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イヌもハトも喰う、この巨大魚の名は?【世界怪魚図鑑01】

2022年12月06日公開

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ヨーロッパに数々残る怪魚伝説…。真犯人のほとんどがこの魚だと思われる。怪魚ファイルシリーズのトップを飾るのは、この哀れな語り部(←筆者のことです)の歴代最大釣魚でもある、ヨーロッパオオナマズだ。このシリーズは筆者が釣ったりした実体験に基づいて怪魚たちを紹介していく

ヨーロッパ人を恐怖に陥れた、水辺の怪物の正体

散歩中のダックスフントが水中に引きずり込まれたとか、捕えられたナマズの胃袋から行方不明の女の子の骨が出てきたとか…数多の水辺恐怖体験を欧州人に残してきたのが、このヨーロッパオオナマズだ。近年では水辺のハトを襲う様子もYouTubeで観たことがある。英語ではウェルズと呼ばれる。世界の淡水魚でもピラルクやメコンオオナマズと並んで最大級とされる、横綱の一角なのだ。

その最大サイズに関しては諸説ある。19世紀にベラルーシ~ウクライナを流れるドニエプル川で体長5m、体重400kgにもなる個体が見つかったとされるが、明確な証拠がなく、またその体長であればもっと重いはず、という疑惑の記録でもある。なお、Wikipediaではイタリアのポー川で見つかった2.78m、約144kgというのが信憑性の高い記録とされているが、まあ、Wikipediaに載っていることが世の中のすべてではない。3mを超える個体が明日釣り上げられてもなんの不思議もない、と、実体験からそう思う。

ヨーロッパオオナマズ捕獲の回想2016

さて。語り部がこの魚に接したのは6年前、2016年の秋だった。『世界の怪魚マガジン』の取材で怪魚ハンターの小塚拓矢さんとチェコを訪れ、世界的な怪魚ハンターであるヤコブ・ワグネルさんの案内で釣りをしたのだった。

ヤコブに連れて行かれたのは中型の沼。10月だったがもう水は冷たく、そして濁っていた。ウェーダーを履いて立ち込んで釣りをしたのだが「ブレイクには近づくな」とヤコブはいう。ハリにかかったオオナマズに引きずり込まれるからだ。

また、驚いたのが、水温が低い時期は餌よりもルアーがいいらしい。てっきり餌釣りだと思い込んでいたのだが、ヤコブにオオナマズルアー用のスピニングタックルを借りることになった。

ヤコブ「今のように水温が低い時期のウェルズは、目の前の獲物を直接喰うこともあるが、多くの場合は尻尾で一度叩いてくる。だから、尻尾にフッキングしてもアクシデントではないよ」

ルアーは大型ワームのジグヘッドリグ。それを遠投して、ボトムに着いたらリフト&フォールを交えたスイミングを繰り返す。すると、ヤコブがいうように大きな尾ビレで一撃を加えたような衝撃が手元に伝わり、その直後にズドンッ!と吸い込まれるようなアタリがくる。そこからファイト開始。引きは日本のナマズを巨人化させたようなそれで、ものすごい重さはあるものの、スピード感のある疾走やジャンプなど派手さはない。小学6年生が乗った自転車を釣っているくらいの感じである。寝技のような地味な格闘を15分もしていると、だんだんと巨体が寄ってきた。背中を出してゆらりゆらりと語り部の周りを泳ぐ様はまるでネス湖の怪物を釣り上げたかのようではないか。

語り部は確か2匹釣り上げたが、どちらも2m超えで、大きい方は2.4mもあった。この巨大な口なら…確かに幼児なら飲み込まれるかもしれない。ヒトを襲ったという逸話も多いが、「水辺で洗っていた手に噛みついた」…という巨大魚あるある話が多いのではないかと思う。

 
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この記事を書いたライター

望月 俊典
千葉県九十九里町生まれ。雑誌『Rod and Reel』副編集長を経て、フリーランスの編集/ライターとなる。海外の秘境釣行も大好きで、『世界の怪魚釣りマガジン』の立ち上げ&制作を手掛けた。現在は、琵琶湖事務所で仕事や釣りにいそしむ。著作は『バスルアー図鑑』(つり人社)。ちなみに、学生時代に、ネッシー(といわれているであろう現象)を目撃&撮影したことがある。
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