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≪メディア初?≫ビッグベイトで日本のサーモンフィッシングに挑戦!【新潟県五十嵐川】

2025年12月08日公開

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サケは自分が生まれた川へと戻ってくる。しかし、新潟県三条市を流れる「五十嵐川」には、サケだけではなく、11月になると毎年のように私が戻ってくるようになった。思い起こせば一昨年、念願の初サーモンを五十嵐川で仕留めた。去年はディープクランクで釣るという使命を帯びて、見事に4本ものサケを手中にした。そして今年、自分に課した使命は「ビッグベイト」。イトウやレイクトラウトなどをビッグベイトで狙うのはポピュラーだが、サケとなるとあまり耳にしない。ひょっとしてメディア初? その顛末は?

まずは日本のサーモンフィッシングについて

日本の河川ではサケを自由に釣ったりはできない。水産資源保護法によって、内水面のサケ釣りは原則として禁止されているからだ。でも、毎年秋になるといくつかの河川では「サケ有効利用調査」として、サケ釣りを楽しむことができる。新潟県の三条市を流れる「五十嵐川」も、そんな河川のひとつ。五十嵐川では6月中旬から募集を開始して希望者が定員を超えると抽選で調査員を決める。また、往復はがきで応募するというスタイルが、オールドスクール的で私は好きだ。

今年の日本はクマの出没が倍増しているが、サケの遡上数はそれに反比例するかのように、毎年激減している。五十嵐川もその例にもれず、今年はあまり振るわない。地元アングラーの丸山さんによると、11月1日の解禁以来、11月6日だけは20尾釣れたものの、その他の日は0~9尾という惨状だったという。その丸山さんに、今年はビッグベイトで挑戦してみるつもりだと伝えると、色良い返事が戻ってきた。

丸山さん「ビッグベイトは可能性ありますよ。地元のベテランアングラーも、ジョイクロ178を用意している人がいますから」

「次回はビッグベイトで挑戦しよう」と思い付いたのは去年、ディープクランクで釣るというミッションを達成した時だったが、やはり使っている人もいるようだ。でも、釣れたという話はまだ聞いていないし、記事も読んだことはない。当然釣ってる人もいるだろうが、今回私が釣ったら、メディアに掲載する取材では初めてになるかもしれない! ちょっとだけ武者震いを感じつつ、新潟へとハンドルを切った。

⇒ 【記事】2024年の五十嵐川釣行の模様はこちら!

雨、寒さ、見えない魚影。話題はラーメン中心に。

小学生時代からの釣り友達「アイハラ」とは、JR三条駅前にある「旅館みなとや」で落ち合った。3年連続で利用しているので常宿と呼んでもいいだろう。そして翌朝、「鮭小屋」と呼ばれる事務所で、丸山さんと事務局長の大森さんに再会。参加するアングラーたちとルール説明を聞き、いざ五十嵐川で竿を振った。

とはいっても、いきなりビッグベイトを投げたわけではない。まずは手堅くディープクランクを投げて、様子を見ようと考えた。しかし、最初に入った鮭小屋前のポイントでは、例年なら川面の下にうっすらと、あるいははっきりとサケの魚影が見えるはずなのだが、今年は全く見えないのだ。ただでさえ冷たい雨を浴びて寒いのに、これでは精神的な体感温度が5℃くらいは低く感じられた。当然、集中力は続かず、いつしか私もアイハラも鮭小屋の中へ。

「寒いから昼はラーメンかな?」
アイハラ「おととしカレーラーメンを食べた店に行きたいな」
「大黒亭だっけ? またカレーラーメンか!」
アイハラ「いや、チャーシューメンを食べたい。なぜかというと、他の客がチャーシューメンばっかり頼んでいたんだよ」
丸山さん「三条はカレーラーメンだけではなく、背油をたっぷり入れた生姜醤油ラーメンもソウルフードなんですよ」
「それも食いたいなあ」
もう、釣りは半ばあきらめムードなので、話題はラーメン中心だった。

⇒ 【動画】ベイトタックルでサケ釣り!取り回しが異次元!?

 

スライドスイマーに唯一のアタリが来た!

結局、3人とも大黒亭のチャーシューメンを食べて、午後は下流のポイントへ。私はいよいよビッグベイトも投入することにした。最初に選んだのは、DEPSのスライドスイマー175。メインボディーがインジェクションではない旧タイプだ。フックをシングルに付け替えて対岸近くまでキャスト! 最初は流れに乗せて、ゆっくりとただ巻き始める。下流でU字を切ってからは、トゥイッチを加えつつリーリング。川でビッグベイトを使ったのは初めてではない。使っていくうちに、そういえばS字系は流れのある場所に相性がいいということを思い出した。リップ付きに比べて抵抗が少ないので、急流の中でもアクションを崩さないのだ。しかもシングルフックなのでほぼ根がかりしない。たとえスタックしても、ラインを緩めれば下流へと流されて、簡単に外せるのだ。

昨年のディープクランクは、手前の浅瀬から1段階深くなるファーストブレイク付近でのヒットが多かった。だから、その辺りをルアーが通過すると、期待感が高まるのをどうにも抑えきれない。その期待に応えて、カツンというアタリが伝わってきた!

「喰った!」

一瞬、魚の重みが乗った…と思ったが、フッキングしなかった。

アイハラ「ビッグベイトでも喰ってくるんだな」
「ああ、間違いなく魚だったと思う」

しかし、初日はこのワンヒットで終わってしまった。明日もチャンスは1回くらいしかないかもしれない。鮭小屋に戻ると、事務局長の大森さんが寂しそうな表情で迎えてくれた。

「今日の五十嵐川は、全員で何本くらい釣れたんですか?」
大森さん「残念ながら…ゼロなんです」
アイハラ「マジですか?」

この日、五十嵐川で竿を振ったのは13人。その中にはルアーマンだけではなく、手練のフライマンやエサ釣りの名手もいたのに、ゼロだったのだ。今回はだめかもしれない…。

⇒ 【動画】魚野川&三面川のサケ有効利用調査<フライフィッシング>

アイハラの秘密兵器「海鱒スパイラル」が五十嵐川をこじ開けた!

2日目の朝、この日は急用で来れなくなった釣り人が出たりして、参加者はたったの6人。そのおかげで、朝イチから人気の下流エリアに入ることができた。私は、まずディープクランクで探りを入れたが、特に反応はない。でも、時たま遡上するサケを見かけることがあった。状況はよくなっている。相棒のアイハラは、ミノーやスプーンをメインにして投入したが、こちらも明確なアタリはない。会話はだんだん釣りから遠ざかって、またしてもラーメンの話題になった。これは、悪い兆候だ。

「俺、本当は長岡の生姜醤油ラーメンを食べたいんだよね」
アイハラ「何それ? 美味しいの?」
「旨いらしいんだよ。でもここから遠いんだよな。青島食堂」
丸山さん「あ、それめちゃくちゃ有名店ですよ」
アイハラ「でも2日連続ラーメンというのもなあ?」
「そろそろ食べに行くか?」
アイハラ「いや、ちょっと試したいルアーがあるんだ。それを投げてからにしよう」

そういって、アイハラが結び替えたのは、かなり大きめならせん系のルアー。恐らく管釣り用だけど、大型魚をターゲットとしているサイズ感だ。ラーメン話の流れで出てきたので、この形状がちぢれ麵を想起させた。

アイハラ「これ、海鱒スパイラルの『ハンター』ってルアーなんだけど、形状記憶合金だから、でかい魚が掛かっても、元の形に戻るんだよ」

管釣り用のスパイラル系ルアーでサケを狙うのも、ある意味斬新だ。ところが、これがすぐに火を噴いたのだ!

アイハラ「おおっ! 今のアタリじゃないか?」
「マジ?」

この時点で私は半信半疑だったが、その数投後に、早くも疑念は払しょくされた。

アイハラ「来た! 来た来た!」

アイハラのロッドは美しい曲線を描いた。サケがかかったのだ。しかもかなりの引きだ。下流へと逃げるサケを追いかけつつ、徐々に浅瀬へと導いて、一緒にいた丸山さんがネットに入れてくれた。76センチのオスだった。

アイハラ「やっぱり、さっきのはアタリだったな!」
丸山さん「これは、また新しいルアーのジャンルを開拓しましたね!」
アイハラ「テッペイ! じゃあ、ラーメン食べに行くか?」
「いや、それどころじゃないだろう」

このまま自分だけオデコで終わるわけにはいかない。結局、アイハラと丸山さんに弁当を買ってきてもらい、私はここで釣りを続けることにした。

⇒ 【動画】「なみふく(ハイスタ難波)」と「地元パン」と「荒川サケ釣り」

ラスト30分でドラマが起きた!

アイハラと丸山さんが弁当を買いに行っている間、そのポイントには私ともう一人、フライマンの浅賀さんという方が残った。浅賀さんは漁協の準組合員なので、大森さんや丸山さんともよく知っている仲らしい。その浅賀さんが、何度かサケをヒットさせたのだ! 一方の私には、なかなかアタリがない。この差は一体何なのだろう? そんな気持ちで浅賀さんの釣りを観察していたら、ちょっとだけひらめいた。

「俺も、フライみたいにやってみよう」

それはショートキャストで上流側にビッグベイトを投げて、サケが差していそうな場所へとドリフトさせて釣るという方法。フライは、サケの鼻先に流して食わすのが定石なので、それをビッグベイトで試すというわけだ。じっと観察され続けた浅賀さんは、私の心の中を読み取ったのか、「ここでやってみてください」と、場所を譲ってくれた。浅賀さんが釣りをしていた場所の少し下流には複数のサケが定位しているようだ。私はその場所にビッグベイトが流れつくように、キャストを繰り返した。そして、ルアーもドリフトフィッシングを得意とするジョインテッドクロ―178に交換した。

「ん? 重いぞ? あ、喰った!」

激流の中からジョイクロが浮き上がってきて、その後ろにはサケの口が見えた! ロッドにも重みがかかったが…すっぽ抜けた。

「なぜ? しっかり口に入っていたのに?」

時計をみたら2時半。あと1時間半でもう1度チャンスは来るのだろうか? ところが意外に早く30分後にまたチャンスが来た。

「よし乗った! でかいでかい! オスだ!」

口にジョイクロをくわえたサケは、かなり体高のあるオス。ゆうに80cmはありそうな大物だった。

「ネットネット! それから写真!」
丸山さん「とりあえず、ずり上げちゃった方がいいです!」

すると、びよ~んとジョイクロだけが飛んできた。

「なぜ???」
丸山さんの言う通り、さっさと岸に上げるべきだった。後悔に打ちひしがれる私だったが、ふとジョイクロのフックに指を当てると、もう一つの敗因に気が付いた。

「フックポイントが、丸まってたよ。これじゃあ釣れないわ」
丸山さん「僕がいい針持っていますから、使ってみてください」

一日中川底を引いていたので、フックポイントが丸まるのは当然といえば当然。針を交換して時計を見ると、もう3時を回っていた。4時には鮭小屋に戻らなきゃ行けないので、実質30分ほどしか釣りできない。でも、やるしかないのだ。

私より少し下流に立った丸山さんは、私が投げるたびに情報をくれる。
丸山さん「テッペイさん、あのあたりにサケが見えます!」
丸山さん「あー、もっと沖です!」
丸山さん「今、鼻先にルアー通りました!」

本当にいい人だ。でも、なかなか思い通りのコースを流せない。「お、これはいいコースに流せたかな?」と思った次の瞬間、「ズシン」と来た。アワセを加えると、狙っていた場所よりもかなり下流の水面が割れた。結局まぐれアタリだった(笑)。

キャッチしたサケは、70cmのメス。中型だが、お腹が膨れている。そして下あごには、丸山さんからもらった赤いフックがグッサリと刺さっていた。

「よし、ビッグベイトでサケ捕獲成功!」

時計を見たら3時半を回っていた。タイムリミットギリギリで釣りあげることができたのだ。これも、弁当を買ってきたり、フックをくれたりした丸山さんと、ポイントを譲ってくれたり、ヒントを頂いた浅賀さんの協力なしには成し遂げられなかっただろう。皆さん、ありがとうございます。そして五十嵐川よ、来年も戻ってくるからな!

⇒ 【動画】村田基がオホーツク海でボート×サケ釣り

施設等情報

■五十嵐川漁業協同組合
住所:〒955-0191新潟県三条市高岡651
電話:0256-38-4067(9:00~16:00) 五十嵐川漁業協同組合ホームページ

施設等関連情報

■旅館みなとや
住所:〒955-0862 新潟県三条市南新保15-8
電話:0256-33-1471
     
※記事の掲載内容は公開日時点のものになります。時間経過に伴い、変更が生じる可能性があることをご了承ください。

この記事を書いたライター

横沢 鉄平
フリーライター。ライフワークはバスフィッシングだが、ワカサギから世界の怪魚まで、すべての釣りを愛する男。ロッド&リールの「三匹が行く」、ルアーマガジンの「ドラマチックハンター」など、長期連載企画での出演経験も多数。キャンプ用品の「ヨコザワテッパン」考案者でもある。
YouTubeチャンネル「ヨコテツ」も、ささやかに継続中だ。
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