寿命1世紀以上、世界最大の川魚の名は?【世界怪魚図鑑07】

怪魚とはなにか?…という問いの答えはいろいろあるだろう。哀れな語り部(←筆者)には「恐竜を見たときと同じような印象を感じさせる淡水魚」という個人的な定義がある。ただ、一般的にいうと「とてつもなくデカくなる魚」というのが最も説得力がある尺度ではないだろうか?(執筆:望月俊典)

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デカすぎて仲間はずれ? 8.6mの記録もあるベルーガ

世界最大の淡水魚は?というとピラルク、メコンオオナマズ、ヨーロッパオオナマズ、詳しい人だとプラークラベーン(巨大な淡水エイ。2021年にカンボジアで300kg超の個体が捕獲され、メコンオオナマズの記録を超えたとされる)の名前も上がるかもしれない。ただ、チート扱いされて(?)なぜか除外されがちな、影の帝王がいる。チョウザメの仲間たちだ。

特に大きくなるので知られているのは、ベルーガ(オオチョウザメ)、ホワイトスタージョン(シロチョウザメ)、シナヘラチョウザメあたり。特にキャビアの王様としても知られるベルーガ(オオチョウザメ)は伝説的な記録だと体長8.6m、体重2700kg…と、他の横綱級巨大魚とはまったくの別格の恐竜サイズだ。公式とされている記録だと、1827年にカスピ海に注ぐロシアのヴォルガ河河口で体長7.2m、体重1476kgの化物が捕獲されている。20世紀以後だと、1922年にヴォルガ河で捕獲された体長7m、体重1224kg(キャビアは259kgあったという。ググるととんでもない写真が出てくる)の記録がある。その寿命は100年以上(検証済みの記録は127歳)。ただし、河口で捕獲された記録からもわかるように、”基本的には淡水魚”ではあるものの、カスピ海や黒海などの塩湖へ行き来することもあるようだ。そのあたりが世界最大の淡水魚論争でケチが付く理由なのかもしれない。ちなみに、名前にサメと付くが、海のサメとはかなり縁遠い。

さて、語り部はなんと”世界最大の川魚”(この表現ならほぼ間違いはない)であるベルーガを釣ったことがある。しかし、川ではなく池だった。2016年に小塚拓矢さんと『世界の怪魚マガジン』の取材で訪れたチェコにて、世界的に有名な怪魚ハンター、ヤコブ・ワグネルさんの所有する大きな池で釣りをさせてもらったのだ(ヤコブは池や湖を10数個所有しているとのこと。彼の話を聞いていると…単なる富豪ではなく、たぶん昔でいう領主の末裔なのだと思う)。

ヤリタナゴのような小魚をエサにして、置きザオにしていると……忘れた頃に竿先が微かに震えながらチョコチョコとお辞儀を繰り返している。「なんか小魚でも掛かったのか?」と、ちょっとばかり残念な気持ちでリールを巻きながら一応合わせてみると…ん? 根がかりしたかのような重さだ。それがめんどくさそうに動き出したではないか。引きは弱い。全然弱い。しかしながら、頭を振る幅は巨大魚のそれ。力は弱いが時間がかかる、そんな奇妙なファイトの末、上がってきたのは…なんと、2m近いベルーガ(オオチョウザメ)だった。幽霊のような青白いその魚の顔は、なぜかカメラのピントが合わなかった。

体長は195cmもあった。語り部が釣った魚のなかでは、ヨーロッパオオナマズに次いで2番目の長さに当たる
ヤコブが釣ったかわいいベルーガ。黄色っぽい体色をしていた
真下へと飛び出すベルーガの口。鼻の下の触覚でエサを探し、掃除機のように吸い込んでしまうのだと思われる
エサにした小魚。ヤリタナゴくらいのサイズだった
語り部が釣ったベルーガ。右側の胸ビレに奇形が見られ、引きが弱かったのはそのせいかもしれない
他のセレブ衆が釣ったベルーガ(右)とホワイトスタージョン(左)を持つ怪魚ハンターたち(笑)。底知れぬ池である
ヤコブ自身でしっかり蘇生させてからリリースしていた

施設等関連情報

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

望月 俊典 千葉県九十九里町生まれ。雑誌『Rod and Reel』副編集長を経て、フリーランスの編集/ライターとなる。海外の秘境釣行も大好きで、『世界の怪魚釣りマガジン』の立ち上げ&制作を手掛けた。現在は、琵琶湖事務所で仕事や釣りにいそしむ。著作は『バスルアー図鑑』(つり人社)。ちなみに、学生時代に、ネッシー(といわれているであろう現象)を目撃&撮影したことがある。

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