春を満喫する毎年恒例、伊豆の耐久釣りの旅!
3月に解禁を迎えた狩野川水系のアマゴ。尺(約30cm)越えを狙えることで知られる東伊豆のメバル。どちらも雑誌の表紙を飾る春を代表する釣り物だ。それを一度に楽しもうという贅沢釣行は、「折角伊豆まで来て、一つの釣りでは帰れない!」という貧乏根性から始まり、数年来継続中の私の恒例行事だ。
新型コロナ渦の間も単独釣行で有望なポイントを開拓、練り上げて来た太もも破壊必至の苦行プラン。開拓者本人の解説と共に1度体験すれば、甘い言葉に誘われた若手の経験値が爆上がりすること間違いなし!?である。
このプランに適するタイミングは、渓流解禁日からなるべく近い、日没後に満潮を迎える週末。今年の決行日は夜7時半時頃に満潮となる大潮後の中潮回り、3月11日(土)とした。金曜日深夜に若者をピックアップして都内を出発。東名高速を沼津ICで降り、伊豆縦貫道の終点・月ヶ瀬ICを経て狩野川上流部へ凡そ2時間30分で到着。
いよいよ今シーズン初の渓流、若者にとっては人生初の渓流
水温が低い早朝はルアーへの反応が少ないだろうと、ゆっくり8時近くまで仮眠、狩野川本流・嵯峨沢付近でスタートフィッシング。まだまだ魚の動きもスローな解禁直後、狙いどころは、「早過ぎず、遅過ぎず」、そして「深過ぎず、浅過ぎず」、そこそこゆったりした流れ。その中でルアーのトゥイッチを止めず、出来るだけ長時間ネチネチと通すため、フラット系のヘビーシンキングミノーをセレクト。あとは川を歩きまくり、チェイスを確認出来たら、同じようなポイントをひたすら打つだけである。
そんなレクチャーを入渓点でざっと終えたが、シーバス93cmという記録を持つZ世代のホープはすぐに要点を飲み込んでくれた為、「1匹釣ってもらう事」を優先、成魚放流が行われたはずの上流方向へ向かわせた。そして私は下流へ下ったが、2時間近くお互い何もなし。解禁の狩野川が甘くないことは長年の経験で身に染みているが、水量など条件的には申し分ないだけに、ちょっと焦ってしまう。
春の陽気と匂いに思考が段々緩やかになり、川の流れに脳が溶け込んでいくようなトリップ感が訪れ始めた頃、待望の重みがグラスロッドを曲げ、リールを巻く手が止められた!20cmに満たないが、今季初、そして先輩の面目を保つヒレピンの綺麗なアマゴだった。撮影しようとスマホを見たが、まだ後輩からのヒット連絡は届いていない。「これは“先輩力”を見せつけるチャンス!」と、画像を送ったが、僅か5分後、一回り大きい美形アマゴが梅ちゃんから突き付けられ、一瞬でマウントを取り返されてしまった…。
消えた放流魚。銘菓で英気を養い、入渓困難ポイントで迎えた夕マヅメ
2人でかなりの距離を探ったものの、分かり易く魚が溜まっていたのは1カ所だけだった。そこで、草餅が名物だという『明徳観光』さんに休憩のために立ち寄った。ご主人によると、「この辺りは放流も入るけど、すぐに川鵜が食べちゃうんだよ」とのこと。解禁から10日、放流魚頼みはもう厳しいとは思っていたが、これで警戒心たっぷりの“越冬アマゴ”だけを狙う決心がつき、入渓に気合が必要なポイントを求めてさらに上流へ。足をガクガクにしながら日没まで頑張ったものの、結局、梅ちゃんは1匹。私は3匹で終了。先輩としては「もう1匹」は釣らせてあげたかったが、人生初アマゴの美しさに大層感動してくれていたので「良し」とした。
もう一つの“本命”極太“尺メバル”を求め、大御所アングラー伝来・東伊豆の難関ポイントへ
2人で共にアマゴのご尊顔を拝することが叶い、満足感に浸ったのも束の間。粘り過ぎた為、夜7時半の満潮時刻が目前に迫る。急いでメバル用のタックルをセッティングして取る物も取り敢えず伊豆スカイライン経由で熱海方面へ向かった。そして到着したのは、密集した巨岩に波が打ち付ける迫力満点のゴロタ浜。浜というよりほぼ磯である。
ここは『釣りビジョン』黎明期に「西湘の巨匠・村越正海氏」から伝わり、制作部内で代々伝承されてきたポイント。一瞥すれば上級者向けと瞬時に分かり、波が高ければ入れない。そして数は出ないが、出ればデカイ。この場所での私のメバル記録は28cm。これを超えることを目指してキャストを始めると、すぐにフグの猛攻が始まった。数投で短くなるワームに焦らず、大型魚がベイトを捕食するギラつきが見えた場所を狙ってキャストしていくと、ロッドを抑え込む待望のアタリ!合わせと同時にドラグを強めにセットしたにも拘らずどんどんラインが引きずり出される。「まさか40cm級か!?ギガメバルか!?」などと焦ったが、暫くすると激しいエラ洗い。ヒラスズキだ。目測では60~70cm。どうにか波打ち際まで寄せたが、濡れた大岩は非常に滑るため近づけず、岩を乗り越えさせられるほどの波も来ない。懊悩の挙句、数度目のエラ洗いで無念のお別れとなった。
天を仰いで脱力する私を横目に、俄然テンションが上がるシーバスアングラー梅ちゃん。キャストに一層気合が漲るが、次もドラグ音を響かせたのは私だった。そしてなんと、その次も、その次も、そのまた次も私である。
終わってみれば“尺越え”2匹を含む大型メバルが6匹!
ヒラスズキの後も変わらずフグの邪魔は入るが、合間に重量感たっぷりの大型メバルのアタリがコンスタントに続く。アタリがあればロッドを立ててゴリ巻きで寄せ、波を使って岩を乗り越え、足元から抜き上げる。なんと32cm!!念願の“尺メバル”も釣れ、すっかり余裕モードの私とは対照的に梅ちゃんにはフグのアタリ以外訪れない…。釣れた場所を譲り、リグを渡し、最後にはタックルまで交換したがダメ。午前中のアマゴ以来、魚に恵まれていない梅ちゃんのエネルギーは潮止まりを前に限界を迎え、納竿となった。
帰りの車中、
梅:「なんでなんすか…、一体何が違うんや…。」
私:「うーん、“社歴”かな…。」
悔しがる後輩に先輩の余裕でうそぶいたようだが、実は本心。私自身も、先輩たちとの釣行で同じ悔しさを何度となく味わい、その度に考えとタックルを改めながら上達して来た。次世代に昔の自分と同じ気持ちを体験させられたことで、「自分も成長しているなぁ」という満足半分、もう少し釣らせてあげたかった申し訳なさ半分の春の旅だった。
まだまだベストシーズンが続く伊豆半島のアマゴ&メバル!ストイックに釣り続けるも、途中で温泉や観光を挟むも貴方次第だ。
■本記事で紹介した釣りに関連する番組は、『釣りビジョンVOD』でいつでも視聴可能
・『トラウトギャラリー 名手が魅せる夏ヤマメ攻略術』
梅ちゃんが美麗アマゴを釣り上げた「アレキサンドラ43HW」の開発者、飯田重祐さんの東北釣行
・『J LAND 8漁港でリベンジ大爆釣と初夏の渓流、大人の休日!』
筆者が3匹のアマゴを釣った「TIMON・トリコロール舞45S」を水野浩聡さんが実釣解説
・『SALT X NO.7 静岡県伊豆半島 ライトロックフィッシュゲーム』
伊豆半島の尺メバルゲームを、静岡の名手・新保明弘さんが詳しく解説
・『正海流シーバスフィッシングのすべて ヒラスズキ編』
ソルトルアー界の巨匠・村越正海さんがヒラスズキの極意を紹介するDVD作品も視聴可能
※視聴には釣りビジョン倶楽部(VOD)へのお試し登録が必要になります。
※14日間無料体験できますので、お気軽にご登録ください。
是非、記事と併せて番組もお楽しみください。
施設等情報
〒410-2323 静岡県伊豆の国市大仁901
TEL:0558-72-5945
年券6,600円 日釣り券1,200円(女性半額600円)(現場売り+500円)
※2023年3月1日から9月30日まで 狩野川漁業協同組合ホームページ
施設等関連情報
※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。