口の中はまるで棺桶…伝説の人喰いナマズの名は?【怪魚図鑑13】

アマゾンはナマズの王国である。ナマズの仲間は世界におよそ2867種類いるといわれ、約半数がアマゾン河流域に生息するとされる。そのなかでも、特にデカくなるのが、ピララーラ、ジャウー、そしてピライーバだ。筆者の独断で彼らを「アマゾンの3大ナマズ」と選定し…今回はジャウー、ピライーバを紹介しよう。最強のナマズは誰だ!?(執筆:望月俊典)

コラム

川底の巨大ポリバケツ、ジャウー

成長すると2mに達するとされる、ジャウー。その昔、胃袋から人骨が見つかったとかで、日本では「人喰いナマズ」として紹介されたこともあった。ご高齢の日系ブラジル人によると「昔、3mくらいのも捕まえたよ」…だとか。黄土色~褐色の地味な体色で、体型もいかにもアマゾンのナマズ然としてさほど特徴もないのだが…とにかくデカくなる。そして、顔がかわいい。

語り部がブラジル・マットグロッソ州、テレスピレス川近くの町に滞在していたとき、たまたま知り合ったアイスクリーム屋のおじさんが大の釣り好きだった。そして、この町でたまたま知り合った日本人の旅人・日野貴士さんと、雑貨屋のおじさん(釣り好き)の4人で釣りに行くことになったのだ。

その日は、ルアーでピーコックバスを、エサで大ナマズを狙う計画。語り部はルアーでナイスなピーコックバスが釣れたり、日野さんはエサで大きなタライロンを釣ったりもしたのだが…大ナマズを釣り上げたのは…雑貨屋のおじさんだった。この黄色っぽい魚体…巨大とはいえないサイズだが、ジャウーだ。初めて見たジャウーはアイスクリーム屋のおじさんによって川で解体され、彼らの胃袋に収まることになった。

もしかしたら人を喰ったこともあるかもしれないが、人に喰われる方がアマゾンではずっと多いようだ。

前日に野池で投網を打ち、エサとなる小魚を捕まえる。めちゃ暑かった…
投網で捕まえた小魚たち。よくみるとタライーラやピーコックバスもいる
アルミボートに4人で乗り、ナマズのポイントにてエサを放り込む。水をがぶ飲みしているのはアイスクリーム屋のおじさん。陽気なサッカー好き
こっそりエサの魚(死魚)にルアーをつけてキャストし…「よし、釣れたぞ!」というブラジル人定番ギャグを披露してくれたアイスクリーム屋のおじさん。ちなみに、これはピャウーという、ナマズのエサにするには最高の魚だ
まだ若いジャウー。左の日野さんが仕留めたかのようだが…釣ったのは雑貨屋のおじさんです
ジャウーの口。食道は遥か奥にある。自分大きさの2/3程度の獲物なら食ってしまう…というのも頷ける口内のデカさである

アマゾンの暴走帝王、ピライーバ

おそらく、アマゾン3大ナマズのなかで最も大きく成長するすると思われるのが、ピライーバだ。見た目はサメのような体型と配色で、ちょっと目つきが悪い。巨大な体にくらべてさらに巨大な口は、ゴミ収集車のようになんでも飲み込んでしまいそうだ。一般的には3mを超えるとされるが、さっきの高齢日系ブラジル人の方は「昔は大きなボートと同じくらい…たぶん7mくらいあったかな」というのを見たことがある…という。ホントかな?

さて、語り部がピライーバに接触したのもテレスピレス川。漁師のバドと一緒に大ナマズ釣りをしていたところ…夕方、ゴゴンというアタリの直後、ズギューンッ!!!!とラインが走った。まるで、国道を走っている原付バイクにハリが掛かったかのようだ。「ピライーバだぞ!」と、バドが叫ぶ。20m、30m…と走られるがまるで止まる気配がない。およそ50mほど走っただろうか、いったん逃走が終わり、今度はこちらが寄せる番になった。重さはあるが…頭をこちらに向かせてしまえばそこまでのものではない…かと思ったら、また走り出した! 20mくらい走られたところで、ボトムの岩に10号のPEラインを巻かれ、あっさりと切られてしまった。

いつの日か、続きを書きたいと思う。

ピライーバとのビッグファイト。漁師のバドから「危ないから座ってやり取りしろ」といわれた。
ピライーバ狙いの仕掛け。エサはパクーの切り身を使った。なお、アマゾンの巨大ナマズ釣りの道糸にPEラインは不向き。岩場で走られることが多いので、PE10号でも擦られると一発で切られた。太さは11分茹でスパゲティくらいのナイロン糸が、現地のスタンダードだった

施設等関連情報

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

望月 俊典 千葉県九十九里町生まれ。雑誌『Rod and Reel』副編集長を経て、フリーランスの編集/ライターとなる。海外の秘境釣行も大好きで、『世界の怪魚釣りマガジン』の立ち上げ&制作を手掛けた。現在は、琵琶湖事務所で仕事や釣りにいそしむ。著作は『バスルアー図鑑』(つり人社)。ちなみに、学生時代に、ネッシー(といわれているであろう現象)を目撃&撮影したことがある。

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