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<検証>ビワマスが減ったというのは果たして本当か?【琵琶湖】

2025年06月23日公開

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今年の3月末に「『4時間でたった2匹』琵琶湖の漁師が嘆く 〝美味〟ビワマス釣りブームで漁獲量減少に拍車か(略)」…というような見出しの記事が流れた。ビワマスが減った…?あんなにいたのに?果たして本当なのだろうか!?

5ヶ月ぶりのビワマス釣行へ

今年の春は琵琶湖の釣りの入門本を書いていて、全然釣りに行けずにいたこの哀れな語り部(←筆者のことです)。原稿執筆を終えた頃に香川県在住の兄弟子、瀧口哲平さんから「週末、ビワマス釣りに行きたいのですが、予定どうですか?」との連絡があり、雨予報だが、久しぶりに琵琶湖へ出ることになった。

その前にビワマス釣りに関する基本事項のおさらいから。

現在、我々一般の釣り人がビワマス釣りをするには、琵琶湖海区漁業調整委員会の承認が必要となっている。その承認だが、2024-2025シーズンの承認数はその前のシーズンの約半分の1083人に減った。ビワマスが急に獲れなくなったというわけではないのだが、遊漁者の増加に伴い、全体の採捕量に占める遊漁者の割合が増加しているため、その人数を減らして全体の採捕量を調整しよう…というのが狙いだろう。

ちなみに、滋賀県のwebサイトの「承認制度の経緯と資源量、採捕量の推移」というページにこのあたりの詳しいデータが掲載されている。

そこのデータで個人的に気になる点があった。

長年にわたって漁業者(漁師)による採捕量の大部分を占めていた漁法が刺網だった。それが、2022年シーズンから2023年シーズンにかけて採捕量が25.2tから12.7tへと半減しているのだ。逆に漁業者による引縄釣(トローリング)の採捕量は増えている。2023年の夏は北湖の透明度が高かったためビワマスが刺網に掛からなかった、という見方もある。

しかしながら、刺網に掛かったビワマスはそのまま動けずに徐々に弱って死んでしまう。つまり、ストレスがかかりながら血抜きもされない状態で死んでいく、つまり「野締め」と同じである。臭みが残ってしまうし、美味いはずがない(適切に締められたビワマスにくらべて)。

近年はビワマスの食材としてのブランド化もあってか、適切な下処理をして出荷するために、漁師の漁法もトローリングが増えているのではないだろうか?野締めのビワマスと適切な血抜きをして締めたビワマスとでは、料亭などでの買取価格に大きな差があることもあり、刺網での採捕量が大幅に減ったこともあるのでは…?と推測する。


魚探なしで挑むもスタート直後からアタリが頻発! しかし、哲平さんの様子がおかしい…

さて、5月24日。12月以来のビワマス釣りとなったが、果たして本当にビワマスは減ったのだろうか? 現場で確認してみることにした。

この日は慣れ親しんだ湖西のレンタルボート「ひさの屋」から出船することに。バスボートだと船体が重いのかトローリングモーターのバッテリーがすぐになくなってしまうし、船外機も試したが…アイドリングでもスピードが速すぎてあまりトローリング向きではないという結論に至ったからだ。

ちなみに、魚探なしの丸腰状態で広大な琵琶湖に挑むことにした。朝の8時前に真野浜を出船し、15分ほど北へとエンジンで走ったあたりでボートを止め、トローリングスタート。

早朝に吹いていた強風の影響で湖にはうねりが残った状態だったが、風はそれほど強くないので、ボートをどんぶらこと北へ流していった。

流し始めて15分もしないうちに哲平さんのロッドティップがブンブンとお辞儀をし、ビワマスが喰いついたことを伝えている。ドラグを締め込み、巻きながらアワせるが…しかし、これはファイト中にバレてしまった。

引き続きうねりのなかを流し続けていると…いつの間にか哲平さんが土偶のような顔色になっているではないか!すると突然、琵琶湖にリバース!酔ったんですか?

哲平「はい…船酔いですね」

今まで20年以上、琵琶湖でいろいろな人と一緒に釣りをしたが、船酔いで吐いているのは初めてみた…。でも楽になったそうなので、続行続行!すると、すぐにまた哲平さんのリールのクリッカーが鳴る!やや慌てながらも巻き合わせして…今度はしっかり乗った!

語り部「デカいですか?」

哲平「いや、そうでもないかな。でも、ビワマスですわ!」

まずは、1尾目をランディング成功。35cm以上あるので、哲平さんはキープした。顔が土色をしている。

 

果たして希少な魚がこんなに簡単に釣れるのだろうか…?

そこからもお互いのロッドに頻繁にアタリがで続ける展開が続いた。

哲平さんがヒット、語り部もヒット…と次々とロッドが曲がる。開始して3時間が経過した10時半の時点で、哲平さん3尾、語り部4尾というペースで釣れているではないか。しかも、魚探なしで沖のラインを北に向かってただ適当に流しているだけなのだ。ビワマスが減ったというあのニュースがにわかには信じ難いイージーな展開である。

しかし…。

哲平「望月さん、トイレに行きたいです」

おそらく船酔いが限界に達したのだろう、土色の哲平さんが一旦上陸したいという。僕の自宅近くにある湖岸の公衆トイレ近くへ、ボートを浜刺しすることにした。ついでに、家人に酔い止めを持ってきてもらった。これで安心だ。

再び沖へ出ると、ほとんど凪と言っていい状態になった琵琶湖。朝ほどのペースではないものの、ポツポツとアタリはある。すると…。

哲平「きました! これはデカいかも…あ、外れた!」

その後もデカそうなビワマスをバラしてしまった哲平さん。もしかしたら、フックを太軸の大きなものに換えていなかったせいかもしれない。とはいえ、語り部も大きいのは2本バラしてしまったのだが…。結局、15時まで釣りをして、哲平さん5尾、語り部は7尾という釣果。ヒットさせた回数でいうとふたりで合計20回以上。大きいビワマスだけキープして持ち帰った。

さて、本当にビワマスは減ったのだろうか?今回がたまたま好調だっただけかもしれないが、本当に希少な魚が沖を適当に流しているだけで次々とヒットするとも考えにくい。やっぱりビワマスの魚影はかなり濃いよな…と感じたのが正直なところだ。

ただ、気になった点もある。今まで持ち帰ったビワマスは必ず胃の内容物をチェックしていたのだが、これまではコアユが圧倒的に多かった。しかし、今回はコアユが入っておらず、ある程度消化されたヨコエビのようなものばかりだった。語り部もコアユの減少は確実に感じているところでもあり、メインとなっていたエサが居なくなってしまえば、ビワマスにも影響が出るであろうことは容易に予想がつく。また、釣り方もそれに合わせてシフトする柔軟性も必要だろう。

これからもこの状態を維持するために、30cmを超えていても小さい魚は持ち帰らず、来年以降にまた釣りたいと思う。次回の承認も当たりますように!


施設等情報

レンタルボートひさの屋
〒520-0525 滋賀県大津市小野306-89
TEL:077-594-3288 レンタルボートひさの屋ホームページ

施設等関連情報

営業時間 日の出~17:00(夏季)、日の出~16:00(冬季)
レンタルボート代金:1人乗り7,000円(9.8馬力)、8,500円(20馬力)。2人乗り8,800円(9.8馬力)、11,000円(20馬力)、3人乗り13,200円(20馬力)
公共交通機関:JR湖西線 小野駅下車 徒歩約17分
車:湖西道路 真野IC下車 約6分
     
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この記事を書いたライター

望月 俊典
千葉県九十九里町生まれ。雑誌『Rod and Reel』副編集長を経て、フリーランスの編集/ライターとなる。海外の秘境釣行も大好きで、『世界の怪魚釣りマガジン』の立ち上げ&制作を手掛けた。現在は、琵琶湖事務所で仕事や釣りにいそしむ。著作は『バスルアー図鑑』(つり人社)。ちなみに、学生時代に、ネッシー(といわれているであろう現象)を目撃&撮影したことがある。
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