【怪魚への命綱】私的!怪魚釣り「ライン進化論」

怪魚釣りのライン…とひと口で言っても世界中の魚が相手となると魚種によって千差万別。昔はベイトタックルに太いPEを直結だったりしたけれど、時代は変わってきているような気もする。そこで、語り部的なおすすめを語らせていただく!

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15年前の(私的)怪魚ラインを振り返る

筆者が初めて釣りを目的として海外へ行ったのは、2009年のマレーシアだった(学生時代も海外で釣りをしていたが、そのときは旅がメイン)。野池群のピーコックバスとトーマン狙いで、ベイトタックルにはフロロ16ポンドとPE0.8号を巻いていた。0.8号というとベイトで扱うにはかなり細いが…当時の会社の先輩であるソルトルアー雑誌の編集長の「0.8号くらいでいいんじゃね?」というアドバイスが原因。…そう、その先輩はスピニングタックルと勘違いしていたのだ。

PEはリーダーの組み方も知らず、直結で使っていたが、見かねた同行者にリーダーを組んでもらっていたりもした。何度か高切れをしたりもしたが、どちらのタックルでも無事に50アップのピーコックバスをキャッチしている。

次の釣り旅は2010年のモンゴル。狙いはタイメンである。そのときは先人のアドバイスもあり、ベイトタックルにPE5号と6号を巻いていた。しかも直結(笑)。もちろんタイメンも巨大パイクも余裕でキャッチ成功。

翌2011年は南米にドラードを狙いに行ったのだが、そのときもPE5号に自作したワイヤーリーダーを付けていたと思う。いわゆるショックリーダーはなし。当然ながら、ラインブレイクによるバラシはゼロ。

ちなみに、この年に『世界の怪魚マガジン』を創刊し、翌年に発売されたvol.2のハウツー記事には「怪魚釣りのラインはPE5号が基本」と書かれていたように思う。

本でしか見たことのない巨大なタイメンやドラードを畏怖するあまり、妄想のなかで彼らのパワーがどんどん膨らんでいき、とてつもない化け物を相手にするような気持ちになっていたのだ(しかし、それが怪魚釣りの魅力でもある)。

また、「ラインは太いほうがイケている」…みたいな日本の古きよきライギョ釣り的、マッチョな価値観がこの当時は少しあったような気がする。有名怪魚ハンターも当時はPE直結かワイヤーリーダーのみというのが主流だった。

しかし、時代はジェンダーレスへ。怪魚釣りにおけるライン論でも、太くて強ければ偉い、みたいな価値観はここ10年で衰退したような気もする。

初めてのマレーシア遠征でキャッチした初ピーコックバス、53cm。これはフロロ16ポンドだった ©望月俊典
こちらはPE0.8号(ベイトタックル)でキャッチした52cm。怖いもの知らずだった。PE0.8号だとジャークベイトがめちゃめちゃダートする ©望月俊典
モンゴルでキャッチした初タイメン。確かPE6号を巻いている。明らかにオーバーパワーだったが、それくらいの夢を見ていた ©望月俊典
パラグアイで釣った初ドラード。これはPE5号。ただ、この河には結構岩がゴロゴロしているので、それなりに太くてもいいかもしれない。今なら4号を巻くかな ©望月俊典

ひと昔前の私的怪魚ライン、だいぶ進化した

もう少し昔の話をすると、語り部が2014年に3ヶ月の南米旅をしたのだが、そのときに用意したラインが…

大ナマズのエサ釣り用●PE12号+ナイロンリーダー80号

大きめルアー用●PE4号+ナイロンリーダー10号

小さめルアー用●PE3号+ナイロンリーダー8号

大ナマズ用は別格として、ルアー用は少し細くなっている。そして、どのタックルにもリーダーを使用。このセッティングはブラジルのプロアングラーのアドバイスが元になっている。PEラインは直結だとルアーに絡みやすく、また、ラインにフックが刺さるトラブルがたまにあるからだ、という。また、冠水したジャングルの際へとルアーをキャストするため、ある程度のライン強度は必要だった。

しかしながら、ピライーバと思しき大ナマズはこのナマズタックルでも獲ることができなかった。ピライーバがいるであろう流れのある岩底でヒットしたのだが、一気に何十mも走られ、岩にPEラインを擦られて切られたのだ。

なので、次の南米遠征で大ナマズを狙った際は9分茹でスパゲッティくらいの極太ナイロンを通しで使用し、ピララーラは問題なく獲れた。

PE4号で問題なくキャッチした巨大なピーコックバス。しかし、タイのアマゾン釣り堀では同じくPE4号をピラルクとのオープンウォーターでのファイト中に切られているので…過信は禁物 ©望月俊典
ピライーバと思われる魚とのファイトシーン。このあと、ボトムの岩に擦られてPE12号をあっさり切られる ©望月俊典
PE3号のライトタックルでも5kgくらいのピーコックバスは楽勝だった ©望月俊典
ちなみに、2014年当時使用していた3号と4号のPEラインはソルティガ12ブレイド(DAIWA)。今でも最高級だが、当時はその強さと使いやすさに感動すら覚えた ©望月俊典

幸か不幸か怪魚への誇大妄想が霧散し、ラインの太さも現実的になった

そして、コロナ禍以後の現代。怪魚という怪魚は白日の元にさらされ…過大な幻想は消えていった。使用するラインも真っ当なものになりつつある、と思う。

2023年のタイ遠征にて語り部がチャドーをメインで狙ったときのラインが…

大きめルアー用●PE3号+フロロリーダー10号

小さめルアー用●PE2号+フロロリーダー7号

この遠征時には語り部の友人I氏が14ポンド(約6.35kg)の太いチャドーをPE2号+リーダー8号でキャッチしたのだが、そのときは流木やそれに絡みついたラインなどにチャドーがスタックしつつも、力負けすることなくランディングに成功している。

PE2号というと弱いと感じる人もいるかもしれないが、バス釣りだとMAX級のカバーからロクマルを強引に引き摺り出せるし、ソルトでも(スピニングが大半ながら)オープンウォーターならメーター級の青物や20kg級のオオニベなどもキャッチできる強さがあるのだ。

これまで様々な魚種、シチュエーションで釣りをしてきた一応の結論として、10kg級までの怪魚(ピーコックバス、ドラード、タイメン、バラマンディ、チャドー…などの一般的なサイズ)ならこれで十分だと思う。

ただし、極端に危険なカバー周り、特大サイズ狙い、初心者さんなどは除く。もうひと回り強くした方がいいかもしれない。

もちろん、尖った岩などに擦られたら2号だろうが5号だろうが切れるときは切れるので、他の釣りと同様、シチュエーション次第である。また、一期一会の大物狙いだったり、魚を釣ることよりもラインブレイクさせないことを重視する向きであれば、余裕も持ってかなり太いラインを使う、というのも大いにアリだと思う。

I氏が岩やラインに絡まれながらも、PE2号+リーダー8号でキャッチした大型のチャドー。これでもまだ余裕らしい ©望月俊典
語り部がPE3号+リーダー10号でキャッチしたチャドー。このときは常にカバー奥を狙うスタイルだったので強めの設定 ©望月俊典
PE3号はXブレイドアップグレードX8(よつあみ)、2号はピットブル8(シマノ)を使った。よりコスパ重視に… ©望月俊典
藤田健吾さんがスピニングタックルにPE7号+リーダー60号でキャッチした巨大なムベンガ。当然、ワイヤーも使用している。なお、ベイトタックルにはPE10号+リーダー70号を巻いていた。対象魚やシチュエーションに応じてラインを選ぶのは怪魚も他の魚も変わらない ©望月俊典

施設等関連情報

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

望月 俊典 千葉県九十九里町生まれ。雑誌『Rod and Reel』副編集長を経て、フリーランスの編集/ライターとなる。海外の秘境釣行も大好きで、『世界の怪魚釣りマガジン』の立ち上げ&制作を手掛けた。現在は、琵琶湖事務所で仕事や釣りにいそしむ。著作は『バスルアー図鑑』(つり人社)。ちなみに、学生時代に、ネッシー(といわれているであろう現象)を目撃&撮影したことがある。

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