7年振りの北海道! ところが空港で緊急事態!? 飛ぶのか?
釣り具メーカーさんから撮影の依頼を受けて北海道は道東へ行くことになった。釣り好き、それもことトラウト好きにとって北海道と言えば、そこは夢の地。しかも本州の多くの川でトラウトの釣りが禁漁となった10月以降でもトラウトフィッシングができる北海道は、魅力に満ち溢れている。ただ、今回、僕が担当するのはあくまでも撮影(本職はライターだが)。自分がアングラーとして釣ることではない。なので、釣り場で手に持つのはロッドではなくカメラだ。
「ロッドとルアーは宮崎さんの分も用意していますから。リールは自分のを持ってきてくださいね」。
依頼主がそう言うのだから、こればかりは仕方ない。荷物にリールも足さなくては。あぁ、仕方ない、本当に仕方ない。ワクワクも止まらない。いや落ち着け。これは仕事だし、たとえ「宮崎さんも釣っちゃってくださいよ」と言われても、自分がロッドを振るのは依頼主が釣って、よい絵が撮れてからだぞ……と自分に念を押す。
フライト時刻の1時間前には羽田空港に到着。ここでのんびりコーヒーを飲むのが気分イイんだよね。あいにく、本日の釧路方面は雨らしい。スマホで天気を調べ、なんとなしに出発ロビーのテレビに目を向ける。するとニュース速報。スマホにも通知。Jアラートが発令? なんと、数年振りに飛行に乗り、7年振りの北海道へ向かう日に弾道ミサイルが発射? これから向かう航路を横断して行ったようだ。ちょ……やめてもらっていいですか? ロビー周辺で少しだけ動揺が見られたものの空港自体は平静を保ち、飛行機も予定時刻に離陸。僕らを無事に悪天の釧路空港へと運んでくれた。
向かうは屈斜路湖!狙いはハイシーズンとなるヒメマス
クルマを走らせ到着したのは屈斜路湖。今でこそ多くのトラウトが狙える湖として知られるが、1938年(昭和13年)の地震により湖が酸性化してしまい、一時は多くの魚が死滅してしまったという。その後、水質の改善と安定に伴い、放流事業などが始まり、魚の繁殖も回復したそうだ。今回の釣行で、そんな屈斜路湖の歴史をあらためて知ることができた。
さて、今回の狙いのひとつは秋の10月~11月頭がハイシーズンだというヒメマス。平時は色の薄い銀ピカのニジマスのような姿だが、産卵が近づくと体色は鮮やかな赤に染まり、体形や顔つきも厳つくなるのが特徴だ。屈斜路湖や中禅寺湖、十和田湖など湖に陸封された個体はヒメマスだが、海に降り遡上してきた個体だとベニザケとなる。僕は神奈川県の芦ノ湖のワカサギ狙いで釣れたヒメマスらしき魚を手にしたことがあるものの、それは銀ピカの個体だった。それはそれで美しいが、これぞヒメマスという赤く染まった個体にも、ぜひ出会い、触れてみたい。そして、あわよくば釣りたい。
初めて手にしたヒメマス。それは美しく、そして勇ましかった!
「アタリ。あ、またアタリ……。ウグイかなぁ? いや、ヒメマスだ。群れで泳いでいますね。よし、喰った!」
今回の僕の仕事の依頼主である本多さんのロッドが曲がり、ドラグがジィ~と鳴る。寄ってくる魚は……赤い。おぉ、本当にヒメマスだ! その色はたしかに赤く、そして背中が盛り上がっている「セッパリ」だ。つまり、オスのヒメマスということだ。サイズは35cmほど。そのカタチはサケやベニザケと同じで厳ついのに、サイズはそれらに比べると35~40cmとやや小振りなのが産卵期のヒメマスの特徴だ。おぉ、カッコいい! そして撮影のため、魚体に触れてみると、すんごくヌルヌルしている。ウロコのザラザラ感や硬い皮膚感はなく、他のトラウトと比べてもヌルヌルした印象が強い。これがヒメマスか……。本多さんがパターンをつかみ2匹、3匹とオスのヒメマスをキャッチ。そして、本多さんの釣り仲間も続けてキャッチ。どうやら反応のよい群れが入ってきたようだ。
「宮崎さんも釣ったほうがイイですよ!」。仕方ないなあ(笑)
数匹のヒメマスの撮影を終えると、遂にお声が掛った。いや、それまでも「やってくださいね」と気遣ってもらってはいたのだけど、雨天という悪条件下のため、できるだけ多めに魚の写真を撮っておきたかったので、甘い誘いを辞してロッドを持たずにいたのだ。でも、数匹の美しいヒメマスの写真を撮ったし、仕方ない。そろそろイイっすかね。いや、すいません。当然だけど自分でも釣ってみたいです(笑)。ではでは、ご相伴にあずかります! あぁ、ちむがどんどんする~。本多さんオススメの樹脂製スプーンのパラトType HV3g(ピンク系)をキャスト。樹脂製のなかでは比重があり遠投しやすいモデルだ。まずはこのモデルで好反応な群れを探そう。水面は鈍色の空を映しているので、偏光グラス越しでも水中が見づらい。それでも雨が止み、風が落ち着いたタイミングではシャローエリアを回遊するヒメマスの群れが見えはじめた。あぁ、本当にいる! 立ち込んだ先の目の前2mほどのところを時折り色づいたヒメマスが回遊して行く。そして、コココンッというアタリ! だが、フッキングしない。そんなヒメマスかウグイかわからないアタリを感じ始めて数分後、明確なアタリ。ボトムからゆっくりと巻き上げていたところで、緩んでいたドラグが一気に出される。あれ、バレたかな? ドラグを締め直してリールを巻く。まだ、ちゃんとヒットしている! この手際の悪さが非常にカッコ悪い……。それでも、何とかネットイン。やった、自分にとって、屈斜路湖での初めての魚。そして初めてのヒメマス。先ほどまで、人の釣ったヒメマスを散々触ったが、自分の釣ったヒメマスとなると感慨が違う。神々しい赤味。そして、この神聖なるヌルヌル。その喜びを存分に味わった。
そして再度、晴天の屈斜路湖へ
道東滞在の初日に屈斜路湖のヒメマスを釣った我々は、翌日、翌々日は別のトラウトを撮影するため、道東の他の河川へと向かい、それぞれ無事に釣果を収めていた。そして最終日。なかなかの晴天だ。どうする? 網走にアキアジ(サケ)を釣りに行くか? それとももう一度、屈斜路湖へヒメマスを釣りに行くか? 本多さんと考えた結果、答えは屈斜路湖。もう一度、ヒメに会いに行こう!
「この前よりも魚が見えますね」と本多さん。
晴天で風もないため、湖沿いを泳ぐ赤く染まったヒメマスの群れがよく見える。ヒメマスの接岸は水面の紅葉と言われるそうだが、その意味が分かった。釣行時の10月初旬だと、まだヒメマスシーズンも初期のため水面の紅葉も盛りではない。でも、これから加速度を増して秋が進むと、湖畔の紅葉と接岸数が増えるヒメマスによって、赤く染まった屈斜路湖の景色はさぞかし壮観だろう。
ただ、この日はヒメマスの群れが多く見られるものの、前回と同じパターンでは反応が渋いようだ。本多さんは前回同様、樹脂製スプーンだが、比重の異なるパラト+GF30の1.3gをキャスト。どうやら、この日のヒメマスはボトムから10cmほどをキープするか、スローにリフト&フォールさせながら巻いてくるパターンで口を使うようだ。なかなかセレクティブ。前回のように比重のあるスプーンを巻いてくるだけではあまり反応してくれない群れのようだ。
「きましたよ!」。本多さんのロッドがしなり、水柱が立つ。
これまた体高のあるセッパリ。オスのヒメマスだ。おぉ! 雨のヒメマスも美しかったが、陽光を浴びたヒメマスの美しさよ……。
この屈斜路湖でのヒメマスフィッシングは、10月の初旬より11月初旬まで楽しめるという。つまり、今が最盛期。真っ赤に染まった屈斜路湖のヒメマス。ぜひ、また会いに行きたい!
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