釣りビジョン

2013.5.15号

新修丸・神奈川県金沢八景
“海の宝石”アカムツを求め、東京湾・金沢八景から出船

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例年、新緑の季節を迎えると、胸をワクワクさせる釣り人がいる。“海の宝石”とも幻の魚とも言われるアカムツ(ノドグロの呼び名でも知られる)釣りが始まるからだ。今年も、東京湾で手軽にアカムツを釣らせてくれる金沢八景・夕照橋脇の『新修丸』で乗合船がスタートしたと聞き、ゴールデンウィーク後半の4日に出掛けた。

4人の乗船者“大名釣り”で出船

横須賀から国道16号線を走り金沢八景駅脇、瀬戸神社の前を右折、直進すると夕照橋だ。橋の傍に『新修丸』の看板が見える。休日とあって船宿の前は釣り人で賑わっていた。店先に荷物を降ろしてから、車を駐車場に移動する。店主の新明正義さんが「昨日は、12人のお客さんで、トップは4尾でした。残念ながらオデコも出たけど…。今日は左のトモ(船尾)が空いているよ」と教えてくれた。店先の喧噪が嘘のようにアカムツ間船の先客は3人だけ。だが、『新修丸』のメインターゲットであるカサゴ船は、多くの釣り人でゴッタ返していた。

船宿『新修丸』
出船前の賑わい
餌のサバの切り身

釣り場の水深は220m

午前7時20分、アカムツ船はカサゴ船より一足早く出船。舵を握るのは店主の新明正義船長。平潟湾を出ると結構北風が吹いていた。釣り場までは小1時間との事。八景島、長浦の造船所、猿島脇を通り観音崎を過ぎ、久里浜の火力発電所と房総半島のカーフェリーの発着所・金谷港が見える所でエンジンストップ。「準備出来たらやって下さい。水深は220m、餌は真ん中に刺してくださいよ、刺し方が悪いとクルクル回って釣りにならないよ」と船長の合図と同時にアドバイスが飛んだ。

ロケーションは抜群
もうすぐポイント
仕掛け図

餌の付け方とタナ取りがキーポイント

餌はサバの切り身。身肉を綺麗に削いで皮部を短冊にしたもの。皆さん、船長のアドバイス通り、短冊に切られた身の細い方の真ん中にハリを刺し、3本バリに餌を付け終え、100号のオモリと共に投入。220mの海底にオモリが着地するのを待つ。リールのスプールの回転が止まり、糸フケが出たら着地の合図。急いでリールを巻く。竿を持ち、オモリが底を這うように弛ませたり、底を離れない程度真直ぐになるようにしたり、誘いを掛ける。“海の宝石”と言われるアカムツを狙う-広い鉱山で宝石を掘り当てる様な気持ちだろう。

『新修丸』オリジナル仕掛け
“海の宝石”を探りあてるぞ

“本命”の前触れはシロムツ

「当たったぁ」
白いムーチングタイプの竿で誘いを掛けていた左舷ミヨシ(船首)の森下伸さん(横須賀市)が、「当たりましたよ」と声をかけてくれた。電動リールのリーリングに時折竿先がクンクンと引き込まれる。アカムツは、口周りが弱いので低速で巻き上げている。リーリングがストップ、手で巻きながら竿を立てる。船長がタモを持って待機、しかし、姿を見せたのは18cmほどの俗にシロムツと呼ばれるワキヤハタ(酢〆や煮ると美味しい)。前回アカムツ3尾をゲットしたと言う右舷ミヨシの石川厚さんもシロムツの一荷。「今日は、四隅しか釣り人がいないから」と、操舵室から竿を出した船長もシロムツの一荷。船長の「当ったら教えるから竿を出したら」で、私も竿を出した。
前日、船長に、「竿は柔らか目が良いよ」と聞いていたので、オモリ負荷60~80号の2.1mのロッドを出した。東京湾のアカムツ釣りは初めてだ。『新修丸』の特注仕掛けの3本バリに餌を付けて投入。電動リールのスイッチをオフにしてオモリの着底を待つ。足立区から通い詰めていると言う右舷トモの福藤謹司さんが小振りのユメカサゴを釣り上げて「赤いけど、違うね」と笑わせた。

「シロムツだぁ」
「シロムツの一荷だ」
「赤いけどユメカサゴ」

遂に朱色の“本命”アカムツが

タナを取り、竿掛けに竿を掛けた時、ミヨシの石川さんが「来ました!“本命”のアタリ」と叫ぶ。カメラを持って飛んでゆくと、リールを2、3回手で巻いてから電動リールのスイッチオン。竿先が小気味よい引き込みを見せている。巻き上げはスローだ、後60mと言う時、竿先がガクンと強く持ち込まれた。そして竿先はフラットになってしまった「軽くなっちゃった」と石川さん。リールを高速で巻き上げてみると仕掛けの途中で切れていてオモリもない。「サメかなぁ。“本命”のアタリだったのに」と悔しがる。置き竿にしていた私の竿にもクンクンとシグナル。竿を持ち軽く煽ってからリールを2、3回手で巻く、そしてスイッチオン、モーター音を響かせてリーリング、時折クンクンと引き込まれる。期待に胸が高鳴る、しかし、海中に姿を見せた魚は赤くはなかった。皆さんと同じ、シロムツの一荷。福藤さんが「シロムツが釣れなければアカムツも釣れないよ」と言って慰めてくれる。釣り始めて2時間ほど経過した10時半頃、「“本命”の引きだ」と福藤さん。電動リールのスイッチオンにモーター音が低く唸る。竿先の引き込みが今までとは違い、時折鋭く引き込む。海面を覗きこむ、笹濁りの海中に、朱色に輝く“本命”のアカムツ。船長の差し出すタモに収まった。船中1号に船長も安堵の顔、型は30cm弱。

幹糸が切れて竿がフラットに
「ヤッタゼ本命!見事でしょ」

左舷で連発!私にも“宝石”は輝いた

仕掛けを少しフカセ気味にしたとの福藤さんのアドバイスに、私も少し糸を送り出し誘いを掛ける。すると竿先に違和感。間を置いて竿を立てるとクンクンと小気味よい引き。そして時折強い引きに胸がドキンと高鳴る。「“本命”でいてくれ」と数回手でリーリングの後、電動のスイッチオン。“中速”で巻き上げる。残り200m、150mとやけに遅く感じられる。船長がタモを持って海面を伺う。あと30m、20mに「バレないで」と祈る気持ち。電動リールが止まって道糸を引き寄せ手繰ってくると「赤い」、海中に朱色の魚体が浮かびタモに収まる。「ヤッター!」の心境。サイズは26cm。東京湾での初めての“宝石”いや、獲物を“宝石箱”ならぬクーラーに納めた。
その20分後、左舷ミヨシの森下さんも“本命”をゲット、27cmであった。その前にドンコを釣っていたので「赤、白、黒と三色だ」と冗談が出る余裕。そしてその余裕か、またまた森下さんにアタリ。今度は28cmを釣り上げた。

まあまあサイズにニッコリ
俺、連チャンだぜ

“海の宝石”を3個をゲット!

右舷の石川さんにも何回かアタリがあった。その都度、途中で何かに襲われてハリス切れ、幹糸切れにあって“本命”に嫌われてしまった。サメやサバは釣れるのだが…。電動リールの巻き上げスピードが遅いので途中で何かに喰われてしまうのだろう。
正午を過ぎた頃、福藤さんが「“本命”みたいだ」と竿を立てながら声をかけてくれた。同時に私の竿にもアタリ。写真を撮りに行きたいが滅多にお目にかかれない魚も欲しい。「あとどのくらいですか」、「あと120m」と互いに残りのメーターの確認をし合う。カメラを持って行くと、福藤さんの竿は引き込みが強い。「良型か」。巧みな竿捌きで船長にタモ取りしてもらった、「デカイ!」。慌てて席に戻り竿を握る、あと10m、船長が駆けつけてくれた。海中に赤い姿。「ヤッター!2尾目」に頬が緩む。型も先程とほぼ同じ。1尾目から1時間が経過していた。クーラーに丁寧に入れてから、福藤さんの釣った良型の検量に。クーラーから出してもらってメジャーをあてると31cm。この日の最大。そしてまた1時間経過、少し弛ませてから誘い上げたその竿にクンクンとアタリ。少し前、アカムツらしき当たりにリーリング途中、オマツリでバレてしまった後だけに慎重に数回手巻きしてから電動リールのスイッチオン。途中引き込みはあるがそんなに強くない。それでも時折引き込みを見せる。上がって来たのは紛れもなくアカムツ、型は小振りだが何と3尾目をゲットした。

小さいけど3尾目
「こいつはデカイぞ」

潮が止まって南の風が…

一時ベタナギ状態だった海が、風が南に変わって強くなって来た。流れが悪かった潮がますます動かなくなったので船長は竿上げの合図。久里浜沖・アシカ島が目の前に見える水深130mラインに移動。オモリの着底も早い。しかし、この場所は時期が早いのか、南風が吹いて来て、潮が冷えてしまったのか竿先を振るわすのは、食べては美味しいが見てくれの良くないドンコばかりだった。
船長は、2時半まで周辺を丹念に探っていたが状況は変わらず沖上がりとなった。結果、私が3尾、福藤さんと森下さんが2尾ずつで、船中7尾の成果。

ドンコしか釣れない
今日の釣果“本命”3尾

今シーズンのアカムツは明るい見通し

新明正義店長
船長に今シーズンの見通しを聞くと「4月から始めましたがポツポツ30cm級も交じっていますよ。魚影は濃いと思います。これから徐々に水深も浅くなって釣り易くなります。夏には水深も80mを切り、50号のオモリでも釣れる場所で30cm級が姿を見せます」との事。“宝石”は近くに転がっているかも。

(釣りビジョンAPC・倉形 金幸)

今回利用した釣り船
神奈川県金沢八景『新修丸』
〒236-0037
神奈川県横浜市金沢区野島町10
TEL:045-784-2636
定休日:木曜日
(交通アクセス)
首都湾岸高速:幸浦出口10分
横浜横須賀道路:朝比奈IC15分
電車:京急・金沢八景駅下車 送迎バス
詳細情報(釣りビジョン)
新修丸ホームページ
出船データ
アカムツ:9,000円、餌付・氷別100円・仕掛け1組350円
出船7時20分、沖上がり14時30分
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