見た目はアレだが美味すぎる【怪魚料理ベスト3】!「ピラニアの出汁がいい仕事をしている(筆者)」

これまで各大陸の奥地を旅して、さまざまな怪魚(淡水魚)を食べてきた、この哀れな語り部(←筆者のことです)。怪物のような見た目だけど食べてみたら美味かった…そんな意外性のある美味系怪魚をランキングしてみた。

その他

第3位 ピラニア

もしかしたら一般的には日本一有名な怪魚かもしれないピラニア。昭和時代の娯楽映画やエンタメ系ドキュメント番組の影響で「人間を集団で襲い、たちまち白骨にしてしまう人喰い魚」…というような恐ろしいイメージをいまだに持っている人も多いかもしれない。実際は人に噛みつくことなど非常に稀で、臆病な魚である。

アマゾンで漁師と一緒に何日かキャンプを張って釣りをするような場合、基本的に冷蔵庫などないので、釣った魚が我々の食糧である。ピラニアは数が多く、とにかく簡単に釣ることができるので…ある意味、奥地での主菜となる。

これが、食ってみるとなかなか美味いのだ。

塩焼きやバター焼きもうまいが、とくにイケるのがスープ。内臓を抜いて、ふたつくらいにブツ切りにしたピラニアをタマネギやトマトなどの野菜とごった煮にする。すると、海の高級魚顔負けの出汁が出て、これがうまい。身の味はやや淡白だが臭みもなく、タイのような味わいがある。若干小骨があるものの、気になるレベルではない。

大きなブラックピラニア。これくらいのサイズになると数人分のスープを賄える。 ©望月俊典
ニンジン、タマネギ、トマトと煮た、ピラニア入りのスープ。ピラニアの出汁がいい仕事をしている。 ©望月俊典

第2位 ピンタード

南米大陸の大ナマズ四天王(ピライーバ、ジャウー、ピララーラ、ピンタード…と勝手に認定)の一角。他の大ナマズがアマゾン河水系に生息するのに対し、ピンタードはラプラタ河やサンフランシスコ河水系に生息する。ドラードと生息域が被っているので、ドラード狙いのトローリングで釣られることがある。つまり、南米の大ナマズにしては珍しく、ルアーで釣れるのだ。

語り部がピンタードを食べたのは、その昔、パラグアイにドラード釣りに行ったとき。初めての南米旅で、パラナ河で地元漁師と一緒に釣りをしていた。その際、大変お世話になっていた宿のご主人(兼、シェフ)に厨房に入れてもらうと…そこには巨大なナマズが横たわっていた。これって、ピンタードだよね?

主人「そうだ、美味いぞ。食うか?」

二つ返事でステーキにしてもらい…実食。一見、魚には見えないが…食べてみると、臭みのない白身ながら脂が乗っていてジューシーな味わい。はっきり言って、同じ宿で食べた牛のステーキより美味いぞ。

また、数年後に同じ宿に再訪したときはピンタードのフライをいただいた。これも一般的な白身魚のフライ(タラ系)よりも旨みが濃いように思う。

横沢鉄平前編集長が若かりし日にパンタナル湿原で釣った120cmのピンタード(1994年、27歳だったそうな)。「ロッジでフィレ肉のフライにしてもらって、めっちゃ美味かった」とのこと。 ©横沢鉄平
宿のご主人がピンタードを捌いているところ。皮付きの半身からも、かなりの大型魚というのがわかると思う。 ©望月俊典
ピンタードのステーキ。艶々と脂が滴っている。ただ、味付けはシンプルでややワイルド過ぎた…ような気もしなくはない。 ©望月俊典
こちらはピンタードのフライ。空腹のあまり写真を撮る前にひと口かじってしまっている…。 ©望月俊典
ちなみに、語り部が初めて釣ったドラードはアサード(炭火焼き)にしてもらった。…が、ドラードはわざわざキープして食べなくてもいいかな…という食味だった。 ©望月俊典

第1位 ムベンガ

1位はアフリカ大陸の恐竜魚、ムベンガ。口に並んだティラノサウルス顔負けの牙、らんらんと光る無慈悲な眼、巨大な体躯…この魚が怪魚の帝王というのも納得だと思う。

我々はコンゴ河流域にある僻地の村を拠点にムベンガを狙った。ここも当然電気などないので…釣った魚が日々の糧になった。運よく、ムベンガが釣れた日はこれを筒切りにして村へと持ち帰り…村人たちと分け合って食べたものだ。

村では食材や調味料がほとんど手に入らないため、残念ながら工夫を凝らした調理はできなかった(そもそもそんな体力的、精神的余裕もなかったが)。仕方なく、ムベンガの身を木の枝で串刺しにして塩を振り、焚き火で炙って食べたのだが…これがなかなかイケている。身は柔らかく、やや水っぽさはあるものの、しっかりと脂が乗って、美味い。ノドグロをだいぶ大味にしたような感じといえばいいだろうか? また、ほのかに燻製のような香りがするのはカラシン目の特徴かもしれない。

十分な調味料と器具さえあれば…という期待を込めてこの順位にしたい。

怪魚界広しといえども、この迫力に勝る顔を持つ魚はいまい。 ©望月俊典
釣ったその場でボートマンに解体されていく。現場で燻製にしてしまうこともあった。 ©望月俊典
ムベンガの卵。これも村へ持ち帰ったが、村ではいつの間にか消えてしまう…。 ©望月俊典
小型のムベンガに木の枝を刺し、焚き火で炙ってみた。ポタポタと脂が焚き火に滴り、旨そうな煙が立ち上がる。 ©望月俊典

施設等関連情報

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

望月 俊典 千葉県九十九里町生まれ。雑誌『Rod and Reel』副編集長を経て、フリーランスの編集/ライターとなる。海外の秘境釣行も大好きで、『世界の怪魚釣りマガジン』の立ち上げ&制作を手掛けた。現在は、琵琶湖事務所で仕事や釣りにいそしむ。著作は『バスルアー図鑑』(つり人社)。ちなみに、学生時代に、ネッシー(といわれているであろう現象)を目撃&撮影したことがある。

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