東京都・養沢川『養沢毛鉤専用釣場』の“シニアデー”でヤマメ連発、ブラウントラウトも!

フライフィッシングなど“毛バリ釣り愛好家”の間で広く支持されている毛バリ専門のトラウト釣り場『養沢毛鉤専用釣場』(東京都あきるの市)。1995年開設の“老舗釣り場”は、60歳以上対象の「シニアデー」を設け、好評を博している。5月11日、テンカラ釣りに出掛けた。

釣堀
  • 東京都 養沢川・養沢毛鉤専用釣場

歴史と伝統の毛鉤専用釣り場

『養沢毛鉤専用釣場』は、秋川の支流・養沢川の自然河川を利用した施設。区間延長は4kmで、ニジマス、ヤマメを毛バリでのみ釣ることが出来る。エリア内ではヤマメのほか、ブラウントラウト、イワナなども“再生産”されているらしく、運がよければ放流魚とは別に“養沢生まれ”のこうした美しい魚たちとも対面できる。ニジマスとヤマメは定期放流されていて、魚影は濃い。運営は養沢地域の人たちで組織された『トーマス・ブレークモア記念社団』。養沢川でフライフィッシングを楽しむために河川を借り上げ、1955年に毛バリ専用釣り場として事業をスタートさせた米国人トーマス・ブレークモア氏(1915~1994)の名を冠した法人だ。当時、同氏はGHQに身を置き、訪れた養沢川の美しさに魅了され、同地での毛バリ専用釣り場開設に奔走した。管理事務所裏には同氏の業績を称える記念碑が設置されており、彼が養沢川へ来訪しなければ、国内毛バリ釣り場の先達である施設の誕生はなかったといってもいいだろう。

道路に面した管理事務所
薪ストーブ、ベンチなどが置かれた事務所内。コーヒーの無料サービスは、冷えた体に嬉しい
リーダーやティペットなどフライ用小物も販売され、釣り場で手持ちを使い切っても安心
玄関脇では地域で生産された季節の野菜なども販売されている

恩返しの“シニアデー”

釣り場のライセンスは1日券だけではなく、半日だけ釣りをしたいという人のために正午から日没までの午後券も用意されている。1日券で8匹、午後券で4匹まで魚を持ち帰ることが出来るが、多くの人たちはリリースを優先しているようだ。放流されているヤマメの中には、アブラビレを切ってある標識ヤマメが混じる。このヤマメを釣り上げると、ヤマメをデザインした記念バッジ(数量限定)がもらえる。さて、“シニアデー”とは毎月第2・第3水曜日に限り、60歳以上の1日券を3,000円に割り引く取り組みである。2019年にスタートした。60歳以上などに福祉サービスなどの施策を展開するのは行政の十八番だが、民間の施設、ましてや魚釣り場での高齢者福祉となると、事例はそう多くはない。法人の理事長である池谷さんにそのあたりを尋ねると、「今の60歳以上の方々が若い頃に養沢へ来られ、釣り場を支えてくれました。その恩返しという意味です」と即答頂いた。私も20代の頃、養沢にお世話になったが、利用頻度は低レベルだ。池谷さんの話を聞きながら、少し面映ゆい気持ちになったが、有難く受け付けでシニアである旨を伝え、入場バッジを受け取った。事務所には釣り場を見下ろせるテラスが併設されている。そこでフライマンが支度を整えていた。都内在住の男性で、年齢は喜寿。「毎月2回の“シニアデー”を利用するため、やって来ます」と笑顔で答えてくれた。熱烈なファンらしい。

手描きトラウトのイラストが可愛い入場バッジ
管理事務所下のプール
管理事務所すぐの上流風景

ブラウントラウトにヤマメ連発!

午前8時前。事務所近くの専用駐車場に車を置き、入渓地点と決めた海入道橋まで歩く。山々の青葉がまぶしい。毛バリは、ピーコックボディに茶系のハックルを薄く巻いた14番。最初の1匹は、橋直下の渕尻から朱点が美しいブラウントラウト。20cmに満たないが、釣り場内で世代交代している魚のようだ。幸先の良いスタートにニンマリ。養沢センターの上で落ち込みに毛バリを投入、すぐ下手の石周りでパシャリ。先ほどと同サイズのヤマメだ。その次は瀬尻でコツンと来たが、合わせ損なう。毛バリに触れてしまったので、もう出ないだろうと上流へ。フライマンがトロ場で粘っている。ライズしているのだろうか。気になる。暫くその場でポイントが空くのを待ったが、一向にその気配がないので、一旦、道路に上がって木和田平橋下流から再入渓。付近は小さな落ち込み、瀬が連続し、里川の雰囲気満点。いかにもいそうなポイントはスルーし、チャラ瀬や小場所を中心に狙って20cm級のヤマメを追加した。この間、10cmほどの2年魚と思われる小ヤマメが数匹釣れたが、釣り場ではこのサイズは放流していないので、“養沢生まれ”であることは明らかだ。健全な川の姿が実感でき嬉しくなる。ここまで、ヤマメのヒット率がニジマスを上回っている。毛バリは一貫して朝からのピーコックボディ14番だ。

正午近くになったので駐車場に戻り、管理事務所のテラスで腹ごしらえ。午後は、神谷橋袂に駐車し、道を100mほど下ったところから神社下近くまで探り、ヤマメとニジマスの引きを楽しんだ。途中、遠藤前上手の大岩が連なるポイントの渕尻には大・小のニジマスと良型のヤマメが複数定位していたが、何か小さな流下物を捕食しているのか、ヤマメは時々水面を割るものの、毛バリは無視。形態、カラーの異なる毛バリを何度か交換して試したがやはりダメ。「これが最後」と手持ちの最小サイズである16番の茶系をポトリと落としたら、毛バリめがけて急浮上。ところが、手元にガクッという衝撃が伝わっただけで、残念にもフッキングせず。やっと毛バリに飛びつかせた末の結果に、肩を落とす。頃合いと“シニアデー”の釣りを終えた。

シニアデー最初の1匹は養沢生まれのブラウントラウト
里川の雰囲気満点
美しい姿態のヤマメ
山岳渓流のような渓相も
ライズポイント。遡行は足音を立てずに
すれたニジマスは手強い
アプローチは設置された階段で
毛バリ専用釣場とポイント名を記した看板
養沢生まれのヤマメ
2年魚のヤマメ。こちらも天然
流れは長閑。ヤマメは足元に

増殖事業にも本腰

釣り場を運営する法人の理事会は、理事長含め5名で構成されており、すべて地元住民だ。養沢地区を5つのブロックに区分し、そこから各1名を理事として選出している。こうすることで、釣り場の上流から下流まで全てに目が行き届き、汚染や魚の異常、周辺の自然環境など河川の変化を即座にキャッチ出来るようになるからだ。理事会には流域住民から釣り場に対しての意見を聴くため、自治会員がオブザーバーとして名を連ねているという。今回の釣行では、10cmほどの2年魚のヤマメが複数釣れた。放流魚ではなく、釣り場内で誕生した養沢生まれだ。単に成魚放流したニジマスやヤマメを釣らせる釣り場ではなく、河川環境の整備、増殖事業にも配意する法人の姿を小さなヤマメを通して見た気がした。取材日、釣り場に入場した釣り人は通常の平日を大幅に上回る約50人。“シニアデー”は施設の安定経営にも大きく寄与している。

清冽な流れ
養沢地区の家並み。和む風景
管理事務所裏に設置されたトーマス・ブレークモア記念碑

施設等情報

養沢毛鉤専用釣場
〒190-0171 東京都あきる野市養沢103-1 
Tel:042-596-5108 養沢毛鉤専用釣場ホームページ

施設等関連情報

[放流魚]ヤマメ、ニジマス(天然のイワナ、ブラウン等も生息)
[釣法]フライフィッシング、テンカラ
[エリア全長]4km
[営業期間]3月1日~10月31日 (無休) ※ヤマメは9月30日まで
[営業時間]6:00~日没
[ライセンス料]▽一日券:大人4,500円、子供2,500円。持ち帰り8匹まで▽午後券:大人3,500円、子供1,500円。持ち帰り4匹まで
※シニアデー(60歳以上):3,000円(毎月第2、第3水曜日)持ち帰り8匹まで
※[レディースデー:3,000円(毎月第1金曜日)持ち帰り8匹まで
※このほか、冬季特別延長期間あり
※時間釣り料金などの詳細は公式ホームページを参照
公共交通機関:JR五日市線・武蔵五日市駅下車、上養沢行きバス「本須(もとす)」バス停下車、徒歩100m
車:圏央道・あきる野ICあるいは、日の出ICから20~30分。中央自動車道・八王子ICから約40分

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

小島 満也 元釣り雑誌記者。
和式毛バリ釣りを愛好し、居住地である埼玉県西部の渓流、清流が主なフィールド。年に数回、ヤマメ・イワナ狙いで長野や福島県の田園地帯の里川に出没する。
山岳渓流ではなく、民家脇を流れるようなのんびりした里川に目がない。渓流魚だけでなく、和式毛バリでオイカワやブラックバスも。故郷の川で釣りを覚えたので、釣りを終えるのは故郷の川と心に決めている。

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