釣り人も利用できる無料駐車場!
関東の人が芦ヶ久保と聞いて思い浮かべるは、冬期にライトアップする「氷柱」ではないだろうか。その氷柱見学の際に芦ヶ久保橋で渡るのが、芦ヶ久保川だ。一帯は横瀬町の観光地。同橋すぐ上流に架かる果樹公園橋を渡ると、道の駅『果樹公園あしがくぼ』も営業している。
日釣り券(入漁券)を両橋の中間付近、国道299号線に面した『町営観光案内所』で購入する。料金は1,800円。カウンターにキャッシュレス決済可の案内。便利になったものだと、スマホを操作して支払いを済ませた。女性スタッフに釣り人の状況を尋ねると、「大勢の人が来ていますよ」。時刻は午前9時半。出遅れた感だが、今日は解禁日である。ゆっくり楽しくやろうと気を落ち着かせ、芦ヶ久保橋の左岸袂の道の駅第二駐車場に車を置き、支度を整える。この駐車場は、釣り人へも無料開放されている。さすが、観光にも力点を置く自治体と感心する。が、反面、河川近接の施設のため、ヤマメを狙う釣り人の一挙手一投足が目の前で繰り広げられていて、着替えの最中、気になって気になって仕方がない。
C&R区間無反応も楽しき谷歩き
この日の釣り場は、所管の秩父漁協が設定している芦ヶ久保川C&R(キャッチアンドリリース)区間。最下流の秩父用水路取水口まで国道299号線を歩いて下り、そこから区間の上流端となる観光案内所付近までの約1kmを釣り上がる計画だ。事前の漁協への問い合わせでは、区間へのヤマメについては、平成26、27年の区間開設から毎年、禁漁期に入った後、稚魚1,000匹を放流しているという。ヤマメは出るはずだ。
途中、歩道から釣り場を見下ろし、ルアーマン発見。情報収集に声をかけると、まさかの返答。なんでも、魚が見えず、アタリもないという。不安になったが、取り敢えず林間を抜けて河原へと下りる。反応が悪いということなので、ヤマメは水面に姿を現さず、水底深くにじっとしているのだろうと推測し、ヘッド部分にビーズを付けた水中に沈む毛バリで遡行を開始した。遡るにつれ、春の陽光が強さを増してくる。気温が上昇し、小さな虫も飛翔しはじめた。
浮かぶ毛バリに交換し、再び釣り上がる。ここぞというポイントに毛バリを投げても、ヤマメからのアタリは一向にない。河原に腰を下ろして、用意してきたポットの紅茶を飲む。吹き抜けてくる風が汗ばんだ体に心地よい。対岸の水辺でネコヤナギの花穂が風に揺れ、後背の林からは名前も分からぬ野鳥の鳴き声が聞こえてくる。朝からの、逸った気持ちがだんだん鎮静化してくる。初春の最初の谷歩きだもの、不平不満も言うまいと誓った。
釣り残った良型が次々に!
C&R区間を抜け、道の駅第二駐車場の前へ。川幅7、8mで、水深はひざ下程度の流れのこの場所には朝5、6人の餌釣りの人たちがいたが、正午過ぎの今は誰もいない。皆さん、解禁日に備え成魚放流されたヤマメを早朝から狙っていたのだ。
日当たりが良いので、ユスリカが盛んにハッチしている。水温を計測すると、10℃。風で波だった水面が収まると、良型のヤマメが尾ビレを左右に小刻みに動かしながら定位しているのが見える。喰い渋り、釣り残されたヤマメだろう。餌に見向きもしないが、「毛バリなら」と思い、14番の茶系毛バリをそのままキャスト。すると、ユラユラと近付いてきて躊躇することなく咥えた。ナチュラルに流れる毛バリに反応しないヤマメは、チョンチョンと誘うと追いかけ、対岸のコンクリート護岸下のえぐれに身を潜めているヤマメは、護岸すれすれに毛バリを落とすと瞬間的に飛び付いた。時間にして30分。5匹ヒットさせ、すべてリリースした。
今回、C&R区間は残念ながら釣果なしに終わったが、それ以外の区域では放流ヤマメだったものの、毛バリ釣りの醍醐味を味わうことが出来た。谷にヤマブキ、フジが咲き出したら、芦ヶ久保川の“里ヤマメ”たちは活気づき、さらに良き相手となってくれることだろう。
施設等情報
〒369-1801 埼玉県秩父市荒川久那4001-1
Tel:0494-22-0460
秩父漁業協同組合ホームページ
横瀬町ブコーさん観光案内所
〒368-0071 埼玉県秩父郡横瀬町大字芦ヶ久保159
Tel:0494-25-0450 横瀬町ブコーさん観光案内所
施設等関連情報
公共交通機関… 西武秩父線「芦ヶ久保駅」下車
車… 関越自動車道・花園IC方面からは国道140号線経由、秩父市「上野町」交差点で国道299号線へ。飯能・川越方面からは国道299号線を秩父方面へ。
※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。