苦手意識を克服しよう
マグナムクランクについては『買ってはみたものの、『いまいち出しどころがわからない』、あるいは『けっこう投げているけど一向に釣れない』といったお悩みを抱えた読者が少なくないだろう。ビッグベイトのようなリアルさもないし、ブリブリの強波動で魚が逃げてしまうのでは?とすら思えてしまう。そんな方々のために、オリキンこと折金一樹さんにコツをみっちり教えていただいてきました。とくに秋はマグナムクランクの有効性を最大限に引き出すことのできる季節なので、この機会にぜひともストロングゲームを堪能してほしい。
「マグナムクランクはビッグベイト的な要素もありますけど、僕の中ではクランクベイトの延長という考え方です。ネチネチ見せて誘うような使い方をすればビッグベイトっぽくもなりますけど、基本的には下手なトリックは必要ありません。直線的な動きと存在感を活かして、やる気のあるバスを手っ取り早く反応させられるのがマグナムクランクの強みです。出しどころとしては天気、水の色、水温といった状況が大きく変わる時や、バスが広範囲に散っている時期。そういう意味で秋はマグナムクランクが最も効果的なシーズンと言えます」
秋は台風で状況が一日で激変することもあれば、夜の冷え込みで水温が変わりやすくもある。また、ターンオーバーによる濁りも秋の象徴だ。10~11月はまだまだバスが餌を活発に追う季節でもあるので、マグナムクランクが活躍してくれるはずだ。今回の実釣ではタイプの異なる房総半島のリザーバー、亀山湖と高滝湖でその使い分けを教えていただいた。
大事なのは深度と角度と距離!
「おそらくですけどマグナムクランクで釣れないっていう人は、闇雲に投げまくっていることが多いんじゃないですかね?一番手っ取り早いのは、喰わせどころを絞って、正確に狙ってトレースすることです。もちろん、オープンウォーターであればディープクランク的に広範囲を探るような場面もありますけど、考え方としてはスピナーベイトに近いのかな。あとはそのルアーの潜行レンジと潜行角度とキャストの距離です。ディープダイビングタイプでも、そのリップの長さと急潜行を活かすなら水深2~3mで活躍することもありますからね」
パッケージに記載された潜行レンジはもちろん大事だけど、マグナムクランクを使いこなすには潜行角度を理解する必要がある。
オリキンが使用するのはブリッツマグナムシリーズ(O.S.P)のSR、MR、EX-DRの3タイプ。いずれもボディ全長90ミリではあるが、リップの長さと潜行角度が大きく異なる。
ブリッツマックスSR
●自重=40g
●最大潜行深度=4m
ブリッツマックスMR
●自重=45g
●最大潜行深度=4.5m
ブリッツマックスEX-DR
●自重=52g
●最大潜行深度=7~8m
※潜行深度はフロロカーボン16lbで、一般的な無理のないロングキャストによるオリキン調べの深度です
「バスがいるであろう目標物を定める」これが重要だ!
リーリングを開始するとすぐに頭を下げて急角度で泳ぎだすクランクベイトもあれば、巻き出しても水平に近い姿勢をキープしながら緩やかな角度で泳ぐクランクもある。これこそがオリキンの言う潜行角度だ。一概に言い切ることはできないが、傾向としてはリップの幅が狭く長いものほど急潜行型が多い。当然、リップが長いほど潜行深度は深くなる。一般的にレギュラーサイズのクランクベイトはシャローランナーなら1.5m前後まで、ミッドランナーは3m前後、ディープランナーが5~6mくらいが標準的なところだろう。ところがマグナムクランクはその大きさゆえに自重が重いこと、さらには水を受ける面積が大きいことから、レギュラーサイズのクランクベイトよりも深く潜るものが多い。例えばブリッツマグナムSRはシャローランナーではあるが、遠投すれば4mまで潜らせることができる。なので、SR、MR、DRはあくまでもマグナムクランクとしてのレンジシステムであることを頭に入れておこう。
ここからが重要なところ。まず前述したようにバスが居るであろう目標物を定める。例えば岸から水中に木が斜めに倒れるように水没しているなら、そのレイダウンのどのあたりの層にクランクをトレースするかイメージする。正確にキャストするのであれば、ディスタンスは遠すぎないほうがいいのは言わずもがな。仮にキャスト距離を10m、潜行するまでの助走距離を2mと見積もり、水深2mに当てるのであれば潜行角度の緩いSRでは潜行不足だ。かといって急潜行型のDRを通すと木の下に潜ってしまい一撃で根がかってしまう。とすれば、ちょうどいいのはMRになる。もっと深いのであれば助走距離を長めに設けることでSRでも目標物にかすめることができる。短いキャスト距離でも急潜行のDRを使えば3~4mにコンタクトさせることもできる。これがオリキンの言う、潜行レンジ、潜行角度、キャスト距離の関係なのだ。
オリキンが亀山湖の上流域で多投したのはブリッツマグナムSR。全体的に水深が浅く、さらには大雨後の濁りが発生したため、目標物にタイトに通すためだ。キャスト距離も長くて7~8m。ピッチングで入れることもあった。一方の高滝湖では沖の沈みものや橋脚、道路跡といったオープンウォーターでメインに使った。レンジも3~6mと亀山湖の上流域に比べると深いため、MRとDRの使用率が大半を占めた。
リーリングには全神経を集中させよ
クランクベイトに対し苦手意識が生じる理由のひとつは根掛かりだ。どんなに上手なプロでもクランクベイトを引っ掛けることはある。根掛かりを最小限に抑えるためには、前項で教えてもらった潜行角度とキャスト距離を合わせて適正レンジを通すこと。もうひとつの回避法はリーリングにある。
「基本的にマグナムクランクのリトリーブスピードは速すぎないことです。言葉で表すのは難しいですけど、クランクがギリギリ泳ぐ速度の倍くらいのイメージです。速巻きでも釣れないことはないですけど、障害物に当たった際に根掛かりのリスクが増えてしまいます。根掛かりを回避するには何かに当たった瞬間に止めることです」
この動作は頭に叩き込むよりも実践で体得するのが手っ取り早い。目標物に対し任意のレンジに到達するゾーンで『そろそろ当たる』とイメージしながら神経を集中させよう。また、障害物を回避した瞬間にバイトが多発するため、止めるのは一瞬でオーケーだ。
万が一根掛かってしまった場合でもルアーリトリーバーがあれば90%以上は回収できるので、こちらも常備しておきたい。
ロッドはフィールドに合わせて選択
オリキンが用意したロッドはシャロークランキング用とオープンウォーター用の2セット。マグナムクランクは抵抗が大きい部類なのでロッドもそれなりのパワーが不可欠だ。
「メーカーによっても違いますけど、パワーでいったらH~XHくらいは欲しいですね。キャストする時に適度に曲がるレギュラー気味のテーパーがいいと思います。ショートキャストでピンを狙っていく釣りであれば長さは7フィート弱がベストかな。逆にディープランナーをオープンウォーターで潜らせて使うようなときは短くても7フィートはあったほうがいいでしょうね。深く潜るというメリットを活かすにはキャスト距離も必要ですし、遠くで喰ってきたときのフッキングも長いほうがストロークを取れるので有利です」
巻き抵抗の大きいマグナムクランクはノーマルorローギアを選ぶ人も少なくないはず。けどオリキンはハイギアをメインに使う。その理由は「ローギアは巻くスピードも速くなるので障害物に当たった時に瞬時に止めにくいですよね。それとさっきも言ったように、マグナムクランクはストライクゾーンを想定して使うので、助走距離と回収を考えるとハイギアのほうが効率いいんです。スピードがあったほうが喰う魚もいるし、総合的に見るとハイギアのほうがいい」とのこと。
ローギアではルアーのスピードに限界があるが、ハイギアでスピードを遅くすることはできる。そう考えるとハイギアの方が便利なのかもしれない。
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