釣りビジョン

2011.5.15号

庄幸丸・千葉県勝山港
スリル満点!千葉県・内房、勝山から出船の乗っ込みマダイ

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ロングランに沸くヤリイカの陰に隠れて、千葉県・内房の乗込みマダイが最盛期に入った。GW中も、富浦沖をメインに連日3~4kgを超える大ダイ交じりで釣れている。潮温の上昇が遅れたこの春の東京湾もいよいよ本番の気配である。あわよくば自己記録更新の一発大物を狙ってGW明けの5月11日、内房・勝山港の『庄幸丸』に乗った。

勝山港の夜明け
庄司剛船長

天候は雨、ベタナギの海

大房岬を臨む“像背根”
午前4時30分、『庄幸丸』に到着すると「今日のマダイ船は4人ですから、空いている席に入って下さい」と店主の庄司剛さんが出迎えてくれた。この日はあいにくの雨模様で釣り人の出足は鈍い様だ。しかし、ほぼ無風の海上はベタナギと言って良いほど静かである。「今日も釣れるといいですけど、昨日は出れなかったからね」と船長。前日のシケで状況が分からない事だけが唯一の不安要素である。しかし、出船前の釣り人はポジティブが基本。自己記録更新の大型マダイを狙う熱気が船内に漂っていた。

朝一の“庄司塾”開講!

午前5時。未だロングランが続く洲崎沖に向けてヤリイカ船が出船。それと同時にマダイ船も勝山港を離れて行く。ポイントに向かう途中、庄司剛船長から釣り方についての説明がアナウンスされる。「タナはコマセカゴの位置で、海面からの数字を言いますので必ず道糸のマーカーを目印にして下さい」。そしてここからが核心の部分。「コマセの出し方は細く長い帯を作るイメージで、1回のタナ取りでカゴが空っぽになる様に調整して下さい。長いコマセほどマダイは喰ってきますからね」。さらに「長いコマセの帯を作って仕掛けが潮に馴染んだら今度は誘い。ゆっくりと静かに50cmから1m誘い上げます」。活性が高い時はコマセを出している最中に喰ってしまう場合もある。しかし、活性が低く腹一杯のマダイに口を使わせるにはそれ相応の釣り方が必要となる。コマセの出し方も竿を力任せにシャクるのではなく、バットパワーのトルクを活かして振り出す方がマダイを散らさないとも付け加えていた。

船数も少なかった
海底から持ち上がるマダイの反応

富浦沖でスタート

ベタナギの海を走る事およそ30分、富浦沖の漁礁ポイントに到着した。庄司船長の“講義”を聞いてぐっとイメージが膨らんだ私は、“釣れる気”満々で投入合図を待った。周りには同じ勝山港を出船した船が3隻。天気予報が1日中雨という事からかどの船も釣り人の姿は少なめである。逆に言えば競争相手の少ない絶好のチャンスとも言える。船数も少なく、プレッシャーも低い条件でマダイは浮いてくるのでは…そう考えると降り続く雨もプラスに思えてくる。「いいですよ。55mのタナでやってみて。水深は約72m」。船長の投入合図で仕掛けを入れると道糸が真っ直ぐ下に引き出されて行く。潮の流れは殆んどない様だ。コマセカゴの位置で水深63mまで落とし5秒ほどハリスが馴染むのを待ってからコマセを振り出す。2m間隔でコマセを振り出し指示ダナで止めて待つ。長く作ったコマセの帯がゆっくりと沈んで行くイメージを頭に描きながらハリスが馴染むのを待ち、誘いの動作に移る。そっと50cm程竿先を持ち上げて止めると僅かに押さえ込む様なアタリ。ゆっくりと聞き上げて竿を立てると弱々しいが明確な生命感が伝わってきた。“本命”ではなさそうだが、船長に教わった釣り方で1投目からアタリが出た事に満足。ビシが上がり、ハリスを手繰ると35cm級の立派なマアジ。「ここのアジは居着きだから美味しいよ」と船長。その後もポツリポツリとアタリが続き足元のイケスは良型アジで一杯になった。「アジが釣れる人にはマダイも釣れるよ」と自信を深める船長の一言。アジのお土産ならいくらでも歓迎である。

タナは海面からカゴの位置で指示される
良型アジが交じる

流れない潮に苦戦

午前8時。大房岬の沖合に位置する“像背根”に移動すると、「ここからが本命だよ」と船長。だが、前日のシケが影響しているのか、“本命ポイント”にも拘らず思うような魚探反応が出ない。「困ったな、反応が出ないよ。シケで魚が抜けちゃったのかな?」。同時にこのポイントに入った船の無線もやはり困惑した様子を伝える。深い方から浅い方まで反応を探し動き回るのだが、仕掛けを下ろすとすぐに反応が消えてしまい、釣りにならない状況が続く。「昨日のシケで少し潮温が下がっているね。それと濁りも入ってる。だからアジが喰うんだよ」。船長の解説に納得しつつ長期戦を覚悟した。

大きく絞り込まれるロングロッド
大ダモにギリギリ収まった

ワンチャンスをものにして4kgオーバーが浮上!

値千金の4kg級!
午前11時。「隣りの船で型の小さいのが上がったよ」。船長がそう教えてくれて間もなく右舷大ドモ(船尾)の釣り人の軟調長竿が大きく曲がった。ここまで釣れていたアジやサバとは比較にならない力が、リールから道糸を引き出して行く。ハリスは4号、魚のパワーに少しでも逆らえば簡単に切れてしまう。スリル満点のやり取りが続く。間違いない、こいつは大物だ!ようやく廻ってきたチャンス、「どうかバレずに上がってくれ」と、念じずにはいられなかった。1m巻いては2m引き出され、次第に魚の抵抗が弱まって行く。慌てずに魚の動きに合わせて巻き上げ、コマセカゴを回収すると間もなく潮先の海面にボッコ~ンと大ダイが浮かび上がった。無事にタモに収ったその魚体は、これぞ乗っ込み期と思わせる特有の黒味がかっていた。後検量の結果はジャスト4kgの大ダイ。潮が流れず苦戦した中での貴重な1尾である。最終的に船中唯一の“本命”となってしまったのだが、私を含めお土産には十分な数の良型アジが上がり大ダイの夢は、また次回に持ち越しとなった。

春が遅れた分だけ今後に期待!

さて、若干の潮温低下と濁りの影響で喰い渋ったこの日のマダイだが、春が遅れた分だけダラダラと長く続く可能性は高い。船長に教わったあのコマセワークと誘いで是非とも大ダイを仕留めてみたいものである。とは言え、大型狙いがいつまで続くかは不確定、早いうちの釣行がお奨めだ。

50cm級のヤリイカ
氷の入っていない満タンのクーラーBOX

こちらもお奨め!ロングランのヤリイカ

この日港に戻るとヤリイカ船のトップが70杯を超えた事を知らされて唖然とした。まだまだ美味しいヤリイカ釣りも目が離せない!

(津端 雄大)

今回利用した釣り船
千葉県勝山港『庄幸丸』
〒299-2117 千葉県安房郡鋸南町勝山236
TEL:0470-55-3005
詳細情報(釣りビジョン)
庄幸丸ホームページ
出船データ
(料金)予約乗合・マダイ=コマセ
餌、氷付き10,000円 ※HP割引有り
(午前5時出船、13時沖上がり)
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