勤めていた美容院を辞めて29歳で独立し、自分のペースで時間が取れるようになった頃から、釣りのスタイルにも変化が現れ始めた。そのスタイルは、どうにかして釣らないといけないトーナメントとは真逆の方向だ。『今日はこんなルアーで釣りたいな』『このルアー、もっとこうすれば釣れるのでは?』手先が器用で探究心の強い川島さんらしく、自由な釣りを楽しんでいた。そんな折に声をかけたのがジャッカル社だった。房総リザーバーのスーパーロコとしてフィーチャーされ、躱マイキーやポンパドールといった名作を生んだのである。トーナメントとは違った思考が一般アングラーに受けて、そのスタイルが確立されたのもこの頃だった。「ジャッカルでの経験は大きかったですね。モノ作りのノウハウも教えてもらったし、人とのつながりも増えました」そして2022年、ジャッカルとの契約を終え自身のブランド発足を決意。それと同時に本職の美容師も引退。「いろんな意味でタイミングが良かったのかな。ちょっと前までは自分でメーカーをやるつもりもなかったんです。けれども、おじいちゃんになるまで美容師をやるつもりもなかった」この先の人生について、もやもやしていた時に友人の死に直面する。「自分が踏み切れないでいたのを彼が後押ししてくれましたね。彼は散々自分のやりたいことをやってきて、『逝っちゃったら逝っちゃったで仕方ない』ってよく口にしてました。悔いのない人生っていうんですかね。自分は体力的にもモチベーションもあと10年、がんばっても15年だと思うんですよ。一度きりの人生だから後悔しないようにしたい」。ブランド名『BETOBETO』がまさに川島さんの心境でありメッセージでもある。BETOBETOと書いてベトベト。アルファベットでは『Be to』だ。「意味合いとしては『be to』=『なにかしなくてはならない』と『to be』=「また次」「続き」といったニュアンスです。自分がやりたいことをやっていたいっていう気持ちが強く、遊び方とか遊び道具を提案してそれに共感していただける方と楽しめたらいいな、と思っています」後編ではデビュー作のHOO(フー)155Fについて余すとこなく紹介してもらっています。