相模湖、電動VS手巻き、どっちが釣れるか選手権【ワカサギ】

ワカサギ釣りには様々なスタイルがあるが、最近は電動リールが幅を利かせている。しかも両手に1タックルずつ握って、バンバン釣りまくるという2刀流が主流だ。しかし、昭和生まれの自分としては、自分の手でリールを巻いて魚を釣りたい。それは、相手が小さなワカサギであってもだ。だから……というわけでもないけれど、俺は頑固に手巻きリールスタイルを貫いてきた(手繰りはやるけど)。そんな俺に電動リールとの決着をつける機会がやってきた。2023年1月9日、奇しくも2023年を占う初釣りの舞台で。(執筆:横沢鉄平)

淡水
  • 神奈川県 相模湖

根拠のない自信で電動に勝負を挑む

相模湖インターから一番近いボート店「柴田」で待っていたのは、都内の出版社で編集をやっている田沢。出会った頃は若手だったが、いつの間にかアングリングバスの編集長を任されるまでになった人物だ。とはいっても、ワカサギ歴ウン十年の俺が、まさかこの男に遅れを取ることはないだろう。
「田沢君、電動リール派かい?」
「え、鉄平さんは違うんですか?」
「俺は手巻き派だよ。今日は電動と手巻き、どっちが釣れるか勝負しようぜ」
「いいですね」
まあ、電動といっても巻くのが早いだけだ。
「ところでワカサギ釣りは人生何回目?」
「もう何冊もワカサギのムックを作っていますからね。かなりやっています」
 なぬ? ひょっとして君は本気でやっている人? その事実は、柴田の「ワカサギハウス」と呼ばれる桟橋ドームに入ったら、明白となった。すでに準備を終えていた田沢は、自分の釣り座の左右に専用の台を設置し、両手には市販の電動リールが! 正直言って、エキスパート並みの装備だ。勝負を挑んだのは、早まったかな?

この日は開始時刻が朝6時。桟橋の先端に見えるのが「ワカサギハウス」だまだ薄暗いので準備にヘッドランプが要るほどだ
田沢君はかつてロッド&リールを俺と一緒に作っていた戦友の一人。アングリングバスに移籍してからも、「ホサキング」などの仕事を回してくれた。その時はありがとう。今回も、文句を言わずに写真を撮ってくれた。ありがとう
田沢君はフル装備。両手に電動リールを持って、血も涙もなく効率を高めたスタイルだ
一方の俺は手巻きリールで電動に挑む。今シーズン買ったので調子はいいぞ

「忙しさを楽しむ」それがワカサギ釣りの神髄

装備面で田沢を上回っているのは魚探のみ。俺のガーミンはスタンダードな画面の他に、GPS機能もあるし等深線もサイドビューも表示できる。ただ、悲しいことにワカサギ釣りにはあまり関係ない機能ばかりだ。まあ画面だけはでかいので、アドバンテージがないわけではない。その魚探のスイッチを入れると、驚いた! 11mのボトムから水深7mくらいまでびっしりと魚が入っている。間違いなくワカサギだ。
田沢は、両手を休むことなく動かして、プロのたこ焼き屋さんのような手際の良さで、次から次へとワカサギを釣り上げ始めた。誘う、アタリを取る、合わせる、巻き上げる、ワカサギを外す、餌を変える、また投入する。これを両手別々でやるのだ。とにかく釣れているときのワカサギ釣りは忙しい。それをいかに手際よくさばいていくか……その「忙しさを楽しむ」のがワカサギ釣りの神髄だといってもいいだろう。
「年末も来たんですけど、こんなに釣れるのは朝のうちだけなんですよ」
 こいつ、年末にも来てるのか? 俺は竿1本なので、明らかに手返しが悪い。アタリが来たらリールをジージーと鳴らしつつ……待てよ? このワカサギハウス、15人くらい客が入っているけど、リールをジージー鳴らしているのは俺だけじゃん。電動リールのシェア、ハンパないな。

俺の魚探映像。11mボトムから7mまで、小魚の群れがびっしりだった。もちろんワカサギだ。
田沢は手返しよくワカサギを釣っていった。
俺も釣れないわけではないのだが……。

ドーム特有のトラブルは「靴下フッキング」

「あ、群れがいなくなったな」
魚探の画面が寂しくなった。ついに朝の時合いが終わったか?
この時点で、田沢63匹、俺は22匹。すでに敗色濃厚だ。
「田沢、俳優の別所哲也に似てるなあ。よく言われるだろ?」
「言われ……ますね、5年に1ぺんくらいですけど」
「5年かよ」
「しかも、5年前も鉄平さんに言われたような?」
そんな、他愛もない会話を楽しめるのもワカサギ釣りの醍醐味だ。
しかし、再び群れが来ると、忙しくて話をしている余裕はなくなる。
「今日はコンスタントに群れが来ますね! あれ、今めちゃくちゃ釣れてるのに、鉄平さんは釣りしないんですか?」
「ワカサギを外していたら、靴下にハリが刺さっちゃって、それが抜けないんだよ」
ドーム船では毎回これに悩まされる。この日は靴下に合計5回くらい針が刺さった。

魚探に何も映らなくなると、アタリも全くなくなる。そんな中でも、上手い人はぽつぽつと釣れていた。この差はどこにあるのだろう?
大きな群れが来ると、一荷釣りも珍しくなかった。
冬の釣りの場合は、スープジャーにアツアツのおでんを入れていくのが俺の定番だ。
俺にもたまには一荷釣りの幸運が!

天下分け目の戦いの結果は?

電動リールはすごい。巻き上げだけではなく、落とし込みも早い。しかも音もなく巻き上げるので、他人の釣れ具合がイマイチ分からない。手巻きは1匹1匹の引きや感触は楽しめるけれど、スピードが遅い。でも、この数の開き方は、リールの差だけではないような? 腕なのか? 俺より田沢のほうが上手いのか? そんなわけないだろう。
仕掛けもいろいろ試した。オモリも軽いのから重いのまで使った。最終的には田沢の持っている穂先まで借りて、自分の竿に付けたりもした。でも、何かが劇的に変わることはなかった。14時くらいから、ぽつりぽつりと人が減り、納竿時刻の15時まで釣りをしていたのは俺たちだけだった。
「俺は66匹だ。田沢は?」
「177匹です。200行かなかった~」
「負けたよ。やっぱり、電動リールの方がよく釣れるな」
「電動の差ですね」
田沢の顔はその表情だけで「腕の差もありますけどね」と、雄弁に語っていた。
この日、桟橋ドームでの最高は378匹。個室タイプでは500匹以上釣った人もいたようだ。上には上がいる。今年の相模湖はおおむね好調で、ワカサギの型もいい。家に帰ったら早速唐揚げにして、家族にも喜ばれた。もう、俺はというと、相模湖に行きたくて行きたくて、うずうずしている。悔しいけれど電動リール、買わなきゃあかんか?

上が田沢の電動タックルで、下が俺の手巻きタックル
柴田のワカサギハウスは、きれいだし広々としている。貸出品もあるし、お湯も沸かせる。
電動リール「177匹」対手巻きリール「66匹」。これはリールの差だけなのか?
今回は相模湖の老舗レンタルボート店「柴田」で楽しんだ。これが桟橋の全貌。バスやヘラブナでも有名だ。
ワカサギの唐揚げはめちゃくちゃ美味しかった! 相模湖のワカサギ、釣って楽しく、食べておいしいね!

施設等情報

■ボート店:相模湖・柴田
〒252-0183 神奈川県相模原市緑区吉野54 
TEL:070-3660-6363 相模湖・柴田ホームページ

施設等関連情報

■ワカサギ釣り料金
ワカサギハウス:4,000円
ワカサギ個室:12,000円(1室2名まで)
ワカサギ用和船:3500円(1名)1人増すごとに2000円プラス

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

横沢 鉄平 フリーライター。ライフワークはバスフィッシングだが、ワカサギから世界の怪魚まで、すべての釣りを愛する男。ロッド&リールの「三匹が行く」、ルアーマガジンの「ドラマチックハンター」など、長期連載企画での出演経験も多数。キャンプ用品の「ヨコザワテッパン」考案者でもある。
YouTubeチャンネル「ヨコテツ」も、ささやかに継続中だ。

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