アイハラと丸山さんが弁当を買いに行っている間、そのポイントには私ともう一人、フライマンの浅賀さんという方が残った。浅賀さんは漁協の準組合員なので、大森さんや丸山さんともよく知っている仲らしい。その浅賀さんが、何度かサケをヒットさせたのだ! 一方の私には、なかなかアタリがない。この差は一体何なのだろう? そんな気持ちで浅賀さんの釣りを観察していたら、ちょっとだけひらめいた。私「俺も、フライみたいにやってみよう」それはショートキャストで上流側にビッグベイトを投げて、サケが差していそうな場所へとドリフトさせて釣るという方法。フライは、サケの鼻先に流して食わすのが定石なので、それをビッグベイトで試すというわけだ。じっと観察され続けた浅賀さんは、私の心の中を読み取ったのか、「ここでやってみてください」と、場所を譲ってくれた。浅賀さんが釣りをしていた場所の少し下流には複数のサケが定位しているようだ。私はその場所にビッグベイトが流れつくように、キャストを繰り返した。そして、ルアーもドリフトフィッシングを得意とするジョインテッドクロ―178に交換した。私「ん? 重いぞ? あ、喰った!」激流の中からジョイクロが浮き上がってきて、その後ろにはサケの口が見えた! ロッドにも重みがかかったが…すっぽ抜けた。私「なぜ? しっかり口に入っていたのに?」時計をみたら2時半。あと1時間半でもう1度チャンスは来るのだろうか? ところが意外に早く30分後にまたチャンスが来た。私「よし乗った! でかいでかい! オスだ!」口にジョイクロをくわえたサケは、かなり体高のあるオス。ゆうに80cmはありそうな大物だった。私「ネットネット! それから写真!」丸山さん「とりあえず、ずり上げちゃった方がいいです!」すると、びよ~んとジョイクロだけが飛んできた。私「なぜ???」丸山さんの言う通り、さっさと岸に上げるべきだった。後悔に打ちひしがれる私だったが、ふとジョイクロのフックに指を当てると、もう一つの敗因に気が付いた。私「フックポイントが、丸まってたよ。これじゃあ釣れないわ」丸山さん「僕がいい針持っていますから、使ってみてください」一日中川底を引いていたので、フックポイントが丸まるのは当然といえば当然。針を交換して時計を見ると、もう3時を回っていた。4時には鮭小屋に戻らなきゃ行けないので、実質30分ほどしか釣りできない。でも、やるしかないのだ。私より少し下流に立った丸山さんは、私が投げるたびに情報をくれる。丸山さん「テッペイさん、あのあたりにサケが見えます!」丸山さん「あー、もっと沖です!」丸山さん「今、鼻先にルアー通りました!」本当にいい人だ。でも、なかなか思い通りのコースを流せない。「お、これはいいコースに流せたかな?」と思った次の瞬間、「ズシン」と来た。アワセを加えると、狙っていた場所よりもかなり下流の水面が割れた。結局まぐれアタリだった(笑)。キャッチしたサケは、70cmのメス。中型だが、お腹が膨れている。そして下あごには、丸山さんからもらった赤いフックがグッサリと刺さっていた。私「よし、ビッグベイトでサケ捕獲成功!」時計を見たら3時半を回っていた。タイムリミットギリギリで釣りあげることができたのだ。これも、弁当を買ってきたり、フックをくれたりした丸山さんと、ポイントを譲ってくれたり、ヒントを頂いた浅賀さんの協力なしには成し遂げられなかっただろう。皆さん、ありがとうございます。そして五十嵐川よ、来年も戻ってくるからな!