早春から“渓魚”が釣れる「岐阜県 蒲田川」の解禁日、杉坂研治さんが出色の釣果!

富山県、新潟県、岐阜県、長野県に跨って連なる飛騨山脈、通称「北アルプス」。この北アルプスに源を発し、「早春から“渓魚”が釣れる川」として渓流釣りファンに知られる河川がある。神通川水系高原川の支流・蒲田川だ。その解禁日に釣りビジョンの人気番組「ハイパーエキスパート」のロケでやってきたのが、フライフィッシングの第一人者「杉坂研治」さん。天候的に恵まれなかった状況でも、好釣果を叩き出した彼の釣りを、同行ディレクターが克明に伝える。

淡水
  • 岐阜県 蒲田川

地熱により高水温の蒲田川

蒲田川は、国内屈指の温泉地である「奥飛騨温泉郷」の間を縫うように流れ、栃尾温泉付近で高原川と合流。飛騨市の旧神岡町市街地を貫流、徐々に進路を北にとりながら飛騨市北端の富山県境で宮川に合流して神通川となって日本海に注いでいる。
通常、積雪の多い山間地ほど春の訪れは遅く、渓流釣り、特にフライフィッシングが楽しめるのは4月末かゴールデンウィーク明け頃からというのが一般的だ。しかも渓流釣りの解禁当初は、水生昆虫の羽化=ハッチが少ないこともあり、フライフィッシングより餌釣りに分がある。
しかし、“温泉郷”を流れる蒲田川では、地熱により水温が高いまま安定。解禁日の3月1日には、まだ河原に雪が残っていることも多いが、高水温の影響で多くの水生昆虫がハッチし、早春でもドライフライ(水面に浮かんだ水生昆虫、陸生昆虫を模したフライ)の釣りが楽しめるのだ。逆に5月まで季節が進行すると、北アルプスの雪代が一気に入り水温が低下。水生昆虫の動きと比例するように、“渓魚”たちの動きも悪くなる。つまり夏になるまでの蒲田川は、一般的な渓流とは季節の移ろいが違うのだ。

プロフライフィッシャー 杉坂研治さん。番組『ハイパーエキスパート』ではおなじみだ
北アルプスの美しい山脈
3月でも河原に雪が残る
温泉地としても人気の観光スポット
河原のすぐ横に温泉宿の露天風呂も

大賑わいの解禁日、水温は凡そ16℃!

早春から渓流釣りが楽しめるとあって、中部エリアのみならず日本各地からアングラーが訪れる蒲田川。2023年の解禁日にも多くの釣り人が押し寄せた。渓流のトラウトから海の“大物”(マグロ、ターポン…)を求めて世界各地を釣り歩いているプロフライフィッシャー、杉坂研治さんもその一人。居住する愛知県からアクセスが良いこともあり、解禁当初は蒲田川を中心に、夏場には北アルプスの山岳渓流を釣るべく頻繁にこのエリアに足を運んでいる。
今年は、番組『ハイパーエキスパート』の取材のため、解禁前日に現地入り。漁業協同組合で遊漁券を購入、早朝からエントリーできるようスタンバイしていた。蒲田川の遊漁料は「いわな・やまめ・にじます」の竿釣りでは、日券1500円・年券7000円。遊漁料は、漁協の増殖事業や漁場管理事業の費用の一部を遊漁者にも負担して貰うもの。漁協や近隣の販売店で必ず購入するのがルールであり、釣り人のマナーでもある(問い合わせ:高原川漁業協同組合/ 0578-82-2115)。

蒲田川流域には、駐車場が所々にあるためエントリーも楽。また、川が開けているため、ルアーやフライでも釣りがしやすいのも特徴だ。大きなプールをじっくりと探るもよし、小さな落ち込みを釣り上がっていくもよし。様々なスタイルで楽しめる。
解禁日当日。水温はこの時期としては異例ともいえる凡そ16℃。杉坂さんが見定めたポイントは上流域にある大規模プール。工事による土砂の堆積が影響しているのか、年々川が浅くなっているという蒲田川。そのなかではやはり、水深があるプールには“渓魚”が溜まり易いのだ。

釣り人の多い人気フィールド
遊漁券をチェックする監視員さん。情報収集のチャンスか?!
中流域、下流域は開けているため釣りがしやすい

拘りのドライフライ

杉坂さんはドライフライに拘って釣りを展開した。その理由は、「この時期に水面で釣れるなら、やらない手はない」というもの。視覚や聴覚を刺激するエキサイティングかつセンシティブなドライフライの釣りは、やはりアングラーを魅了する。
早春の蒲田川をドライフライで釣る上で、最も重要となるのが“流下物”。例年の傾向としては、朝の時間帯は小さめのユスリカ類。そして陽が高くなると共に大きめのカゲロウ類が流下し、“渓魚”はそれを捕食する。時間と共に変化する“流下物”にフライパターンを合わせていく「マッチザハッチ」が鍵となるのだが、ハッチするかしないかはその日になってみないと分からないのもこの釣りの難しさ。毎年のように早春の蒲田川を訪れる杉坂さんでさえ、「ハッチする確定的な条件は分からない」と言う。ただし、ハッチしやすい気象条件はある。それが“蒲田日和”とも呼ばれる、どんよりと空が雲に覆われた曇天のタイミング。小雪がパラつくような低気圧が接近している時は最高とも言われる。晴天時よりハッチしやすく、“渓魚”の警戒心は薄れ活性も上がるのだ。

杉坂さんのロッド、そして美しいヤマメ
変化する流下物に対応するためフライパターンは多めに準備
雪が舞い散る日が絶好のチャンス

ライズを狙い撃ち好釣果

今回の実釣取材では、大半の時間帯が晴天。カゲロウ類がハッチしない難しいコンディションだった。しかし、朝から時折ライズが見られ、そのライズに対して杉坂さんは#18~#22のユスリカピューパでアプローチ。小型ながらも美しいヤマメをキャッチしていった。
ストマックポンプでお腹の中を覗かせて貰うと出てくるのは、読み通り極小のユスリカ。杉坂さんによると、カゲロウ類がハッチするピークは11時から13時までの間が多いそうで、捕食対象が大きくなるほどグッドサイズの魚たちも動き出すとのことだが、前述した通りこの日は昼の時間帯になってもカゲロウ類のハッチは皆無。太陽が雲に覆われるタイミングを待ち、小さな“流下物”を捕食しようとスイッチが入ったヤマメを狙い撃っていった。
上流域のプールを朝から狙い、終わってみればヤマメ&イワナ合わせて20匹ほどをキャッチ。他の釣り人に話を聞くと、やはりハッチが少なかったことで苦戦を強いられた様子。魚影の濃いエリアで、プレッシャーをかけ過ぎないよう休み休み釣りをしたことが、杉坂さんの好釣果に繋がったようだ。
杉坂さんがどのようにアプローチし、パターンを構築していったかは、是非番組をご覧になり、自身の釣りの参考にしてほしい。

※今年は北アルプスの積雪が少ないため、例年より長期間楽しめるかもしれない早春の蒲田川。なお、蒲田川下流の栃尾エリアはキャッチ&リリース区間になっており、釣り方はテンカラ、フライ、ルアーのみ。現地に案内板も出ているので、確認のうえ釣りを楽しんで頂きたい。

杉坂オリジナル『ユスリカピューパ』
ライズするのを静かに待つ
ライズを狙い打ちヤマメをキャッチ
お腹の中を覗かせてもらいパターンを突き詰めていく。少し小食?
悠悠と泳ぐ渓流魚
良型のイワナ

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『50年目のスプーン』
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この記事を書いたライター

原 慎哉 釣りビジョン制作部ディレクター

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