さあ、勝利の記念撮影である。それは、横たわるピラルクの頭に頬擦りするかのように、この哀れな語り部が顔を近づけた瞬間だった。「ガキーンッ!!!!」金属バットで思い切り頭をブン殴られたような、殺人的な衝撃と音が、語り部の頭蓋骨に鳴り響いた。あ、ヤバい…と思って立ち上がろうとしたのだが、足元がフラついて、一瞬意識を失った…気がした。それを見ていた釣り堀スタッフによると、一瞬ではなく、数秒間フラついていたそうだ。まるで、マイク・タイソンの初めての世界タイトルマッチ、強烈な左フックを受けた直後のトレバー・バービックのようだったという(そうは言ってなかったが…「お前、こんなふうになってたぞ」と、釣り堀スタッフのフラつく仕草があの闘いを思い出させた)。ピラルクの強烈な頭突きで脳震盪を起こしたのだ。それから数日間は完全に頭の中がおかしかった。思考に集中できず、理由もなくボーっとしたり、突然陰鬱な気分になったりする…。帰国後、脳外科医の友人に相談すると…「スマホを見るのはやめて、暗い部屋でボーっとしているように」と。それでもおかしいので、病院に連絡すると、「すぐに来てください」とのこと。やはり脳震盪で、安静を要する、という診断だった。ところで、ピラルクのヘッドバットを喰らった瞬間に感じたことがある。あれは、間違いなく故意だったと思う。とりあえず暴れた拍子にたまたま頭が当たった、という感じではなかった。狙いすましたタイミングで語り部の頭に頭突きを決めたに違いない…そんな確信のようなものがあった。あとで調べてみると、他にもピラルクに頭突きされて失神する動画、肋骨を折られた知人の話、水族館のガラス(に映る自分に?)に頭突きをして失神し窒息して死んだ話…など、偶然ではないと思わざるを得ないエピソードが、出てくること出てくること。やはり…。ピラルクの頭突きというのは1億年の歴史で身につけた彼らの必殺技に違いない…そう確信に至った。病院でMRI検査を受けながら、魚との闘いに初めて完全に負けた気がした。