2025年06月27日公開

季節を感じる釣りのひとつに、ノッコミマダイがある。全国でも早々にノッコミが始まるといわれている鹿児島県・錦江湾(2月)に始まり、少しずつ北上。そして全国的に見て、遅いと言われているのがむつ湾(6月)である。そんなむつ湾では、〝のし釣り〟と呼ばれる独特な釣り方が人気を博している。「釣りビジョンVOD」で配信中の『なるほど!沖釣りマスター』では、ひとつテンヤマダイのエキスパート、折本隆由・鈴木新太郎の2人が、〝のし釣り〟に挑み、すご技を披露している。その時の模様を、彼らの〝なるほどネタ〟と共に振り返ってみる。
むつ湾のご当地釣法〝のし釣り〟
むつ湾の北東部に位置する鶏沢(にわとりざわ)漁港。〝のし〟とは、ホタテの養殖用に張られたロープのことで、この長いロープを中層に張り、ホタテの養殖がおこなわれる。この〝のし〟に船を固定。その際、ロープを引き上げることで、ロープに括り付けた貝から落ちる付着物に集まってくるマダイを狙うご当地釣法が〝のし釣り〟である。
船を固定してマダイを狙うスタイルは全国に幾つか存在するが、むつ湾以外はアンカーを打ってのかかり釣りとなるため、ロープの長さの分だけ風の影響を受けることになる。しかし〝のし釣り〟は、完全に船を固定したまま、ひとつテンヤで狙うため、クロダイのかかり釣りや、磯釣りのような世界観がある。
その特徴のひとつが、3.5gという極小のテンヤだ。重くても5g、人によってはオフセットフックだけのノーシンカーで釣ることもあるという。タナも浅く、海面から10m以内でフォールバイトが出ることもざらだとか。ひとつテンヤマダイとしては最も繊細な釣りといえる。
もうひとつの特徴が、エサのエビにボイルと生が用意されていること。冷凍の生エビが主流だが、食用にボイルされたエビは崩れにくく、エサ持ちが良いことで使用されている。問題はボイルでも喰うのか?という点だが、生エビと比べてもマダイの喰いは遜色ないという。
1投目から連続ヒットでマダイ祭り!
水深31m。船長の投入合図があり、撮影を始めようとしていた時、大ドモで激しいドラグ音が響いた。「1投目、フォールで喰いました」、と快心のヒット。難なく取り込まれた本命は2kgオーバーの良型。エサはボイルのようだ。たまらず折本マスター、鈴木マスターが投入するとまたもやトモ寄りの2人が同時ヒット。続いて、鈴木マスターがフッキング。
鈴木「けっこう上でしたね。浅いからすごく引く。こんな釣りは〝のし釣り〟でしかできないよね。」
上がって来たのは2kgクラスの良型で、少しキャストしてから10mほど送り込んだあたりでラインが走ったという。
鈴木「喰いダナは水深5~10mの間で相当上の方。これがどう変わっていくのかですね。もう一度同じ釣り方をしてみます。」
すると、次の投入でもヒット。今度は3kgオーバーの大型である。続いて、折本マスターも1kgクラスをキャッチ。やはり、海面から5m付近でアタリが出るようだ。朝イチの船上はまさにマダイ祭りである。しかし、祭りは長続きすることはなく、アタリが遠くなっていく。本当の腕の見せ所はここからである。そんな状況で飛び出したのが鈴木マスターのなるほどネタである。
なるほどネタ1【潮と風の向きを読む】
「流れが読めればいけそうな気がして来ましたよ」。潮上にキャストして、横に広く、縦に広く。軽いテンヤを潮に乗せ、道糸への風の抵抗を利用しながらじっくりと落とし込んで行く。すると明確なアタリが出て、フッキングが決まる。「ちょっと深くなったかも。」アタリのあった水深は、10mを過ぎたあたり。してやったりの3枚目は1.5kgといったサイズ。「〝のし釣り〟の場合は、船ではなく潮が流れているので、潮と風の向きを読むことがキモです。」横と縦に広く狙うことで超スローフォールを演出する。風の抵抗を利用して、フォールスピードを調整するというのだから、かなりテクニカルな釣りといえる。
巻きあげによるリアクションバイトの可能性
時合が終わり、船内のアタリはポツリポツリといった状況の中、中層を巻きで狙った折本マスターにヒット。「たまたま巻いてみたら喰いました」と笑ったが、鈴木マスターのスローフォールに加えて、さらに落とし込んでからの〝巻き〟でのヒットに可能性も広がった。ここで折本マスターからなるほどネタが飛び出す。
なるほどネタ2【ボイルエビは、まっすぐになる様に適度にカットする】
朝イチの時合にやや出遅れた折本マスターだったが、アタリを出せなかった理由があった。「ボイルエビを曲がったままハリにセットしていました。」これでいいのか?と半信半疑ながら1匹丸々使っている間はスパイラルフォールしてしまい、アタリが出せなかった。そこで、ボイルエビが真っすぐになるように尻尾をカットしたら、アタリが出るようになったという。「重大なミスを犯していました。」と折本。エサが回転しないよう、真っすぐ付けるというのは基本だが、ボイルエビをエサに用いること自体がひとつテンヤでは全国的に見ても珍しい。その衝撃的ともいえるエサを目の前に、悩んでしまうのも頷ける。エサの付け方も事前に船長や常連さんに確認しておきたい。
ラインでアタリを取る
前述の通り〝のし釣り〟は完全に船が固定されている為、キャストして道糸に角度がつく場面が多い。すると、道糸と海面の接点が少し遠くなるのだが、波風があると糸の動きが分かりづらくなる。その状況で糸の動きを明確にするために、鈴木マスターが披露したなるほどネタがこちら。
なるほどネタ3【道糸でアタリを取る場合は、足元の海面に多めに道糸を置く】
キャストしたテンヤの着水点が遠くても、足元に糸ふけを作って漂わせる事で道糸の動きが明確になる。「風が強く波が高い時は、これが最もアタリを取りやすい方法です」。船が揺れている時ほど、道糸を張って竿先に集中してしまうが、足元に糸ふけを作れば道糸の動きを明確に捉えることができる。3.5gの極小テンヤをメインに使う〝のし釣り〟において、フォールバイトを取ることは最重要課題だ。覚えておいて損はないだろう。
【動画】動画だからわかる、〝のし釣り〟の魅力!
最盛期は今!
この時の取材は2024年6月12日。ノッコミが始まるかどうか?そんなタイミングであったが、期待通りの釣果を携えての沖上がりとなった。今年はまさに今からがチャンス。番組内で紹介している朝イチのチャンスタイムを逃さない立ち回りや、陽が昇って活性が下がってからの実践的なアプローチやテクニックを確認して、今シーズンに挑んで欲しい。
この記事を書いたライター
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