最後に、タイの食事の話をしよう。語り部はパクチーは苦手だが、それさえ抜けば、タイ料理はどれも大好きだ。我々はレンタカーで移動しながら旅をしていたので、食事は道端の屋台やそれに近い雰囲気の食堂で食べることが多かった。値段は確かにひと昔前に比べると高くはなったが、今でも60バーツ(250円程度)くらいでラーメン、パッタイなどは食べることができる。高い店はいくらでもあるだろうが、今回の旅では縁がなかった。例えば、ラーメンといっても我々が勝手にそう呼んでいるだけで、もちろん中華料理のラーメンではない。魚介や豚骨で出汁を取っているスープがベースだが、スープの種類、麺の種類、具の種類もいくつかある中から選ぶことができる。どれも実に滋味深い味わいがあり、美味しい。ご飯物も元気の出る辛さのガパオライス、安定のカオマンガイ(”ルアー”という血の塊が付いてくる店は特に美味い)、チャーハンのようなカオパットもハズレがない。また、パパイヤのサラダであるソムタムも最高に美味しい。青パパイヤの甘さ、ライムの酸っぱさ、赤唐辛子の辛さ、エビの風味、ナンプラーの旨みが調和し、複雑な味わいがある。今回の旅で問題になったのが”ソムタムプー”だった。I氏によると、「日本人の旅人が絶対に食べてはいけないメニュー」らしい。I氏「発酵したサワガニが入っているのですが、たまに寄生虫がいるらしく…日本人はもちろん、タイ人でもよく当たるらしいです。なので、僕はやめときます」そう言われたら…食べずにはいられない、この哀れな語り部(ちなみに、過去、海外では何度も腹を壊し、4度医者の世話になっている)。この記事の野ダムに行った日の朝、ついにソムタムプーを注文した。早速、サワガニ(なのか?)のボディをバリバリとかじってみると…これは美味い。発酵した生ガニのトロリとした舌触りと凝縮された旨みが殻を噛み潰すたびに口の中に広がる。韓国料理のケジャンのような舌触りだが、味はタイ料理のそれである。ちなみに、幸運にも今回は医者の世話にならなかった。