バルセロスの港を出てから3日目。語り部は巨大スウイッシャーの釣りのコツがイマイチ掴めないまま、大した釣果も得られずにいた。尤も、このタイミングはまだ水の引きが悪く、メンバーのまだ誰も大物を手にしていなかった。巨大スウィッシャーは上下に大きくジャークしながら、それに合わせてリズミカルにリーリングしないといい音が出ない。このアクションは日本のルアー釣りにはないもので、しかも体力的にもキツく…日本人は苦戦を強いられるのだ。そこで、アレックスが巨大スウィッシャーを投げる後ろから、その音におびき寄せられた大物を高性能な日本製ビッグベイトで横取りする作戦を思いついた。流れがよれる小さなワンドの入り口。冠水した木の際へジョインテッドクローを投げて、5秒ほど沈め…S字軌道を描くように巻くと…。ゴン、ゴーンッ!!17.8cmの大きなルアーが、さらに巨大な口に吸い込まれた衝撃。それがロッドを介して手元まで伝わってきた。すかさず、巻きながら合わせると…ロッドが一気にバットまで絞り込まれた。ギュ…ギュギュギュ…と、締め込んでいたはずのダイワ製ベイトリールのドラグが大した抵抗もできずに引き出されていく。近くには立木もあるので好きに走らせるわけにもいかない。親指でスプールを押さえながら怪魚の走りに抵抗しつつ、隙を見てリールを巻いた。しばらくして水面に現れたトクナレ・アスーの巨大な顔は今も忘れられない。アレックス「グランジ!(でかいぞ)トロフィーサイズだ!」77cm、17.5ポンド(約7.93kg)。世界記録には程遠いし、なんのトロフィーなのかイマイチよくわからなかったが、このツアー12名が釣ったなかではこれが最大だった。金はないが、運はまあまあ持っているのである。今回はホテルボートツアーの魅力と語り部の釣果自慢で終わったような気もするが…詳しいピーコックバスの紹介は次回に持ち越すことにしよう。