世界最高のターゲット「ピーコックバス」を南米まで行かずに釣れる意外に近い国は?【世界怪魚図鑑21】

前回の世界怪魚図鑑で紹介した最大種のピーコックバス、トクナレ・アスー。分類的にはキクラ属と呼ばれ、現在は全部で15種類に分類されている。今回は語り部(←筆者)が実際に釣った9種(+1)を中心に紹介していこう。

コラム

アジアでチープにオーパ!できる、ピーコックバスの仲間たち

世界最高のゲームフィッシュ、その仲間は地球の裏側まで行かずとも、割と近くの国で釣ることができる。

語り部が初めてピーコックバスを釣ったのは…2009年、マレーシアだった。その昔、スズを採掘していた砂利穴に雨水が溜まり、現在は無数の野池群を形成しているエリアがある。いつしかそこにピーコックバスが入り込んで野生化し、一部の好事家にはアジアでピーコックバスが釣れる…と知られていたのだ。(ピーコックバスが入り込んだ理由は洪水で養殖池から逃げ出した…など諸説がある)

そのときは知人に現地ガイドを紹介してもらい、非常にリーズナブルにオーパ!な世界を楽しむことができた。

池にボートを出して、2~3箇所目のポイント。水中の馬の背めがけてルドラ(O.S.P)を超速巻きしたところ、ガツン!と今までにないような明確すぎるバイトが出た。ロッドが折られるのではないか…という引きに恐怖さえ感じつつ…上がってきたのは53cmのナイスサイズ…だが、あの引きの強さでこのサイズなのか…という驚きがあった。なお、フックは3本掛かっていたが、そのすべてが伸ばされていた。

感覚的に、引きの強さはラージマウスバスの2倍以上。そして、「乾季の花火」と称賛された、水面でのバイトと激しいジャンプはアジアでも健在だった。
ちなみに、マレーシア以外に台湾やハワイなどでも釣ることができる様だ。

「キクラ・オセラリス(学名:Cichla ocellaris)」? 本来はアマゾン北部に分布する。マレーシアにて語り部が初めて釣ったピーコックバス。このときはフックもバス用のままで次々と伸ばされ、バラしが多発した…。一般的に東南アジアのピーコックバスは「オセラリス」だとされているので、ここでもあえてそうした。しかし、グランデ小川さんによるとオセラリスは「3番目のバーが眼球状になる」という特徴がある…のだが、マレーシアのピーコックバスはそれに該当しない。もしかしたらモノクルスという種かもしれない?
翌2010年、再びマレーシアへ。こちらは大きいポップR(レーベル)で釣れた57cmの大物。頭がデカい!

南米各地で釣った個性豊かなピーコックバスたち

ピーコックバス。南米のアマゾン河水系などに生息する。ブラックバスに似ているし名前にバスもつくが、サンフィッシュ科ではなく、シクリッド科の魚である。分類上はバスよりもベラに近い。全部で15種に分類されるが、そのどれもが尾ビレの付け根に白く縁取られた眼球状の斑紋を持つ。魚食性が強く、速い動きのプラグに強く反応する。逆に、ゆっくり動くワームなどへの関心は鈍い。

語り部は現在までに5度南米へ行き、アマゾンでも何度か釣りをした。前回のトクナレ・アスー(キクラ・テメンシス)以外にもご当地ピーコックバスを嫌というほどたくさん釣った(気がする)。

また、サンパウロ州郊外に住むブラジルの釣りプロ・ジュニーニョのご自宅になぜか5日間ほどお世話になり、毎日釣りに連れて行ってもらった。カヤックで野池巡りをして、何種類かのピーコックバスを釣ることもできた。

思い出の写真とともに紹介していこう。

「キクラ・メラニアエ」。アマゾン南部、シングー川などに生息する。縦7本ほどの不明瞭なバーが入り、粒状の細かい斑紋が散りばめられている。2014年、グランデ小川さんのガイドツアーで釣らせてもらった
「キクラ・ミリアナエ」。アマゾン南部、タパジョス川水系に生息。やや不明瞭な縦の3本のバーと、側線上に粒状のバーが入る。ピーコックバスのなかでは中型の部類だが、非常に引きが強かった。テレスピレス川の漁師・バドと一緒にたくさん釣った
「キクラ・ピニーマ」。アマゾン南部、タパジョス川水系などに生息。縦に3本のバーが入り、3つ目は眼球状の斑紋になる。語り部は、ジュルエナ川とテレスピレス川が合流するあたりでバカスカ釣った。比較的大型化するらしい
「キクラ・モノクルス」。アマゾン河上流部から下流部までかなり広く分布。縦に3本の太いバーが入り、胸ビレの後ろに黒い斑紋がある。写真はサンパウロ州の野池にてカヤックフィッシングでキャッチした
「キクラ・ケルベリ」。背中から太い3本のバー、尾ビレの下半分、胸ビレ、尻ビレのマダラ模様が特徴。比較的小型だが、コイツはなかなかの大物。ネグロ川で知り合った富豪(牧場主)の庭にある池で釣らせてもらった。決して子供が釣った魚を強奪したわけではない
「キクラ・ピキティ」。アマゾン南部のアラグアイア川水系などに生息。縦に7本ほどのバーが入り、各ヒレが青くなる。ブラジルでは「アズー」という愛称で知られる
「キクラ・オリノセンシス」。オリノコ河水系、ネグロ川などに分布。側線上に3つの眼球型の斑紋がある。小型種だが、今まで食べたピーコックバスのなかではコイツが一番うまかった。写真の魚はコロンビアで釣獲。ここの魚は水の色のせいか全体に青味が強い
「キクラ・テメンシス」。前回紹介したアスー。こちらはベネズエラのカシキアレで釣った。ネグロ川やオリノコ河水系に生息。縦の3本のバーが特徴。特に大型化する
同じく、キクラ・テメンシス。いわゆる「パッカ(パカという哺乳類の模様に由来)」模様だが、コロンビアで釣った個体は写真のようにグレーの地色にはっきりと白い横縞の波線が入った変わり種
「キクラ・インテルメディア」。オリノコ河水系などに生息。側面に縦の7本ほどのバーが入り、真ん中部分が横一文字に濃くなっている。止水よりも流れの中を好むとされる。写真は『世界の怪魚釣りマガジン』の取材で行ったコロンビアで小塚拓矢さんが釣った1匹。胸ビレのオレンジも非常に鮮やか
新種の「トクナレ・ブラック」…ではなく、サンパウロ州の野池で釣れたケルベリ。なぜか全身真っ黒だった

施設等関連情報

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

望月 俊典 千葉県九十九里町生まれ。雑誌『Rod and Reel』副編集長を経て、フリーランスの編集/ライターとなる。海外の秘境釣行も大好きで、『世界の怪魚釣りマガジン』の立ち上げ&制作を手掛けた。現在は、琵琶湖事務所で仕事や釣りにいそしむ。著作は『バスルアー図鑑』(つり人社)。ちなみに、学生時代に、ネッシー(といわれているであろう現象)を目撃&撮影したことがある。

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