アウトドア界があえて黙殺?格安電熱ウェアの実力を検証【防寒】

冬の釣りは防寒が欠かせない。今回の当コラムでは、これまで雑誌などで紹介してきた「インナー、ダウン、アウター…」といったノーマルな防寒対策レイヤーに一石を投じたい。いや、一石どころか革命が起こるかも?(執筆:望月俊典)

コラム

電熱ウェアはアウトドア界のテスラを産むか?

ついに、電熱ウェアに手を出してしまった。電熱線を張り巡らせたダウンベスト風の防寒着。ワークマンとかで売られているアレである。オートバイのライディングスーツなんかでは昔からあるけど、近年は冬のワークウェアとして一般に普及しつつあると思う。でも、これって従来の高価な防寒着は駆逐され、今まで常識だったレイヤリングも過去の遺物なるんじゃ…実は大変な問題作なのではないか?という微弱な高揚感とともに、この哀れな語り部(←筆者)はAmazonで購入した。「前後17箇所発熱」するらしいメーカー不明の電熱ベスト、6,180円也。ただし、バッテリーは別売り。一般的なモバイルバッテリーがそのまま使える。

早速釣りで使ってみた。12月21日の琵琶湖。朝の最低気温−1℃、日中の最高気温9℃とまあまあ寒い。8時ごろからボートの準備を始めたが、いろいろトラブルもあったりして、釣りを開始したのが10時過ぎ。終了が16時だった。

いつもなら、厚手メリノウールの肌着の上にフリースやウールのセーターを着て、その上にダウンジャケット、さらにゴアテックスのシェル、というのが語り部の基本レイヤー。とりあえず、いつものレイヤーに電熱ベストをインサートしてみたのだが…ダウンジャケットの下に着るとそれだけで窮屈になる(体型の問題もある)。着られないこともなかったが、動きやすさや暑くなりすぎることも考慮してフリースは脱ぐことにした。

電源を入れると…これは…あったかい…のかな? 使い捨てカイロほどではないが、じんわりと全体がぬくぬくしてきた。ベストなので最初のうちは腕が寒い気がしたが、なぜかそれも気にならなくなった。午前中はほとんど寒さを感じないくらい、ほんのりとした温かさを感じてはいたが、昼過ぎになって急に寒くなった気がした。気温はピークの時間帯のはずだ…。あ、バッテリーが切れてた。そう、やっぱり電熱ベストは確実にあったかいのである。

ただし、製品としてはまだ粗さを感じるのも事実。電熱線のあるところとないところ(私のベストには胸部に電熱線がない)、肌に密着するところとそうでないところで温かさのムラを少々感じる。バッテリーの持ちもすごくいいというわけではない。ダウン風なだけでお世辞にも質がいいとはいえない化繊生地である。デザインに関しては褒めるところを見つけるのが難しい。

しかし、内燃機自動車から電気自動車へと変わりゆくように、防寒着も従来のレイヤリングが終焉し、「もう上下電熱スーツがあればいい」という時代が近い将来にやって来てもおかしくないぞ…とも感じた。有名アウトドアメーカーはまだ表向きは本格的に動いてはいないような気がするが…本気の良品を世に出すことができたなら、アウトドア防寒着界のテスラのような存在になれる…かもしれない。

最初はフリースを着ていたのだが、動きづらいのと暑いのとで、厚手メリノウールの肌着の上に電熱ベストを着た
その上にモンベルのダウンジャケットを着た。ちなみに下もモンベルのダウンパンツ
さらに、モンベルのストームクルーザーを上下着て完成!
電源のオンオフと温度調整は、このスイッチで設定する。背中、お腹、前後肩まわり、首まわりの温度が3段階(強:約55℃、中:約45℃、弱:約35℃)に変更できる。ちなみに、電源を入れてから操作しないでいると勝手に強→中になる。それでも結構温かかった。首まわりは密着して温かく、それが全体に効いていた。肩こりなんかにもよさそうだ
バッテリーはアンカーの定番品、PowerCore10000(10000mAh)を使用した。今だとAmazonで3,490円也。肝心のバッテリー持続時間だが…モードによって差がある。電源を入れたままのオートモードだと約4時間40分(実測)。最初から弱モードにすると約5時間50分持続した。このバッテリーを2つ用意したので問題なく一日釣りができた
難癖をつけると、腰巻きタイプのライジャケのベルトの下にバッテリーがあるので、ちょっと屈みにくかったりする
この日の天候は普通に寒いが、穏やかだった。レインウェアの中までずぶ濡れになるような豪雨だと…未知数ではある

施設等関連情報

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

望月 俊典 千葉県九十九里町生まれ。雑誌『Rod and Reel』副編集長を経て、フリーランスの編集/ライターとなる。海外の秘境釣行も大好きで、『世界の怪魚釣りマガジン』の立ち上げ&制作を手掛けた。現在は、琵琶湖事務所で仕事や釣りにいそしむ。著作は『バスルアー図鑑』(つり人社)。ちなみに、学生時代に、ネッシー(といわれているであろう現象)を目撃&撮影したことがある。

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