17年ぶりに買い替えたジェットボイルは何が変わったのか?

アウトドア、および釣り場での調理シーンを変えたといっても過言ではない、ジェットボイル。ざっくりいうと、早く、最小限のガスでお湯が沸かせるストーブだ。それを17年ぶりに買い替えた哀れな語り部(←筆者)が新旧思い出比較インプレをする。(執筆:望月俊典)

コラム

冬のボート釣りでは必須となったアイテム、ジェットボイル

ジェットボイルを知らない人のために少しだけ説明しよう。従来のアウトドア用ストーブというのは、バーナーとクッカー(鍋などの調理器具)が別々だった。ジェットボイルはクッカーの底部に波状の金属の意匠を施し、さらにクッカーとバーナーをセットにすることで熱効率を飛躍的に高めている。つまり、ガス消費量を最小限に抑え、早くお湯を沸かすことができるのだ。従来品に比べて半分以下の時間でカップ麺が食べられるようになったと感じた。真冬に冷たいおにぎりを胃袋に叩き込んでいたあの苦行を、誰でも簡単に回避できるようになったのである。

初代ジェットボイルは北米では2004年に発売、日本では2005年にモンベルが代理店となり販売された。語り部は2005年の誕生日(11月)に手に入れ、その年末には現場で使用していたので…釣り場に持ち込んだのは日本でも最初のほうだったに違いない。その後、冬のボート釣りでは定番アイテムとなるが、自分以外で使っている人を見たのは2代目に当たる「Flash」だったので2009年以降だったと思う。釣り場だけでなく、アパートでガスを止められた時にはジェットボイルでお湯を沸かすだけでなく、野菜やソーセージを煮込んだり、米を炊いたこともあった。

そんな長年愛用してきた語り部の初代ジェットボイルだが…近年不調続きだった。初代モデルのバーナーヘッドはスチールウールのようなコアと金属の網、その上に金属の穴空き板(専門用語がわからないのでご容赦ください)で構成されていたのだが、それらがほぼ朽ち果て、なくなっていた。そのせいか、ガス調整ツマミをちょっとでも強めにすると、火がバーナーから溢れ出し、カバーまで焼く勢いだったのだ。もう限界だな…と、モンベルショップまで修理に持って行くと…「交換パーツがありませんので…修理不可能です」という残念な回答をいただいた。

ボートで広げた新型モデルの内容物。ガスカートリッジは別売りだ
ボート上でもアツアツのカップ麺を食べることができる。極寒のなかで一日中釣りをする人ならこのありがたみがわかるはずだ。ちなみに、どん兵衛の正しい作り方は、お湯を入れて麺が浮いた状態で規定のラインまで熱湯を注ぐこと(麺が浮く前の状態、浮いた後の状態、どちらが基準なのかを日清食品に問い合わせたことがある)

初代と最新を比較してみたら…おお、パワーアップしている!

長年大事に使ってきたモノだったので、同じ初代モデルを探したが…どうせ修理できないんだから最新モデルを買おう、ということに気変わりした。Flash2.0という現行の後継機にあたるモノを購入。

数日前、早速琵琶湖のボート釣りで、使ってみることに。カップ麺を食べるために500mlの水を沸かしてみた。ボンベを装着し、ガス調整ツマミを捻って点火装置をカチカチすると…3回目で着火した。弱火で待つこと2分45秒、完全に沸騰した。ちなみに、気温2℃のベランダでもう一度試してみた。今度はガスを全開にしてみると…なんと1分46秒で完全沸騰した。早い! 初代ジェットボイルよりもパワーアップしたように感じる。初代は故障しているので同じ条件(気温や風速で沸騰時間は変わるため)で比較することができないのが残念だ。

では、初代モデルとの変更点を写真で比較していこう。写真の左が初代で、右が新型である。

『バーナーヘッド』:初代モデルは複雑なメタルメッシュの組み合わせだったが(写真の私物はまったく原型をとどめていない)、シンプルなモノに変更されている。これは壊れにくそうだ
『ガス調整ツマミ』:初代は樹脂製ツマミだったが、新型は折りたたみ式の針金に変わっている。これって…進化なのだろうか? 初代の方が明らかにコンパクトだ。新型は折り畳まなければ鍋に収納できないので、必然的にガスカートリッジを外さなくては収納できなくなった
『イグナイター』:いわゆる電子ライターのような着火装置。初代のコレは壊れやすく、もっぱらライターで着火していた。新型のイグナイターは収納時などの破損を防ぐためか、フレームの縁より低くなっていて、導線も壊れにくいように(?)遊びが持たされている。長く使ってみないとわからないが、もしかしたら一番の進化かもしれない
『ネオプレーンのカバー』:2代目にあたるFlash(2009年発売)から、ネオプレーンのカバーの一部がのぞき窓のようになっていて、お湯が沸くとここがオレンジ色に変わる。しかしながら、沸騰すれば一目瞭然なわけで…なんの意味があるというのだろうか? また、ネットでFlashの中古品もたくさん見たが、この部分の接着が剥離しているものがあった…意外な弱点になってしまっているのかもしれない。デザイン性や遊び心は感じるが、実用物としては不要なギミックに過ぎない
『フレームデザイン』:クッカー下部の窓が波状のデザインに変更されている。個人的には旧型の方がシンプルで好み。クルマなんかでいうと、完成されたデザインを目新しさだけを理由にマスクだけ変えたマイナーチェンジ…アレと同じだと思う
『ボトムカバー』:クッカー下部を保護するための樹脂製のカバー。初代はこれがめちゃくちゃ外しにくかった。自分でカッターで切れ目を入れたりして改善していたが、これ自体に大した意味を見出せず、捨ててしまった。新型はフレーム自体に凹み部分を設け、カバーを外しやすくしている
『その他付属物』:語り部が入手した最初期型にはゴトクと三脚はなく、オプションとして後から発売されていたと思う。が、だいぶ前のモデルから付属するようになった。ただし、定価も上がっているし…別売りでよかったような気もしなくはない。新旧モデルを比較してみた印象としては…細かい部分の改良は多々あるものの、シンプルさは少々失われたように感じる

施設等関連情報

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

望月 俊典 千葉県九十九里町生まれ。雑誌『Rod and Reel』副編集長を経て、フリーランスの編集/ライターとなる。海外の秘境釣行も大好きで、『世界の怪魚釣りマガジン』の立ち上げ&制作を手掛けた。現在は、琵琶湖事務所で仕事や釣りにいそしむ。著作は『バスルアー図鑑』(つり人社)。ちなみに、学生時代に、ネッシー(といわれているであろう現象)を目撃&撮影したことがある。

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