の中で抵抗している。ようやく姿を現したのは、ドッシリ丸々とした見事なシロギスだった。24cmはあろうか、元気よく暴れて私の大きな手でも掴み切れない。その後、小型交じりながらも大きいものを5匹掛ける。
昼の満潮を前にして潮が飛び出した、オモリが流されてちょっと油断すると根に掛かる。いよいよ潮が手強くなってきたので、竿を仕舞うことにした。前哨戦としては何とか結果を残せたのではないか、数は出なかったけれど大きいではないか。「“キス天”にしてこの日の釣りの後味を楽しむことにしよう」と思っていたら、家内がシロギスはお隣さんにあげたという。あら。
2回目の釣行、朝日とともに爽やかにブン投げる
2回目の運河釣行。着いたのは午前の半ば、潮が東流れから反転し西へ流れ始める頃だ。時合いとしては悪くない。この日、運河はキラキラと輝いていて、引き締まった朝の中で投げ始めた。爽快。
さて、オモリはミオ筋に届いているはずだが、竿が弾かれることはない。あれ、おかしいぞ。アタリはあっても竿先から手元に伝えられるのは小刻みな振動ばかり。小さいシロギスだ。仕方なく寄せにかかると外れた。おう、やっぱりこれでいいのだ。前のハリは丁寧に小さなシロギスも拾ってきいたので、今回は“コブラバリ”の少し大きめを使っていた。それで狙い通りに小型を「掛ける前リリース」してくれたのだ。
名人の叱咤に怒涛の釣り!そしてハシリを味わう
昼前、運河の潮が少しずつ速く西へ運ばれ出して、辛い釣りになりそうだった。「“キス天”はなしか」と諦めかけていたら笑顔の散歩者、名人が現れたのだ。何度か運河のシロギス釣りで一緒になって、様々なことを学ばせてもらった釣り人だ。仕掛けはどれも丹精が込められていて、その勉強ぶりには何度も驚かされていた。その名人が「釣りは今からだ、潮が走り出してからがいい釣りが出来る、根掛かりを恐れずにサッサッと巻くのだ」という。
ミオ筋に投げてコリコリ巻きにかかる。餌がミオを出て平坦な底を這いだすまで辛抱して巻く。当然オモリは流されるが、構わず巻き続ける。仕掛けは弧を描きながら寄って来る。
と、突然ゴン!と来た。大きい。また投げる、また来た。こんな時は最後まで潮に乗り続けなければならない、「今だ、励め」と、名人の叱咤を受けて投げ続ける。景気よく2連で掛かることもあった。潮流が速度を増していよいよ手に負えなくなるまで、シロギスは餌を追ってくれた。
いつものことだが名人に出くわすと最初は混乱し、自信を失いかけるのだが、その内に刺激され、猛烈に闘志をかき立てられる。この日がまさにそうだった。家に帰ったらお隣さんからお返しに北海道のビールが届いていた。“キス天”に合わせて飲む。至福。
施設等情報
施設等関連情報
同じ若松区に海釣り施設、小倉北区にも海釣り施設があってファミリーで賑わっている。ただしどちらも投げ釣りは禁止となっているので注意しよう。
※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。