ところで、そのツアーのボートパイロットにネトという男がいた。彼もまたとんでもない天然野郎だった。語り部が釣りに苦戦していると、彼はエサ釣り用の大きなフックに太いPEラインを結び、その辺に落ちている木の枝に巻きつけて謎の仕掛けを作っていた。ネトはその仕掛けを語り部のタックルに接続し、水中メガネを掛けて濁った川に潜っていった…と思ったら…しばらくすると遠くの水面に顔を出し、「リールを巻け!」と叫んでいる。いわれるままに巻くと…グングンと強烈な引き! さっき釣った個体よりも大きなタライロンだ。驚くべきことに、ネトは岩陰に潜んでいたであろうタライロンを見つけ、さらにその口へフックを引っ掛けたのだ…。釣り人的には正直あまりうれしくはない…しかしながら、アマゾン本流のように深いおもてなしの心ではないか。ここまでしてくれるガイドなんて世界広しといえど聞いたことがない。語り部もそれに応えようと、全力でファイトし、そのタライロンを獲った。そして、120%の笑顔でネトと握手した。