木曽川水系・山岳渓流テンカラ紀行・4

山の天気は変わりやすい。増水、濁り、水温の低下。そんな条件下、限られた日程で好釣果を出そうとすると、ポイント選びが難しい。8月19~21日の岐阜県・木曽川水系の釣行は悪条件で苦労した。

淡水
  • 長野県 西野川&長野県 末川

事前情報は「条件はあまりよくない」!?

地元の友人に聞くと、17日夜は土砂降り、18日朝の中流域はすべてコーヒー濁り。水量も平水時より40cm以上増えているという。19日早朝、「濁りは薄くなってきたが水温は下がっているぞ」との事で、回復具合が心配だった。私達の経験則だと、
1)小沢(支流)の方が濁りは少なく、魚は小沢に逃げ込む。
2)小沢まで増水した時、魚は中流域の淵や深場に逃げ込み、平水になると遡上して戻る。
3)放流魚は下流域に逃げる傾向が強い。
4)小沢は水温が高い。火山地帯の山岳渓流はこの傾向が強い。2℃くらい高いことがよくある。
※因みに中流域とは川幅20m前後、小沢(支流)は川幅10mまでと仮定。

19日の17時30分、夕マヅメ狙いで西野川中流域に入渓。ササ濁りで水量多め。陸上植物が水没して水草になっていた。
18時頃から対岸の草付きの水深50cm位の場所でライズが始まる。水温17℃。小さい蛾が水面に落ちて、それを魚が捕食に来る。

夕マヅメ直前に入った場所。この後、約30m上流でドラマが起きた

狙いが的中、体色鮮やかな尺上アマゴを釣る!

18時30分頃になると、絶えずライズが起こるようになったが小型だ。釣友と川に立ち込みじっと待っていると、ライズしている魚は段々と大型になってきたようで、我慢出来ずに釣りを開始する。
木の枝の隙間で、水深50cm程度の緩い流れに毛バリを打ち込むとすぐに反応。最初は合わせを入れずそのまま流す。数回打ち込むと、毛バリが沈み始めた時にゆっくりとだが水面が割れた。合わせを入れるとヒット!しかし、夕刻のため魚のサイズがよく分からない。“サイズや如何に”と思った瞬間、下流に走り出した。竿のしなりを見た友人が「大きそうだから、河原に引き上げたほうがいいよ!」と声を掛けてくれた。ゆっくり後退りして浅場に誘導しようとすると流心に走る。これを数回繰り返し、5mラインと1.2mハリスを手で手繰り寄せ、タモに入れたのは体色鮮やかな31cmの幅広“尺アマゴ”だった。久しぶりの“尺上(30cm以上)”に大喜び。年甲斐もなく、思わず「やる時はやりまっせ!」の奇声を上げてしまった。
その後、僅かな間に20cmクラスを2匹追加。釣友も24cmの今回唯一のイワナと複数のアマゴを手にした。今回はポイント選びが的中した夕マヅメ釣行だった。

“尺アマゴ”背ビレまで黒点がある
同じポイントで釣った小型:1
同じポイントで釣った小型:2

翌朝、朝マヅメは?小沢に入った私は?

20日の5時30分、末川に3人で入渓。水量の多い中流域に入った釣友2人は不発、私は流入する小沢に入り、20cmクラス2匹、放流サイズを4匹。普段はチョロチョロの小沢だが、水量が増えて魚の活性が上がったようだ。ここには1m位の小堰堤が2段あり、中流域から魚が上がってくるのは難しい釣り場だが、水量の多い日は侮れない。このような場所はたくさんあるので、増水時には試してみる価値はある。

小沢の増水時ポイント
このクラスがよく掛かる

柳の下で2匹目のドジョウならぬアマゴをキャッチ!

夕マヅメ、18時から昨日の“尺上”ポイントに釣友2人が再度入渓した。雨が激しく降って川霧も漂う中、小降りになった時を狙い1人は19時までの短時間に27cm級アマゴを頭に“ツ抜け(2桁)”の好釣果。魚がたまっていたらしく、中々経験出来ない釣りを堪能したようだ。
私は薄暮の中、水深10cm位のザラ瀬(川虫を取るような場所)のたまりで、24cmのアマゴが掛かってビックリ。普段は竿を出さない場所だ。薄暮と平水に戻り掛けの条件で遡上をしていたアマゴのようだ。
雨と寒さで19時に納竿。帰路はポケットライトがないと歩けない状況だった。今回は3人で朝1回、夕方2回のマヅメ時のみの釣行で、31cmを筆頭に30匹以上のアマゴを釣ったが、イワナは24cmが1匹のみ。やはりアマゴは“雨の子”でした。

27cmのアマゴ
朱点と模様は千差万別

何事も無理をせず、短時間に集中して!!

渓流域は、雨が降れば、増水して、濁りが入り、水温は低下する。特に山岳渓流では、峠の向こうは晴天だが、こちらは大雨ということがよくある。そのため、鉄砲水や土砂崩れで緊急避難せざるを得なくなり、周りの方に迷惑をかけてしまう箇所も少なくない。通いなれた河川でも充分に注意して、厳しい条件下でも期待出来るポイントを探し出すことが必要だ。
私達シルバー世代のテンカラマニアは、いかに安全で短時間に楽しめるかを考えてポイントを決める。勿論、外れることも多いのだが…。毛バリのカラーやサイズなどはあまり気にしない。“バシャバシャ”ライズしている時は、毛バリを交換する手間が惜しい。どの様な毛バリを使っているか聞かれることもあるが、「自分が見える色、見える形の毛バリです」と答えている。隠すつもりはない。当然のことだが、着水時に見えない毛バリでは合わせられない。いよいよ、9月はラスト釣行の時期。大きなたまり池やダム湖の流れ込みで、本流差しの大物を狙いましょう。
●タックル(参考までに)
・テンカラ竿/3.00~3.60m
・ライン/フロロ4号4.5~5.5m(レベルライン)
・ハリス0.8~1.0号1.0~1.4m

カラフルアマゴも1匹きた
カラフルと比べてみてください

施設等情報

木曽川漁業協同組合
住所:長野県木曽郡木曽町福島4935-1
TEL:0264-22-2580 木曽川漁業協同組合ホームページ

施設等関連情報

遊漁券の料金:年券9,000円(顔写真付き)、日釣2,000円、現地3,000円

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

野口 渓壮子 神奈川在住、70歳代。電動リールも巻くが、毛鉤も巻く。水溜まりを見たら竿を出したくなる。自称、釣りの伝道師。

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