流れの強い本流で“元気アユ”を狙う
7月に大雨に見舞われたにも関わらず、もう瀬は緑や茶色の藻に覆われている。アユは見えない。「いるとすればきっと深い瀬だ」と見当を付けて狙いの瀬に降りる。近くに木陰があって炎天下でもすぐに避難出来るのもいい。水温は雨でいくらか低い。網も入れられていないだろう。たぶんここ2、3日がアユ釣りの出来る時だ。
さて、今年から値上げして450円の、徒や疎かには出来ない“オトリ様”をそっと放す。仕掛けは複合0.05号にワンピース中ハリス。ハリはW蝶バリ7号。ちょっとでも近寄ってきたアユを掛けるつもりだ。当然、瀬際の緩やかな流れなんかは見向もしない。背バリを負わせて、元気なアユがいそうな瀬のド真ん中を流す。
狙い通り大振りの“洞門アユ”を掛ける
読みが当たった。ゴンと来てグーンと竿を絞る。堪える。オットット流れに乗った魚に付いて下る。また堪える。オトリが出た。まだ堪える。ようやく野アユが出る。抜く。すっ飛んで来たのは中型のまさしく“洞門アユ”だ。香りが立ち、ウホウホ喜ばせてくれる。元バリに掛かっていたので、ハリを三本イカリ7.5号に替える。2匹目も同じように来たがこれは大きいぞ。オトリが気分よく循環して、楽しい釣りが続くと思いきや、次に掛けたアユが大岩を巻いて、糸が擦れたと思った途端プツン。
浅瀬に上ってきたアユをフロロラインで掛ける
複合仕掛けは1つしか持っていなかったのでフロロに替えるしかないが、これで深瀬や急瀬を流すのは、私の力では無理だ。思案にくれる。「ウーム」とりあえず木陰で休憩。すると上の浅瀬で魚が跳ねた。アユが瀬に出て来たのだ。これならフロロでなんとかなる。いそいそとフロロ0.4号の水中糸に張り替える。それからというもの、底石が黒く輝く瀬にオトリを通すとガンと来る。そのガンが続いて楽しい。これが真夏の友釣りだ。ウホウホと古希ジイが瀬を駆ける。
昼から水温、気温が上がり出し、瀬がたぎり出したので竿をたたむことにした。
久しぶりの興奮だった。ジイちゃんの血が沸きたった。そんな真夏の友釣りだった。
アユ釣り新人との釣行は本流を諦めて
次の日、予てからアユの友釣りがしたいと言っていた若者と前日の瀬へ向かった。ところが着いてみると川は泥濁り、復旧工事が始まっていた。呆然、新人には本流で思いっ切り釣らせて、友釣りの面白さを存分に味わせてあげたかった。残念!そこで、耶馬渓の街に右岸から注ぐ川へ向かうことにした。小さな川だが、土用隠れや増水で本流の釣りがつらい時のリザーブの川である。
魚は小振りで群れていることが多く、「群れの中にオトリを放ってウジャウジャとジャレつかせて、そのうち追い気が出たのを掛ける」という離れ技が必要で、新人にはちょっと難しい釣りになるかも知れない。
友釣り第一歩を踏み出した若者に見事な初アユ
さて、オトリをつかんで鼻カンからサカサバリまでの手順を一通り伝え、後は任せて私も竿を出す。もうすぐ還暦の若造だが、ほかの釣りの経験はしっかり詰め込まれていて、多少もたつきながらも、なんとかオトリを潰さずに瀬に放すことが出来たようだ。
「糸は緩めるな」と言っておいたが、お利口さんに守って泳がせている。よしよし、と見ていたら掛けた。ギンギン竿を曲げて、逸走する野アユを竿を抱くようにして堪え、寄せたかと思ったらジャブとタモで掬った。獲った。でかした!銀色に輝く見事なアユだった。最初の1匹としては最高だ。文句無し!縄張りを持ったアユがいくらかいたのか、暫くしてまた掛けた。中々やるじゃないか。もう一つ上の瀬に動いて数匹掛けたが、1匹はこの日一番の大物だった。
昼過ぎ、追いが絶えてようやく新人の白熱の一日は終わった。「また是非お願いします」という弾んだ声を聞いて、古希ジイ、嬉しくて嬉しくて。実は前回一緒に海釣りを楽しんだ時、頑張る若者をおいて私一人近くの温泉に行っていたことがあって、ちょっぴり恨みを買っていた。だが、ここでようやく「恩讐の彼方に」友釣りが完遂されたのである。めでたしめでたし。
施設等情報
施設等関連情報
なお、温泉県大分らしく紅葉狩りの景勝地「耶馬渓」にはいくつか温泉施設があり、釣りの汗を流すのも良い。
※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。