大捕物劇のネタにされ続けた哀しきモンスターの名は?【世界怪魚図鑑17】

北米大陸を代表する巨大淡水魚といえば…この魚になるだろう。ワニのような長く伸びた平らなくちばし、ヨロイのようなウロコに覆われ、古代魚然とした鋼鉄のボディ。そして、しばしばテレビ番組でネタにもされる怪魚といえば…アリゲーターガーである(執筆:望月俊典)

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テレビに人喰いの汚名を着せられたヒール系外来怪魚

この哀れな語り部(←筆者のことです)は野生のアリゲーターガーを1度だけ見たことがある。もう大昔の2005年春、瀬戸内海に浮かぶ某島へ、釣り具メーカー・デプス社長の奥村和正さんと取材に行ったときのこと。島の小さな人造湖の一級ポイントに丸太のような巨大な魚が浮かんでいるではないか。よく見ると…なんとアリゲーターガー。奥村さんはなんとかカメラの前でその怪魚を仕留めようと、ビッグベイトやフロッグなどで攻略を試みるも…残念ながらヒットさせることは叶わなかった。

アリゲーターガー。信憑性の高い(らしい)記録では、体長304.8cm、体重104.4kgの個体がアメリカ・ミシシッピ州のミシシッピ河河口にて1953年に捕獲されたという。ただ、体長のわりに体重が軽すぎやしないか?…と思わないこともない。公式な記録で最大とされるのは、2011年2月14日にミシシッピ河の三日月湖で漁師に捕獲された、体長257.2cm、体重148kgの個体で、捕獲後に博物館に展示されているという。ちなみに、卵には毒がある。

原産地ではアリゲーターガーを専門に狙わせてくれるガイドがいて、彼らを頼れば誰でも巨大魚に対峙することができるだろう。コイのような魚をエサにして、ボートからのウキ釣りで狙う。エサを飲み込ませ、それでもリリースするために、極力錆びて朽ちやすいフックを使う、という特異なスタイルでも知られる。

さて。日本においてアリゲーターガーといえば、外来生物攘夷運動といいますか…その手のテレビ番組にセンセーショナルに利用され続けたヒール系怪魚という印象が(個人的には)ある。「巨大に成長し、ワニのような大きな口と鋭い歯でなんでも喰ってしまう。ヒトも襲う可能性も…」…といったようなお決まりの煽りから始まり…そこへ颯爽と現れた怪魚ハンターが死闘の末、カッコよく仕留めた…という昭和のエンタータイメント活劇のようなドキュメント番組がテレビで何度か放送されたと記憶している。

与えられた環境で生きていただけで人喰い外来魚の汚名を着せられ、お茶の間向け勧善懲悪劇の獲物にされた…哀しきモンスターではないか。

タイのアマゾンBKKという怪魚釣り堀にて、ガイドのジャクリットが釣ってみせてくれた中型のアリゲーターガー。このときはルアーで釣れた。ジャクリット的には臭くてあまり好きではないらしい。ここでもちょっと哀しい
アリゲーターガーとファイトするジャクリット。笑っているが…たぶんそれほどうれしくない
アマゾンBKK。アリゲーターガーだけでなく、ピラルク、ピララーラ、メコンオオナマズ、その他…と世界の巨大淡水魚が放たれた底なしの釣り堀。これはこれで楽しい

施設等関連情報

※料金等は取材当時のものとなります。料金の変更等がなされている場合がございますので、詳細につきましては各施設等にお問い合わせください。

この記事を書いたライター

望月 俊典 千葉県九十九里町生まれ。雑誌『Rod and Reel』副編集長を経て、フリーランスの編集/ライターとなる。海外の秘境釣行も大好きで、『世界の怪魚釣りマガジン』の立ち上げ&制作を手掛けた。現在は、琵琶湖事務所で仕事や釣りにいそしむ。著作は『バスルアー図鑑』(つり人社)。ちなみに、学生時代に、ネッシー(といわれているであろう現象)を目撃&撮影したことがある。

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