スクープ!DRT・白川友也の大発明 布ルアー”ファラオ”の正体!?

金属、木、プラスチック、発泡樹脂、ソフトプラスチック…と続いてきたルアー素材の歴史に新しいページが加わりそうだ。その大発明がDRTの肝入り試作ルアー、ファラオ。そのボディの素材とは…なんと、布。泳ぐ羽衣のような、完全に新しいビッグベイトを紹介しよう

バス

誰も思いつかなかった、完全に新しいルアー

長いルアーの歴史を誇るアメリカ人もさすがにこれは思いつかなかったようだ。樹脂製のコアが服を着たような布ベイト、その名もファラオ(PHARAOH)。

これを考えた発明家は誰かというと…現在最も勢いのある新興釣り具ブランド・DRT代表の白川友也さん、その人である。インスピレーションを得たきっかけは、鯉のぼりならぬ”バスのぼり”だったという。

白川「琵琶湖近くの釣具店で、鯉のぼりを模した『バスのぼり』を見たのがきっかけでした。これを泳がせたらどうなるのだろう?…って。そして、オモリを付けて投げたら、ちゃんと泳いだんです」

それを本気のルアーとして開発したのが白川さんのすごいところ。ただ、最初は布ではなく、プラスチックにその構造を落とし込んだ。それがボディ内部に水を取り込むというこれまた画期的な構造のジャイアントベイト、「フレンジー」だ。

白川「最初は布で作っても空気抵抗で飛ばないだろう、と思ったんですよ。でもフレンジーを経てわかったのですが、どこかに重心の塊を持っていればルアーとしてキャスティングできる。例えば雑巾を投げても飛ばないじゃないですか。でも、中に鉄球を入れれば飛ぶ。その考え方ですね」

浮力と重量のあるプラスチック製コアを自作し、同じコアを使って着せ替え人形のようにいろいろな魚の模様をプリントした服を着せることにした。なので、布を変えればサイズも形も模様も違う魚へと衣替えできるのである。そんなルアーは聞いたことがない。

ミシンでファラオを編む白川さん。まずは手芸店などを回って布探しから始めた。すでに30種類以上試したという
ライトビューアーで透過して正確に布を貼り合わせる。社長室の一角が完全にファラオ製作専用のブースになっていた

無限の可能性を感じるが…難問も多かった

白川「はじめはわりと小さくて、タイニークラッシュくらいでした。コアも半分くらいの大きさで、浮力を持たせようと思ったらせいぜい数十グラムにしかならず、あまり飛ばなかったんです。それでも魚の反応が見たくて、湖で投げたところ…いきなり魚の反応があった。それというのが今まで自分が使ってきたビッグベイトとは明らかに違う。距離感というか…魚のルアーへの詰め方が違うんです。これをなんとかものにしたいと思い、今に至ります」

最初は全長150mmくらいだった布ボディも、今は500mmくらいまで作っているという。着せ替え可能なのでいろいろなサイズを試しているのだ。布の種類は、初期はただの白い布、そこからメッシュ素材を経て、今はなにやら伸縮性のあるキラキラした生地を試しているらしい。

白川「昔でいう、ボディコンの生地です(※90年代前半のギャルが好んで着ていたボディラインがはっきり出る服)。キンキラの布に魚をプリントしています。まだ詳しくは言えないのですが、大きさに合った布の種類をいろいろと実験しているところです。スローな動きに向く布、速巻きに向く布がある。布の種類は諦めそうになるくらい無限にあって…諦めかけたころにまた手芸センターでいい布が見つかったりしてモチベーションが上がったり…その繰り返しですね」

内部のコアは浮力を持たせ、かつ飛距離が出せるよう、マグナムクランクベイトのようなサイズ、形をしている。初期はウェイトをボディ外部の任意の場所に固定して、飛行姿勢やスイミング姿勢を調整する方式だった。これはいける、という手応えがあったが、意外な問題が生じた。

白川「コアの突起物(ウェイトを固定するヒートンなど)が多いと着水の衝撃で布が破けちゃうんです。対策で布を硬くしても1日持たなかった。なおかつ、初期は背バリ仕様にしていたんですが、ガンガンバイトがあるようなときでも一向に掛からなかった。でも、背バリも捨て難いと思っていたんですよ。ボトムズル引きができますから。ただ、ボディが布である以上、ズル引きは無理だと気づきました。引っ掛かるし、腹側の布がすぐに破れてしまう」

上が初期のコア。背中の前後ヒートンはダブルフックを固定するため。腹部のヒートンはウェイトを固定するためのもの。しかし、こんなところに意外な落とし穴があった。なので、ウェイトをボディ内部に収納し、突起物をなくすことにした
初期の背バリ仕様。何度となくバイトはあったがまったく掛からなかったという
DRT社のテストプールでファラオを投げてもらった
最新モデルの泳ぎ。布ボディがヒラヒラと優雅に揺れ動き、まるで生きている魚皮のよう

バスの反応はとにかくすごいが…まだまだ発展途上

そういえば宮川大輔さんのYouTube動画を観ていたら、白川さんの操るファラオにビッグバスが水面で何度も激しいバイトをするスリリングな映像があった。

白川「あの喰い方をしてくれるとすごく楽なんですよ。あのとき、僕は釣る気はなかったんですが、宮川さんの釣りを見ながら目の前にあるクイを撃ちつつ、超デッドスローで巻いていたんです。その次のキャストで高速に切り替えてみると…あの状態になりました。とにかく集魚力がすごいんです」

とはいえ、そのときもフッキングに至らず。課題は明らかだが、無限の可能性も同時に感じる。

白川「4月からテストを始めて、リアルな話、50バイトはありました。でも、釣ったのはまだ1匹なんですよ。バイトの多くが甘噛みなんですが…普通のルアーでは甘噛みもしないで終わってる魚が甘噛みをしているんだと思います。例えば、春のタテストにサスペンドしたバス、あれを喰わせるのはすごく難しいんですが、それがあっさりバイトしたりとか。そういう自分でも体験したことがないことが何度も起こったので…まだまだいろいろ試していきますよ」

11月には、釣りビジョンマガジンで白川さんの実釣取材を予定。そこではさらに進化したファラオが見ることができるだろう。

わりと初期のファラオ。ここでは便宜上1stモデルとしよう。布は普通の布から水通しのいいメッシュに変更され、上バリ仕様である。しかし、布ボディが破れやすいという弱点があった
初期ファラオの発展形の2ndモデル。布ボディはメッシュ。ザップのヒッチフックを採用し、ボディ横部に配置された。なお、目はリアルになり、ボタンのような方法で固定している
(現時点において)中期のファラオ、3rdモデル。布は同じくメッシュだが、頭部から背中にかけてV字型の切れ目が入り、ボタンのようなシステムで留められている。フックはボディ横だが、PEラインで頭部に接続され、フッキング向上への試行錯誤が見られる
3rdモデルを上から。目をボタンにして固定するギミックが美しい
最新に近い、4thモデル。コアなどのシステムは3rdモデルとあまり変わらないように見えるが、布ボディがいわゆるボディコン素材になっている

おまけ…DRT、ボツワームの世界

栄光の陰に屍あり。ということで、ファラオの陰に隠れた(?)DRTのボツワームたちをいくつか紹介しよう。すごくもったいないような気もする…個性豊かなワームばかりだ。

「まあ、ボツというかまだ途中ですね」(白川)
「まんまフナです。ボツの理由? 抵抗が大きすぎてまったく飛ばない。最初の布ベイトみたいな感じですね。どこかをもっと重くすれば飛ぶんですけど、それだとアクションが…。ダウンショットリグとか使い所はあると思うんですけどねぇ」(白川)
「高比重系です。琵琶湖でカバースキャットのような釣りが一世風靡したじゃないですか。僕は触れるつもりはなかったんですけど、トーナメントシーンでは必要ということで…ウチでもやってみたんです。これも釣れるキモは押さえていると思いますし、実際、釣れます。やり方によっては1キャストで30分くらいジャークし続けていられるような、それくらい移動距離が短いです。出したら売れたかもしれませんが…あの釣りに関してはカバースキャットがあればいいんじゃないかな、と」(白川)
「これはカメですね。ちっちゃいカメ。子ガメって実際に喰われているらしいんですよ。それを試してみたかった。これはもうちょっと煮詰めたらいけるのかもしれませんけど、今の時点では狙ったアクションにはなっていない。本当はUFOみたいにその場で回転して欲しいんですよね…。まあ、ボツというか途中ですね、全体的に」(白川)
「これはオフセットフックで使えるワーミングバイブレーションです。バイブレーションでは攻められないところを攻められる。ただ、音やフラッシングや水の引っ掛け具合など、バイブレーションのいいところが全部失われている気がします(笑)。これもボツというわけではないんですが、まだまだですね。市販のオフセットフックもなかなか合うものがなく…」(白川)
「クランプシャッドのチビバージョンです。これはアラバマ系でいい魚が釣れていました。でも、アラバマ系なら他に優れているワームもあり、単純にそちらの方が釣れます。それならあまりやる意味ないかな、と。これでしか釣れないという場面がなかったので。いつもそこが製品化の基準ですね」(白川)

11月のマガジンページリニューアルで、タイニークラッシュの大プレゼントが!!

11月中に釣りビジョンマガジンはデザインを刷新して、大幅リニューアルする予定。それを祝して、白川さんが近年一番人気のビッグベイト、タイニークラッシュをプレゼント用に提供! 太っ腹です! プレゼント詳細は今月中に公開。ファラオの実釣取材と併せて楽しみに待っていてほしい。(毎日チェックすべき?)

11月の釣りビジョンマガジンリニューアルを祝して、超絶大人気のタイニークラッシュが読者プレゼントに! 詳細は今しばらくお待ちを。11月中に発表なので要チェック!(写真のモデルはプレゼント用ではありません)

施設等関連情報

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

望月 俊典 千葉県九十九里町生まれ。雑誌『Rod and Reel』副編集長を経て、フリーランスの編集/ライターとなる。海外の秘境釣行も大好きで、『世界の怪魚釣りマガジン』の立ち上げ&制作を手掛けた。現在は、琵琶湖事務所で仕事や釣りにいそしむ。著作は『バスルアー図鑑』(つり人社)。ちなみに、学生時代に、ネッシー(といわれているであろう現象)を目撃&撮影したことがある。

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