滋賀県・琵琶湖 65cm級がダブルヒット! 恐るべき栗田 学の引力

2022年7月3日。一日中本降りの雨が続いていたこの日の夕方、この哀れな語り部(と、ここでは自称する)のスマホに着信アリ。「栗田 学」という三文字がディスプレイに表示されている。出るまでの2秒くらいの間に「釣りの誘いであろうこと」、「明日はチャンス日であろうこと」を察した。

バス
  • 滋賀県 琵琶湖

Xデーの再現なるか?

ちなみに、13年前の7月2日は栗田 学さんが琵琶湖で世界タイ記録となる10.22kgのブラックバスを釣り上げた「その日」なのだが、「明日」はその日の状況にかなり近い。13年前も大雨の翌日でそのエリアに濁りが入っていたのだ。
翌朝、9時ごろにマリーナをスタートし、北湖西岸に位置する、とある河口へと向かった。岸釣りが数人いるがボートの先行者は1艇のみ。そのボートはこの哀れな語り部も知っている凄腕のフィッシングガイドだ。

栗田「思ったより水が綺麗ですね…もっと濁らなあかんな」

すぐには投げない。ボート上で少しの間準備タイム。しとしとと雨が降っている。
筆者はこの数日前に近くのポイントでジグヘッドリグのミドストで60cmのバスを釣っていたので、ここでも釣れるんじゃないかな? と、思っていた。栗田さんもミドストなどの釣り方を見てみたいというし…。

しかし、ボートデッキに並ぶ栗田さんのタックルについているルアーはビッグベイトのみ。まずはDRTのクラッシュ9を岸の方に向かってフルキャストした。パチーン!と着水させると、特にロッドアクションを加えることもなく、リーリング。いわゆるビッグベイトのクランキングである。
たまにハスと思われる魚がバスに追われているのか、水面を飛び出してぴょんぴょんジャンプしているのが見える。それがちょうどクラッシュ9サイズなのだ。

(釣りビジョンマガジン初見参見参なので、「哀れな語り部」ことライター望月と、栗田 学氏の詳細な紹介をここに掲載する)

望月俊典(もちづき・としのり) 1975年、千葉県九十九里町生まれ。雑誌「Rod and Reel」副編集長を経て、フリーランスの編集/ライターとなる。国内だけでなく、海外の秘境釣行も大好きで、「世界の怪魚釣りマガジン」を立ち上げ、制作を請け負っていたりもした。コロナ禍の現在は、琵琶湖の畔で仕事をしたり、釣りをしたりしている。著作は「バスルアー図鑑」。以下、自慢できる最大魚。バス=65cm、ヨーロッパオオナマズ=208cm、ベルーガ=195cm、アカメ=125cm、パイク=105cm、ピーコックバス=77cm、ドラード=78cm、タンバッキー=64cm、ピララーラ=推定20kg。そういえば、学生時代に、ネッシー(といわれているであろう現象)を目撃&撮影したことがある。
栗田 学(くりた・まなぶ) 岐阜県出身。生き物を捕まえる天才児。2009年7月2日、琵琶湖にて世界タイ記録のブラックバスをライブベイトでキャッチし、伝説的な記録に77年ぶりに並んだ男。なお、その前年にはルアー(マザー)で8480gの琵琶湖記録バスをキャッチしている。常識的な人間には信じられないようなアプローチで世界記録級バスを追い詰めていった一連のストーリーは面白すぎてあまり表に出ることはない。今も固定観念に囚われることなく、自分の釣りを探究している。遊漁船登録 岐阜 0034号。
栗田さんのクランキング。基本的には巻くだけだ

栗田さんが「デカい」と言ったら本当にデカい

栗田「チャンスですよ、望月さん。ボイルが集中している時間帯は」
そう言っていると、「あ、アタった」…と栗田さん。さらに、同じアプローチを繰り返していると…。
栗田「喰った! 望月さん、まあまあデカいですよ」
栗田さんが「デカい」というなら50cm台ということはない。本当にデカいに決まっている。ロッドを寝かせたままグリグリと寄せてくる栗田さん。語り部はそれまでゆっくり巻いていた巨大スイムベイトを全力で回収し、ロッドからランディングネットに持ち替え、栗田さんが寄せてくるタイミングに合わせてネットを差し出した。
栗田「よっしゃ。まあまあっすね。K9(クラッシュ9)、ほんまよう釣れるわ。こんなに楽に釣れるビッグベイトないですからね」

栗田さんが仕留めた、文句なしのスーパーランカー。アタリはゴゴン!とはっきり出たそうだ。
計測すると65cm、5145g。ルアーはクラッシュ9(DRT)だ

なんと、望月にテンポンド級がダブルヒット!

ここでこの哀れな語り部もクラッシュ9にシフト。
栗田さんの使い方を真似しようとしたのだが…まず、キャストの飛距離が違う。
重いビッグベイトを軽々と50mくらい飛ばしているように見える。語り部も頑張ってフルキャストすると…お、いい感じに飛んできた。ぐりぐりぐりっとリーリングして…しっかり潜ったな、という場所で、ゴン!というバイトを感じた。しかし、乗らず。貴重なアタリをものにすることができなかった。

そこからわずか数投後、ハスが水面でパシャっとやったように見えた場所へ向かってフルキャストし、ぐりぐり巻くと…またゴゴン!という明確なバイトが手元にはっきり伝わった。巻きながら合わせる…と、重い、重すぎる。なんだ、これは。ファイト中、明らかに6kgは超えているであろう手応えを感じながらも、栗田さんには「でかいですよ」と控えめに伝える。もしかしたら7~8kgあるかもしれない(ブラックバスとしてはとんでもない重さである)。バスというか…怪魚の重さなのだ。ゆっくり、ゆっくりと寄せてくると、ボート際で姿を現した。あ…あれ、2匹!? そう思った刹那、巨大なバスがフックを外し、逃げていくのが見えた…。今のデカかったぞ…。いや、軽くはなったけど、まだ重い! クラッシュ9の前後のフックに同サイズのバスがダブルヒットしていたのだ。1匹は逃げられたものの、1匹は栗田さんが差し出したネットに収まってくれた。

ルアーを確認すると強靭なはずのリアフックが伸ばされていた。これでバレたのだ。ああ、65cmクラスのバスを1投で2匹キャッチ…そんなのは長年記者をやってきたが聞いたことがない。獲れていたら一生何度も語り継いだのに…。ともあれ、栗田さんの不思議な引力に包まれて、この僕にも普段では考えられないようなことが起こった。うれしいような、ちょっと悔しいような…複雑な気持ち。人の欲とは恐ろしいものである。

望月が釣り上げた65cm、4300g。リアフックが伸ばされているのが写真でもわかる

やっぱり、この日はXデーだったようだ

栗田「やっぱり今日でしたね…。空梅雨が明けた後の大雨ですから釣れるっすよ」
その読みはさすが。
実は、栗田さんにはこのあたりの日程で、釣りビジョンの動画撮影の予定があった。詳細は避けるが、ビッグベイトで尋常でないサイズのバスを釣ってほしい、という依頼内容らしい。2日前までの状況は、雨があまり降っていないのに6月中に梅雨が明けてしまい、かなり厳しい状況だったと思う。栗田さんは7月4日~5日に取材日を変更できないか、と釣りビジョンサイドにお願いしたものの、撮影隊の都合が合わず…。しかし、でかバスは大人の事情に合わせてくれない。釣れる時に釣るのが釣りの鉄則である。そして、撮れる時に撮る、というのもこの仕事の鉄則なのだ(しかし、結果的に撮影は成功したと聞く。そちらもお楽しみに!)。
栗田「2匹獲れてたらすごかったけど、1匹獲れてよかったですね。ダブルヒットって、バレる時は大抵2匹ともバレるもんで。僕も6kgくらいのがダブルヒットしたけど2匹ともバラしたことがありました」
そこからも栗田さんにはたびたびアタリが続く。

2匹目は58cm。「細いっすわ」と栗田さんはいうが、そうでもない

同じエリアでクラッシュ9を投げ切り、刺激的な一日が終わった

その後、栗田さんは午後に58cmを追加し、僕にはアタリがないまま日が暮れていった。

さて。驚くべきことに、一日中、同じポイントで釣りをやりきってしまったのだ。しかも栗田さんはクラッシュ9しか投げていない。長く取材をしてきたが、こんなのは初めてかもしれない。

栗田「みんな栗田さんじゃなきゃ釣れない…とかいうんですけど、僕はこの時期に一日中、11時間これしかせんからね。みんな色々やるもんで」

まるで琵琶湖のトレジャーハンティング。出ると信じて掘り続けた者こそ金脈に辿り着くことができるのだ。結果が出なければ愚行扱い、出れば手のひらを返したような賞賛へと変わる…そんな世間の評価など栗田さん本人はまるで眼中にないようにも見えるが。

「暑くてたまらんすわ…」と、サウナ上がりの水風呂にでも入るかのようなさりげなさで琵琶湖へと飛び込む栗田さん。ボトムまで潜ってレンジごとの水温差を確認したりもしていた
浸水したクラッシュをアラバマリグ化。「釣れるルアーを集めれば絶対釣れるでしょ」(栗田)
栗田タックル ロッド:モンストロ “ワールドレコード” 81HC プロトモデル(ツララ) リール:カルカッタコンクエスト300(シマノ) ライン:シーガー船ハリス 6号(クレハ) ルアー:クラッシュ9(DRT)
望月タックル ロッド:スイムベイト用ロッド(DRT) リール:カルカッタコンクエスト201(シマノ) ライン:シーガー150 7号(クレハ) ルアー:クラッシュ9(DRT)

施設等情報

滋賀県・琵琶湖

施設等関連情報

特になし

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

望月 俊典 千葉県九十九里町生まれ。雑誌『Rod and Reel』副編集長を経て、フリーランスの編集/ライターとなる。海外の秘境釣行も大好きで、『世界の怪魚釣りマガジン』の立ち上げ&制作を手掛けた。現在は、琵琶湖事務所で仕事や釣りにいそしむ。著作は『バスルアー図鑑』(つり人社)。ちなみに、学生時代に、ネッシー(といわれているであろう現象)を目撃&撮影したことがある。

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