途方に暮れていると、この親子の3人くらい先の釣り人が帰り支度をし始めた。私がそのすぐ後ろに移動すると、その人がぼそっと言った。「いいよ、ここで釣りして」「ありがとうござます!」ついに、19時半から釣りを開始することができた。1時間近く待ったので、もう仕掛けの準備は万端。テンヤに冷凍キビナゴがしっかりと固定されているし、ケミホタルも発光済みだ。「釣れましたか?」と、釣り座を譲ってくれた人に聞くと、ため息まじりに応えてくれた。「全然釣れないよ」「何時から釣りしてるんですか?」「朝からずっとだよ」こりゃ、悪い日に来ちゃったな…と思いつつテンヤをキャスト。ジグヘッドリグのミドスト(ミッドストローリング:シェイクしながらリーリングする技)のイメージでシェイクしながら引いてみた。テンヤでタチウオを狙うのは初めてなので、イマイチやり方がわからない。そして3投目、無意識にミドストしていたら、ドスンと重くなった。「え?喰った?」結構引いてるぞ。この引きは、きっとタチウオだ。しかも、まあまあいいサイズ。抜きあげたら思ったよりでかい。私の極太の指で3本半。普通の人なら4本以上はあろうかというタチウオだった。あとで計ってみたら95cmあった。ドラゴンには程遠いけれど、岸からこのサイズが釣れるのはうれしい。場所を譲ってくれた人は、まだ片付け途中だったけれど、茫然としていた。なんだか、釣れちゃってごめんなさいという感じ。隣で釣りをしていた人はすぐに声をかけてきた。「いきなり釣れましたね! しかもいいサイズ。テンヤですか?」「キビナゴでテンヤです」ちょっと誇らしげに答えてしまった。テンヤで釣ったのは初めてなのに。ただ、その後が続かなかった。誰も釣れない時間帯に突入。さすがに20時半を回ると1人減り、2人減り…21時になると、だいぶガラガラになってきた。やっぱり私のあれはまぐれだったのかと、多分そこに残っていた釣り人全員が思ったに違いない。ところが21時21分、また私のタックルがグワンと曲がったのだ! タチウオ2本目。サイズは落ちたがきれいな魚体だ。断じてまぐれではない…と思いたい。このミドスト風味のアクションが良かったのかも? 片付けて、公園を出たのは21時56分。例の親子も21時半過ぎまで釣りをしていた。横須賀の釣り公園、たった4時間たらずの滞在だったけど、なかなか楽しかった。ぜひまた来よう。